【完全版】DRESSTHING ビルドガイド
この記事は、自作キーボードキット『DRESSTHING(ドレッシング)』の組み立て方、及び注意点を解説していくビルドガイドです。
『DRESSTHING』は自身で組み立てていただくDIYキットのため、様々な注意点があります。購入後に後悔しないよう、必ず全てに目を通してからご購入ください。
分かりづらいと感じた部分はコメントをいただければ、随時修正していきます。
※Amazonリンクはアフィリエイトリンクを使用しています。
『DRESSTHING』について
自作キーボード『DRESSTHING』の仕様と特徴は以下の通り。
コンセプトや、その他の特徴については、改めて記事を書く予定なのでお待ちください。
↓動画内で、プロトタイプを使ってDRESSTHINGの紹介をしています。
また、DRESSTHINGの進捗についても、Xにて「#DRESSTHING」を付けてポストしているので覗いてみて下さい。
▷【#DRESSTHING がついたポストを検索】
0.『DRESSTHING』購入前の注意点
DRESSTHINGは個人開発のプロダクトとなります。メーカー品のような品質、性能、安定性を求める方の期待にはお応えできませんので、ご購入はお控え下さい。
特に、この章でお話しする3つの点については、よく確認いただき、ご納得の上でご購入ください。
0-1.はんだ付け&組み立てが必要な"DIYキット"であること
DRESSTHINGは購入者自身でのはんだ付け作業と、ドライバーを使用した組み立て、ファームウェア書き込みが必要になるDIYキットです。組み立てには別途工具などを準備する必要があります。
組み立て工程も含めてこのプロダクトの価値だと考えているので、完成品としての販売ではないことをご理解ください。
必ずこのビルドガイドを最後までお読みいただき、ご自身で組み立て可能か判断してからご購入いただくようお願いいたします。不明点などは購入前にご質問ご相談ください。
0-2.販売キット以外にも別途必要なパーツがあること
DRESSTHINGは自分好みのスイッチ、キーキャップ、ダイヤルなど、ユーザーによってさまざまなカスタマイズができます。
ここは自作キーボード最大の魅力でもあるので、それらのパーツに関してはキットに同梱していません。
ご自身のお気に入りのパーツを別途ご用意ください。別途必要なパーツの総額は、ピンキリですがキットとは別に10000〜20000円ほどかかると思ってください。(もちろんもっとお金をかけることもできます。)
0-3.頻繁なスタイル変更には非対応
DRESSTHINGは3つのスタイルで使うことができ、キーボード上部のバッジ部分と、ミドルプレートを取り替えることでスタイル変更が可能となります。
ただし、このスタイル変更には手間がかかりますし、頻繁なスタイル変更における組み替え負荷を想定していません。特に、上部バッジ部分の差し替えは50回以内とさせていただきますのでご理解ください。
一通りスタイルを試したら、自分に合ったスタイルでご使用を続けて下さい。
1.パーツ確認
「DRESSTHING Standard kit」をはじめ、組み立てに必要なパーツ、工具を確認していきます。すでにお持ちのものもあると思いますので、必要に応じて準備して下さい。
1-1.DRESSTHING Standard Kitの中身を確認
このビルドガイドでは「PCBセット」「パーツセット」「アクリルセット」の3つのパッケージがひとつになった『DRESSTHING Standard kit』を想定して解説していきます。
フラップは両面テープで留めているだけなので、バリバリと剥がして大丈夫ですが、内容物を傷つけないようにしてください。
1-1-1.PCBセット
DRESSTHINGの核となる部分「PCBセット」の中には2枚のPCB(プリント基板)が入っています。
base board
base boardには、メイン基板 左、メイン基板 右、サポート基板 2枚、HDMI基板 2枚の計6枚の基板がひとつにまとまっています。
base board裏面にはダイオードやスイッチソケットなどのパーツがはんだ付けされています。画像と比較しながら全て実装さているか確認して下さい。
flex board
flex boardは通信線基板シート、基板固定用シートが一枚になっています。
flex boardは0.1mmととても薄いシート状の基板なので、製造時にシワが入ってしまったり、レーザーカットの際に焦げ跡がついてしまう場合があります。
この2点を防ぐのは難しく、ピックアップしていくと価格がとてつもなく上がってしまうため、仕様とさせていただきます。ご了承ください。
1-1-2.パーツセット
「パーツセット」は、組み立てるためのネジやスペーサーなどをまとめたセットです。
内容物は以下の通りです。
