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【連続小説】騒音の神様 123 竹之内、松原の家に寄る

竹之内は、途中雨が降って来ても現場にいた。たまに現場をのぞきに来てはいたが、現場の進行具合に驚いてもいた。
「やっぱりでかいな、この現場は。最初下見に来た時は、森やったのになあ。道もできて平地も広い。これは凄いもんが出来るで。」
竹之内はヒジ打ち男を待ちつつも、万博造成現場を見てまわっていた。ダンプカーの出入りの多さ、働く人間の多さ、そして現場からあふれる熱気と騒々しさが嬉しかった。
「世界の祭りやからな。そら盛り上がるで。現場もそら、盛り上がるわ。明日からはウチの元気なもんは復帰やな。」
現場から皆が帰り出す。竹之内は夜勤組が出てくるまで現場にいた。夜勤の連中と少し話しをして現場を離れた。竹之内は、ハーレーに乗って松原の家に向かった。松原は相変わらず、家の中で寝転がっていた。しかし、ハーレーの音を聞いてすぐ社長が来たことに気付いた。「あかん、社長来よった。こんでええのに。こんなパンパンな顔、見られたないんや。」まだ腫れた顔を持ち上げて起き上がり玄関に向かうと、玄関が開いた。「おう、上がるで。」竹之内はずかずかと家に入り込む。買ってきた氷を流し台で割り、桶に入れた。松原の顔を冷やすためのタオルを濡らす。松原は「すんません、そんなことまでしてもうて。」
と言うと竹之内は
「えらい男前の顔になってるやないか。戦ってたら、そんな顔にもなるわ。ええことや。あと、これ食いもんや。」
と笑顔を見せながら話す。それから竹之内は、現場を見てきたこと、これからの予定などを手短かに話して帰った。松原は、早く現場に復帰したくて仕方なかった。

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