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「スリー・ストライク・アウト自由民主党議員」の稚拙な言い訳

シラを切るのは自由民主党の風物詩?

2022年1月6日に、自由民主党所属の衆議院議員である武井俊輔車検切れ/自賠責保険未加入の乗用車を運行の用に供していたとして書類送検されました。そして武井の公設秘書が、当該車輌を運転中に自転車に乗っていた男性に衝突してその場から走り去ったものとして「轢き逃げ」「過失運転傷害」の疑いで書類送検されました。ちなみにこの時武井は当該車輌に同乗していました(詳しくは後述)。新年早々自由民主党議員の不祥事がクローズアップされていますが、この事故は昨年2021年6月の出来事であり、当時既に報じられていました。つまり衆議院選挙前の出来事です。
この件について武井は「車検切れや無保険である事は知らなかった」と弁明していましたが、実は昨年6月の時点でこう説明していました。

「これ(→自己所有の乗用車が車検切れ/自賠責保険未加入である事について)については、申し開きのない話でありまして、ちょっと車を変えたいというプロセスがあったが、手続きがうまく事務所の中で共有できておらず、結果として、そのような状況(→車検切れ/自賠責保険未加入)になっていた。もちろん任意保険には入っていた。お詫びのしようもない事だと思います」(2020年6月10日発言)

「車を変えたい=買い替える」という事でしょうが、車を買い替えるに当たって車検の期限について考えないのでしょうか(と言うより、車検が通るかを踏まえて買い替えを検討するのが一般的だと思いますが)。また、この発言の中で武井は「任意保険には入っていた」と断言しています。つまり昨年6月の時点で「保険の有無について知っていた」という事であり、今回の「車検切れや無保険である事は知らなかった」という発言と完全に矛盾します。畢竟、武井は今回の弁明で虚偽を述べたという事です。自由民主党総裁/内閣総理大臣として長らく「行政府の長として君臨」してきた安倍晋三が国会において少なくとも257回の虚偽答弁をした事は周知の事ですが、自由民主党において「窮地になると虚偽を述べる仕草」は組織の末端にまで浸透しているようです。

「自由民主党の良識派()」

さて、武井俊輔はしばしば「自由民主党の良識派」と謳われているようですが、実態はどうでしょうか?今回の件(正確には昨年6月の件)について、接触事故の被害に遭った方によると、後部座席に乗っていた武井本人に追及した際に「私は関係ないんで」と言われたとの事です。そして未だにまともな謝罪をされていないそうです。更に捜査関係者によれば、ドライブレコーダーに武井のものとされる声で「行ってしまえ」という音声が録音されていたとの事です。これについて武井は「逃げろという趣旨ではない」と弁明していますが、応急救護義務を放り出して何処に行こうとしたのでしょうか。結局捜査関係者は当て逃げ容疑の立件をしなかったようですが、人身事故直後の「行ってしまえ」について「教唆」という概念は思い浮かばなかったのでしょうか。
言うまでもなく、轢き逃げ(応急救護義務違反)は道路交通法違反であり、処罰の対象となります(道路交通法第72条、第117条)。轢き逃げ行為をした秘書は原則として処罰の対象となりますが(但し間接正犯や期待可能性の法理によって違法性/責任阻却事由となる余地はあります)、秘書に対して「行ってしまえ」と指示をした武井には「共犯」成立の余地があります(刑法第8条により、共犯の規定は道路交通法における罰則規定についても適用されます)。武井の行為については「秘書の認識/認容の有無」にもよりますが、いくつかの解釈が考えられます。

1:「共謀共同正犯」→事故を起こした後に武井/秘書双方に「その場から逃げる」という共同意思があった場合。
2:「教唆犯」→事故を起こした後に「その場から逃げるという意思がなかった秘書」に対して武井が「行ってしまえ」と唆した場合。
3:「間接正犯」→武井に「秘書を構成要件実現のために利用する」という犯意があった場合。

思うに、武井は、自身が所有する乗用車について「車検切れ/自賠責保険未加入が発覚する事を避ける」ために、秘書に対して「行ってしまえ」と指示したのではないでしょうか。「自由民主党の良識派」とはこの程度の者なのでしょうか。それとも自由民主党のスタンダードが余りにも醜悪なのでしょうか。
斯かる不祥事があったにもかかわらず「衆議院選挙にしれっと出馬する」という時点で、武井は事故/杜撰な車輌管理について全く反省していない事がよく判ります。

【おまけ】

大学における「刑法総論」の期末試験風に問題を作成してみました。暇な時にチャレンジしてみてください。

甲(衆議院議員)は乙(甲の秘書)が運転する自己所有の乗用車に同乗していた。道中、丙と接触事故を起こし、丙は打撲や捻挫等の軽傷を負ったが、その際乙に対して「行ってしまえ」と指示し、乙は甲の指示通りに現場を立ち去った。人身事故を生じさせた際に現場から逃げ去る事は道路交通法第72条「応急救護義務」に違反し、同法第117条により罰則の対象となる。
甲及び乙の罪責について論じなさい。

参考文献

⭐️川端博『刑法総論講義』『刑法各論講義』(成文堂)
⭐️山口厚『刑法総論』『刑法各論』(弘文堂)

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