基本的にパーツセットのケースに空いてるスペースがなければ、全て揃っているはずですが、必ず開封し確認して下さい。
【重要】コンスルーの向きを確認
ここで一度、DRESSTHINGの組み立ての中でも重要なパーツである「コンスルー」についての紹介をしておきます。
コンスルーは基板のスルーホール(基板に空いている穴)に差し込むことで、はんだ付け不要で取り付けできる便利パーツです。
ただ、このコンスルーには表と裏、上と下がしっかりと決められています。取り付けの際に向きを合わせる必要があるので、表裏、上下それぞれの見分け方を解説していきます。
【表と裏の見分け方】
まずは表裏の見分け方。側面に金色と黒色の窓が交互に並んでいる面が"表面"、何もない面が"裏面"です。
【上下の見分け方】
上下は表面の窓とのスペースで見分けます。表面を見ると、窓からピンまでのスペースに差があることに気がつくと思います。今回のビルドガイドではスペースの狭い方を"上"、スペースの広い方を"下"として説明していきます。
コンスルーはBLE Micro Proの取り付け、シート基板のはんだ付け、HDMI基板の組み立ての3箇所で使用します。それぞれの組み立て方によって取り付け向きが変わるので、注意して取り付けて下さい。
1-1-3.アクリルセット
最後に「アクリルセット」の内容物です。大小あわせて9種類、10枚のアクリルプレートがセットになっています。
こちらも開封して中身が揃っているか確認して下さい。
傷防止のため、アクリルの保護紙を付けたまま梱包していますので、組み立て時に剥がして下さい。端を少しめくったあとピンセットで丁寧に残りの保護紙を剥がします。
剥がしづらい場合は端に少し水をつけると保護紙が浮いてくるので剥がしやすくなります。
1-2.キット以外に必要なもの
『DRESSTHINGキット』をキーボードとして完成させるには、キット以外のパーツも必要になってきます。事前に用意しておいてください。
1)BLE Micro Pro 1個
DRESSTHINGを無線接続するためのマイコン。
↓せきごんさんのショップ
DRESSTHINGでの使用方法はこのガイドで解説していきますが、BLE Micro Proの公式ページの解説にも目を通しておいてください。
2)キースイッチ 35個
キースイッチを35個用意して下さい。
DRESSTHINGで使用できるキースイッチは、通常プロファイルの「MXスイッチ」とLofreeキーボードに使われているような背の低いロープロファイルスイッチ「choc v2 Full POM」同じく背の低いロープロファイルスイッチ「choc v1」の3種類です。
↑画像真ん中の白いロープロファイルスイッチ
3)キーキャップ 35個
1uサイズ(正方形)のキーキャップが35個必要となります。
用意したスイッチに対応したキーキャップを準備しましょう。
4)EC12互換品ロータリーエンコーダー 1個
DRESSTHINGは右下にダイヤルを設置しています。このダイヤルの根元部分を「ロータリーエンコーダー」と呼び、キースイッチ同様、通常の高さのロータリーエンコーダーと、背の低いロープロファイルロータリーエンコーダーがあります。
DRESSTHINGではどちらも使用可能なので、どちらか1つを用意してください。(EC12互換品に対応しています。)
5)ロータリーエンコーダーノブ 1個
ロータリーエンコーダーに対応したノブも必要となります。サイズは19mm以下のノブを一緒に用意しておきましょう。
ノブも通常プロファイルとロープロファイルで形状が異なるので購入する際は十分注意して下さい。
6)コイン電池 1個
無線接続する際のバッテリーとして。CR2032が1つ必要です。
7)HDMIケーブル 1本 (分割型での使用時に必要)
DRESSTHINGは分割スタイルの左右接続にHDMIケーブルを使用します。お好きな長さのものを用意して下さい。
細いケーブルはスマートで良いのですが、断線しやすいのでまずは通常の太さのケーブルを使うことをおすすめします。
1-3.用意する道具
ここからは、組み立てに必要な工具や道具を紹介していきます。
1~5)はんだごて、はんだ、こて台、はんだクリーナー、耐熱マット
電池ケース、スライドスイッチ、ロータリーエンコーダー、コンスルーをはんだ付けするために必要な工具です。はんだごてについては温度調節ができるものを推奨します。
6)ピンセット
組み立てに使用するパーツは小さなものばかりなので、ピンセットを使って作業を行います。様々な種類がありますが、個人的には先の曲がった、わし口のピンセットがおすすめです。
7)ニッパー
電池ケース、スライドスイッチ、ロータリーエンコーダーのピンのカットに使用します。カットしたピンが飛び散らない、飛散防止ニッパーがおすすめです。
8)棒やすり
PCBの折り跡を整えるためのやすり。紙やすりでも可。
9)マスキングテープ
