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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(50)『追捕/Man Hunt』- 撮影現場通訳の持ち物 -

香港電影撮影現場の話がずっと続いてしまったので、映画撮影の現場通訳を目指す・憧れている方へ、ここで少し豆知識的なものをば。

映画撮影の現場通訳は体力勝負

映画撮影の現場通訳は体力勝負で、寝不足、不規則で長時間の撮影に耐えられる体力と気力、屈強で健康な身体が必要だというのは前にも書いた。理由の一つがこれ。

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Walkie Talkie トランシーバー2台持ち

現場通訳は得てして Walkie Talkie トランシーバー2台持ちになることが多い。私の場合なら中文クルー(広東語・普通話)用と日本語クルー用。他の映画の現場でも私は2台持ちだったので、これがデフォルトと思って良い。

一日中2台とも身体にぶら下げて、両耳にイヤフォン入れてデュアルで音声を聴きながら適宜通訳する。もちろん1台でチャンネルを変えればどちらの音声も聴こえる。けれど、一方の音声を聴いている間は、もう一方の音声は聞き逃すわけで、呼ばれても気付かない、などということが出てくるので、お薦めはできない。

一日中2台も腰にぶら下げていると、これが結構重い。しかも現場が広かったりすると、これをぶら下げたままあちこち走り回るから本当に体力勝負。撮影が終わって腰から2台おろすと身体が軽い軽い。

体力的にかなりの負担ではあるけれど、業務を遂行するためには基本的には2台持ちを私は推奨する。

その他の個人的備品

身に付けているのはこれだけではない。財布を始めとする貴重品、水、台本、筆記用具等。

屋内で外部者が絶対に入ってこないセット内、荷物を保管管理する場所がある場合、でなければ貴重品は身に付けておく。ジャケットなども持っておきたい場合は小さ目のリュックに貴重品もジャケットもその他のものも全部入れて背負うので、実は案外荷物が多かったりする。

「一日八杯水」とうるさく言われてきた香港人な私は、常に水を持っておかないと気が済まないので、ペットボトルの水を少なくとも1本は持っている。通訳は喋ってなんぼなので、断然喉も乾く。

三つ折りフォルダ

この時の現場で流行ったのが三つ折りフォルダ。

日本映画はきっちり製本された台本を現場に持ち込むのがデフォルトなのだと後に日本映画の撮影に参加した時に知った。

だが、香港映画はきっちり製本された脚本が出ることは無い。撮影台本も前日や当日、プリントアウトした数枚の紙を渡される。ペラペラの紙数枚なので私は小さく折ってポケットに入れるのだけれど、カットごとシーンごとに撮影台本を見ながら打ち合わせて書き込みをするようなスタッフは、この三つ折りフォルダを重宝していた。日本での撮影なのでア〇〇ンあたりで注文すればすぐ届く。皆でカラフルなフォルダを買って楽しんでいた。

現場通訳はキツイのを承知で受けること

とある作品のオファーが来た時、実はその作品は既に撮影中だったのだが、体力的にあまりにキツくて通訳が突然失踪したので急遽代わりを探しているとのことだった。何も知らずに現場通訳を引き受けて、想像以上の辛さに逃げ出したなんて初めて聞いたが、そういうこともあるようだ。

映画撮影の現場通訳に憧れる人はしっかり心と身体の準備をされたし。

しかし『Man Hunt / 追捕』の話はまだまだ続くよ。(続)

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