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電影鑑賞記『久別重逢 Last Song For You』(2024)

まだ鑑賞していないのにロケ地ツアーに参加してしまった顛末とリポートは前記事 散步香港143 < 長洲 / 久別長洲 重逢記憶 - 長洲電影之旅 > をご参照いただきたい。

ロケ地ツアーに行ってしまったからには観ねばなるまいという義務感と、これらの撮影ポイントがどう使われたのか確かめてみたいという好奇心から速攻で観に行った。

この作品、鑑賞に行くプライオリティが低かったのよ。というのも実は私、鄭伊健があまり好きではない。ファンの皆さん、ごめんなさいね。伊健自体を嫌いなわけじゃないのよ。彼の芝居と歌がなんとなくダメなのよ。芝居はまだまだ頭で考えた芝居しかできていない。歌う時に喉で支えられていないのかして音が伸びない。なので積極的に観に行く気にならず。

ストーリーはネタバレせずに書くのが難しい。それぞれが時空を超えてしまうから。できれば夏文萱だけにしておいて欲しかった。エンディングをどうしても溫馨とかほっこりに持っていきたかったからだとは思うけれど、落としどころがステレオタイプすぎる。とはいえ、脚本自体は細かいところまでじっくり考えて練られていて良かった。伊健だからと後回しにしていたけれど、作品全体としては予想以上に良かったよ。

伊健がピアノやギターを弾くシーンでは当然バスト・アップやらバック・ショットにして手元は見せない。ピアノを弾くシーンでは実際に弾ける人の手を映すのだけれど、伊健の手と違いすぎて注意力を持っていかれてしまうので、無い方が良かったと思う。伊健も楽器を弾いている体で身体を動かすのだけれど、大袈裟過ぎるというか、わざとらし過ぎる。どうしても頭で考えた芝居の域を出ない。

反して、陳卓賢と許恩怡の芝居は良かった。陳卓賢はなんとなく見たことがある気がしていたが MIRROR だったのね。ピアノもギターも弾けるし、歌も伊健より上手い。実年齢30歳というのに高校生の役ができるのは童顔故だけれど、上手く自然な感じに仕上げていて良かった。許恩怡は小動作が多すぎて少しあざとくも感じたけれど、まあ高校生だったらこんなものか、とも思わせる芝居をしていた。良い作品に恵まれて急成長が見られるので今後の注目株でもある。

蔡思韵は台湾で演劇を学んだおかげでベースが出来ている。『燈火闌珊』でもう一息が足りないと思ったのだが『全個世界都有電話』で一気に抜けてきた。もう既に演技派としての地位を確立したと言えると思う。

この作品のポスターもとても良い。敢えてこの二人を真ん中に持って来て、残りの二人を上下と対角で対比させる構図。鑑賞してから見るとポスターの意図するところがよくわかる。

そして冒頭で書いたロケ地ツアーに鑑賞前に行っちゃったことについて。観終わって、正直、先にロケ地ツアーに行くのもありじゃね?と思ってしまった。というのも、ツアーで行って奇夫が見せてくれたキャプチャの印象があったから、劇中でその場所が出て来た時に「あ!ここだ!」「おお!このシーンか!」となって逆に鑑賞が楽しかったのだ。鑑賞してからロケ地に行ったら、「あ、そういえばこんなシーンあったね」程度で終わってしまっていた気がする。こんな風に感じるのは私だけかもしれないが。そしてまたもう一度復習しに長洲へ行ってみるのが最高かもしれないな。今回はこのツアーのおかげで「ツアーが先か、鑑賞が先か」についての面白い考証ができたのが有意義なサプライズ。

もう一つ、私的にサプライズだったのは日本側の制作について。TBプロジェクトの名前を見て驚いた。友人の会社だから。ちょっと、Ben、これやってたのかよー!って感じ。本作は日本での撮影部分もあると聞いていたので、日本をめちゃくちゃフィーチャーした造りになっているのではと心配していたのだけれど、日本の部分はうるさくもなく、且つ、なぜ日本にしたのかという理由も、本来的には日本以外の場所を散骨に選んでもいける話だろうけれど、だるま朝日を理由にしたおかげで腑に落ちる話の流れに落ち着いていて良かった。伊健がいるから福岡で撮っているのかと思っていたら四国だったのも良い意味で足をすくわれた意外感が良かった。この感じなら日本で配給付くだろうなと思うよ私は。

英皇戲院時代廣場にて鑑賞。★★★

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