電池ケース、スライドスイッチ、ロータリーエンコーダーのはんだ付けの際、それぞれのパーツがずれないよう仮止めするために使用。
10)プラスドライバー(#0)
組み立て時のネジ止めに使用、本キットで使用するネジは#0のプラスドライバーに対応しています。これよりも小さいプラスドライバーを使用するとネジが潰れてしまう可能性があるので、対応したドライバーを用意して下さい。
11)六角ドライバー(H1.5)
バッジプレートの取り付けで使用する、六角穴付きボルトを締めるためのドライバー。H1.5に対応しています。
12)Google Chromeが使えるPC
ファームウェアの書き込みと、キーマップの変更に使用します。どちらも、ウェブ上で行うためGoogleChromeが使えるPCを用意して下さい。
13)USB-Cケーブル
PCと繋いで設定するために必要です。必ずデータ通信に対応したケーブルを用意して下さい。
14)はさみ
flex boardの切り離し、パーツセットのパッケージ開封に使用します。
2.組み立て前の準備
組み立て前の準備として、「2-1.ファームウェアの書き込み」「2-2.基板の切り離し」を行っていきます。
2-1.ファームウェアの書き込み
まずはマイコンへファームウェアの書き込みを行っていきます。
DRESSTHINGは BLE Micro Proを使用した無線接続に対応しているので、ここではBLE Micro Proへのファームウェア書き込みの方法を解説していきます。
この工程で必要なものは以下の通りです。
ここでの工程は
・「2-1-1.BLE Micro Proのアップデート」
・「2-1-2.ファームウェアの書き込み」
・「2-1-3.デフォルトキーマップの書き込み」
の3工程です。
ファームウェアの書き込みに必要な4)と5)のファイルをダンロードして、デスクトップなど分かりやすいところへ移動しておいて下さい。
↓【BLE Micro Pro用 DRESSTHINGファームウェアBINファイル】
↓【デフォルトキーマップJSONファイル】
BLE Micro Pro公式に記載している方法を基にDRESSTHING用に置き換えて解説していきます。公式ページにも目を通しておいてください。
2-1-1.BLE Micro Proのアップデート
ファームウェアを書き込む前に、まずはマイコンであるBLE Micro Proを最新バージョンにアップデートします。
PCからBLE Micro Pro Web Configuratorにアクセス。
画面上部の「Update Bootloader」を選択。
プルダウンリストから最新版のブートローダーを選択し、「Update」をクリック。
ポップアップが表示されたら、BLE Micro ProとPCをUSB-Cケーブルで接続します。ポップアップに新しく表示されたデバイスを選択して「接続」をクリックすると書き込みが始まります。
書き込みが終わったらケーブルを一度抜き差ししておきます。←忘れずに!
画面上部の「Update Application」を選択。
リストから最新版のファームウェアを選択します。(ble_micro_pro_vial_~)
「Update」をクリックするとUSBデバイスの選択画面になるので、BLE Micro Proを選択して「接続」をクリックすると書き込みが始まります。
ゲージが100%になり書き込みが完了したら、ファームウェアの書き込みへと進みます。
2-1-2.DRESSTHINGファームウェアの書き込み
引き続きBLE Micro Pro Web Configuratorのページでファームウェアの書き込みを行っていきます。
画面上部の「Edit config」を選択。
キーボードリストのプルダウンから「upload your own」を選択。
「Update」をクリックすると書き込むBINファイルを求められるので、ダウンロードしておいた、「soo_suke_DRESSTHING_config.bin」を選択します。
USBデバイスを選択するポップアップが表示されるので、BLE Micro Proを選択して「接続」をクリックすると書き込みが始まります。
書き込みが成功したら完了です。
2-1-3.キーマップの書き込み
この状態ではまだキーマップを設定できていないので、用意したデフォルトキーマップを書き込んでいきます。
BLE Micro Proを接続したまま、PCからVIA Custom UI for Vialにアクセスします。
BLE Micro ProをUSB-Cケーブルで接続し「Select Keyboard」をクリック。
「Add New Keyboard」と表示されるのでこちらもクリック。
ポップアップが表示されるので「(BMP)DRESSTHING」を選択します。
接続が成功すると設定画面になるので「Keymap」をクリック。
DRESSTHINGのレイアウトが表示されれば成功です。
