【連続小説】騒音の神様 122 竹之内がまた万博現場に。
「おしゃべりダンプ腰痛男」が、ダンプカーを運転し現場を出るとハーレーが走って来た。当然、竹之内を探していた「腰痛がほんまかどうか分からん男」は声を上げた。
「きよった、竹之内来よったで。おもろいなあ、みんなに言いたいなあ。ヒジ打ち男も来んかなあ。こんなおもろい現場ないで、」
と興奮しながらダンプカーのスピードを上げた。「はよ、現場戻りたいなあ、くそう。急ぐで。」
ハーレーにまたがる竹之内は、バイクを止めて誰かと話しをし始めた。
「竹之内社長、久しぶりやな。珍しいやんか、社長が万博くるの」
「そや。ヒジ打ち男倒すんや。」
「ああ、知ってるで。えらい強いんやろ。ウチの者が見てるわ。呼んでくるわ。」
「俺が知りたいんは、いつ頃来るか、どこのどいつか、が知りたい。戦い方はどうでもええんや。」
竹之内はこうして、一日中万博現場をハーレーで移動しながら話を聞いた。何度も、造成地内のメイン道路にバイクを止めて行きかう車やバイクを眺めた。暑い陽射しの中で、汗がしたたり落ちた。竹之内を知る者が、たまに近づいて挨拶してくる。
「竹之内社長やないですか、どないしたんですか。こんな暑いとこで。」
「ああ、暑いのは好きなんや。ヒジ打ち男待ってるんや。」
等と言葉を交わす。
「話し好きの腰痛ダンプ」は、何度も竹之内を見かけたが近寄ることはしなかった。ダンプカーの中で大声で独り言を言う。
「あんな危ない奴と話せるかい、一日中おりすぎやろ。あいつがおると現場で喋るのも落ち着かんわ。適度に帰ってもらわんとなあ。」
噂話はしたいが、竹之内の近くに行くのは嫌なようだった。