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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(58)-『肥龍過江 / Enter The Fat Dragon』大陸ロケ2 -

甘栗

前回からの続きで、まずは大陸人エキストラのエピソードを。

歌〇〇町は繁華街。飲食店が軒を並べる。ラーメン屋あり、おでん屋あり、甘栗屋の店先には甘栗を炒る為の小石を入れた大きな中華鍋。もちろん甘栗もちゃんと投入されている。小売り用の袋入りも小道具として準備されていた。

繁華街を行き交う市民役のエキストラがそれぞれの位置に配置された。続いて動作組が配置や動きのチェックに現場に入ってみると、何人ものエキストラ達が小売り袋の甘栗やら中華鍋の甘栗を勝手に食っている!

ウソやろ? 小道具やぞ? なんで勝手に食うかな??? しかも速攻!

栗の皮をそこら辺に捨てている。
いくら実際の街並みに似せているとはいえ
いくら皮やらヘタやらをペッペッとそこら辺に吐き捨てる文化とはいえ
ここはセットやぞ?外の道とちゃうぞ?

驚きと怒りで茫然としてしまった。

世界はオレの為にある、だからそこら辺にあるものは勝手に使っても食ってもいい、世界はオレのものなのだ。

私から注意したところで「お前誰?」状態なのはわかりきっている。私の言う事になど耳を貸すわけもないので、エキストラを管理する大陸人副導演に注意してもらう。彼らからすれば「副導演=カネを払ってくれる老闆」なので、カネを払ってくれる人の言うことは一応聞く。副導演が怒りながら回収したものの、当の本人達はテヘペロで終わり。

因みに大陸のエキストラは「臨時演員」の位置付け。一応微々たる報酬が出る。報酬があるから応募してくる。報酬をもらえなくなると嫌だから一応上の人間の言うことを聞く。

私がどうやら動作組付きの通訳らしいということに気付き「通訳か?日本人か?」と擦り寄ってきたエキストラもいた。妙にニコニコ笑顔を投げかけてくるエキストラもいた。ヘラヘラしながら甘栗食ってんじゃねえよ!自分がどんな動きをしなければならないのか、副導演の話ちゃんと聞いとけ!

エキストラ達が食って数が減ってしまった甘栗、翌日のセットにはきちんと足されていた。そりゃそうだ。甘栗が無ければ甘栗屋に見えない。さすがにこの日は副導演のチェックも厳しく、甘栗の減りは止まった。

3日目、冬場とはいえセットは暖かいせいか甘栗にがっつりカビが生えていた。甘栗ってカビが生えるものだったのか。流石にカビの生えたものはエキストラも手を出さないだろうと副導演はチェックを怠っていた。すると…

食っていた。

カビが生えているのに気付いていないのか、気にしていないのか。初日に怒られたことを忘れたのか、屁とも思っていないのか。奴らは食っていた。

この日は流石の私も「動作組の武器をおもちゃにするしマットレスで寝るようなアホは食って食って食いまくって腹下しやがれ!」と心の中で呪った。が、どうやら腹を下した者は出なかったようである。免疫力だろうか。

金毛仔

その甘栗屋の番頭役が「金毛仔(=金髪くん)」。撮影が始まる前の準備時期、動作組の管理メンバーとド兄さんのミーティングの初日、ド兄さんが動作組のコーディネイターSさんに一目惚れ。「この金毛仔は一目見ただけで面白い!絶対に(本編に)出す!アッハッハッハ!ダメだ、こいつ面白すぎる!」と何故か顔を見るだけで大笑い。そして甘栗屋の番頭にと相成った。

当初は店頭で甘栗を炒って売るだけのはずだったのが、役がどんどん膨らんでいき、出番がどんどん増えていった。まさに『Man Hunt』の時の彩奈状態。衣装を着たまま動作組の仕事をこなす。彩奈だった自分を懐かしく思い出してしまった。

龍迷同士

『Man Hunt』に続きご一緒させていただいた竹中さん。やはりずっと『猛龍過江 / ドラゴンへの道』のテーマソングを鼻歌で歌っている。私が龍哥のTシャツを着て来た日には「おう!Bruceじゃねぇか!You offended my family...」とやり始めて笑わせてくれた。某U社のコラボTシャツだったのだけれど、持っていないと仰るので、コレクション用に置いてあったものを後日プレゼントしたら、その後とある番組で着てくださっていて嬉しかった。

我こそは龍迷の竹中さんとド兄さんの対峙シーン。竹中さんがド兄さんに向かって『猛龍過江 / ドラゴンへの道』を歌うわ、龍哥のセリフ持ち出すわ、真似するわ、もう傍で観ていて笑いをこらえるのに必死だった。カメラ回っているのに笑い声出しちゃダメだからね。

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ネットで拾った写真だけれど、これを観れば竹中さんがどこまでガッツリなりきっていたかわかるでしょう。この表情、このポーズ、やはり誰よりも上手い。

このシーンでの動作組のアクションもまた本当に素晴らしい。劇場で観る方は目を皿にして観てね。(続)

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