SDGsの罠
リチウム・ニッケル採掘 政府支援の落し穴
「SDGs!脱炭素!」。耳にタコができるほど、授業などで聞いている学生も少なくないだろう。かきあげ系女子や意識高い系大学生がSDGs貢献運動をよくしている。
決して学生間の内輪で起きている動きではない。世界各国の政府がSDGs達成を目標にあくせくしている。日本政府は先日、電気自動車(EV)電池に使用される希少金属(レアメタル)のリチウムやニッケル採掘への政府支出を50%~100%に拡大することを明らかにした。金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて、豊田通商など日本企業の資源採掘を支援することで、世界需要が高まるレアメタル採掘を支援する動きだ。
確かに、EV拡充は二酸化炭素を削減させSDGsに貢献できる一面がある。しかしEVに必要なレアメタルの採掘は「誰が・どこで」行っているか知っているだろうか。
南米アタカマ塩湖は世界有数のリチウム鉱床として知られている。リチウム採掘をする際、企業は大規模な地下水汲み上げを行い地元住人の水資源アクセスの機会喪失を招いてしまっている。また、採掘場の労働資源確保として子供たちが使われる問題(児童労働問題)も起きている。これらの状況はSDGs目標「誰も取り残さない」を達成するどころから悪化させてしまっている。経済産業省も「人権問題を重要視する」という動きを示しており、今後の期待が高まる。
SDGs目標達成は容易ではない。多くの問題が絡み合っている。ただ、一つの側面から「これはSDGsに貢献している!!!」と安直に思うのではなく、あらゆる方向から「本当に貢献に繋がっているのか」を見つめ、社会問題の真の姿を浮き彫りにする目が必要だと感じた。
さて、あなたの身の周りに起きている問題もあらゆる視点から見つめてみましょう~。
【参考文献】
2022年2月6日(読売新聞 1面:資源採掘 政府出資を拡大)
あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣(著者:原 貫太)