娘図鑑vol.1
真ん中の子は強い。
これは本当だと思う。歯を折ったとき、ワクチン注射、歯の麻酔注射のとき。どれであっても絶対泣かないで、じっーと真っ直ぐお医者さんに目で訴えている、「まだやるの。」って。
昔から泣かない子。どこに連れていっても泣かない、いわゆる「育てやすい子」。
何でも端的に物事を整理する癖がある。箇条書きは好きだけど、感想文はあまり気が乗らない。欠席しているお友達へのお手紙は一言、
「明日、来てね。」
全てがシンプルで、物事が早い。バイオリンの練習はキッチンタイマーで1分ずつはかる。少しでも注意すると、般若となる。その豹変ぶりから、怒った時は「やすえちゃん」(吉本新喜劇の未知やすえさん)と揶揄われる。
外で大きな声を出されるのは、苦手。友達に会ったら家族は速やかにフェードアウトして欲しそう。まるで思春期みたいに反抗することもある。
「なんで私のことなのに自分で決められないの。」
この一言を貫き、お受験した国立幼稚園卒園後、附属小学校に上がらず、地域の公立に移った。ランドセルを持って電車に乗るのが嫌だったらしい。何度か先生が確認してくれたけど、一度決めたら変わらない。みんなに変人扱いされたけど、お構いなし。
とっても気が強くて、スーパードライ。だけど、二人の時間を一番求めているのは知っている。そのために、やるべきことはさっさと終える。
いつも同じ時間に寝て起きて
「みんなが寝ている間に散歩しよ。」
と言ってくれる。二人で散歩をすると、手をつないで通った幼稚園の頃を思い出す。こんなに手はあたたかくて大きかったかな。
最近の流行りは怖い話。父親と一緒に行った書店で、棚に並ぶ怖い話をほとんど立ち読みしてから買った本。それが「百物語」。
「地獄に行きたい」と呟くと、地獄にいる者と交代し地獄に落ちる話、いろんなタイプのお母さんが売っていて、好みのお母さんと取り替えっこできる「お母さん売り場」、面白かったお話を教えてくれる。
「もし、お母さん取り替えっこできたら、どうする?どんなお母さんがいい?」どう反応するか気になって、少し怖いけど訊いてみた。
「んー。怒らんかったらな。ママは取り変えへんで。」
ちゃんと条件を入れてくるあたりが、らしくて笑ってしまう。「ママは」の「は」の意味が気になるけど、確認するのはやめておいた。