それでは、デフォルトキーマップを書き込んでいきます。画面左側の「UP SETTING」をクリック。
ファイル選択画面が現れるのでダウンロードした「DRESSTHING-vial-setting.json」を選択し開きます。
デフォルトキーマップが書き込まれたら、ファームウェア書き込みは全て完了となります。
2-2.基板の切り離し
続いて、base boardとflex boardそれぞれ一体になっている基板を切り離していきます。
2-2-1.base boardの切り離し
まずはbase boardの切り離し。基板はミシン目でくっついているだけなので、押し込むことで簡単に折ることができます。
力はそこまで必要ないと思いますが心配な方は、ミシン目に沿って何度かカッターで切り込みを入れると折りやすくなります。
切り離しただけでは、ミシン目の跡でケガをしてしまう恐れがあるので、やすりを使って整えてください。指でなぞって引っかからない程度になれば大丈夫です。
以下の4種類、計6枚の基板に分かれれば完了です。
2-2-2.flex boardの切り離し
flex boardはハサミを使って点線に沿って切り離してください。
以下の2枚に分かれれば完了です
3.はんだ付け
いよいよ、はんだ付けをおこなっていきます。
自作キーボードが初めての方はここで身構えてしまうと思いますが、DRESSTHINGではほとんどのパーツが実装済みですし、はんだ付けするパーツも少ないので比較的難易度は低いのではないかと思います。
実際に作業する前に、まずは一通りの流れを確認して下さい。
はんだ付けパートで用意するパーツは全部で7種類、計11個です。
ロータリーエンコーダーは自身で購入したもの、その他のパーツは「パーツセット」に含まれているので取り出しておきます。
3-1.ロータリーエンコーダーのはんだ付け
それでははんだ付けを始めていきます。まず、はじめにロータリーエンコーダーのピンを表面(パーツが何もついていない面)から基板に差し込みます。
ロータリーエンコーダーのピンとスルーホール(基板に開いている穴)が合うように差し込んでください。上下の固定用ピンを内側に押し込むとさしこみやすくなります。
ロータリーエンコーダーは差し込むだけでも固定されますが、マスキングテープで固定するとはんだ付け時にずれないため安心です。(マスキングテープにハサミで穴を開けると固定しやすいです。)
裏面の飛び出ているピン5箇所(ロープロファイルの場合は3箇所)をニッパーでカットして下さい。上下についている大きなピンは固定用のピンなのでカットせず、はんだ付けも必要ありはません。
ピンが飛び散らないよう指で押さえるようにしてカットします。
各ピンをはんだ付けしていきます。先ほどお伝えした通り、大きなピン2つは、はんだ付け不要です。
はんだごてが十分に温まったら、ピンとスルーホール両方にコテ先を当てて温めていきます。3秒ほどしたらコテ先にハンダを当てると溶けていくので、スルーホールの穴が塞がったらハンダを離してから、コテ先を離します。
はんだはスルーホールが塞がるぐらいの量で大丈夫です。
ロータリーエンコーダーはプッシュ機能の有無で、ピンの数が異なります。
プッシュ機能があるモデルは5ピン、プッシュ機能が無いタイプ(ロープロファイルはこちらのタイプ)は3ピンとなるので、それぞれのピン数分はんだ付けして下さい。
3-2.スライドスイッチのハンダ付け
スライドスイッチを表面(パーツが何もついていない面)からスルーホールに合わせて差し込みます。
上下の向きはどちらでも大丈夫です。
スライドスイッチは差し込むだけでは固定されないので、マスキングテープでしっかりと固定して下さい。
メイン基板を裏返し、飛び出しているピンを3箇所カットします。
3箇所はんだ付けしていきます。
こちらもはんだの量を多くしすぎないよう注意しましょう。
3-3.電池ケースのハンダ付け
電池ケースは、基板を裏返して裏面からスルーホールに合わせて差し込みます。
上が2ピン、下が1ピン。スルーホールに合わせて差し込みます。
こちらもマスキングテープで固定してください。
今まで同様に飛び出たピンを3箇所カットする。
ピンを3箇所はんだ付けします。
これでメイン基板へのはんだ付けは完了です。
3-4.通信線シートとサポート基板のハンダ付け(一体型、折畳型スタイル用)
最後のはんだ付け箇所は、左右接続のアタッチメント「通信線シート」です。
ここは今までのはんだ付けとは異なり、組み立て要素を含み、注意点も多いので読みながら進めるのではなく一度最後まで読んでから作業に取り掛かるようにして下さい。
この工程で必要になる基板とパーツは以下の通り。
完成形はこのような形になります。
下からサポート基板、通信線シートを重ね、5ピンコンスルーを上から差し込んで固定しています。
差し込んだ5ピンコンスルーのピンを裏側から左右10ピンづつ、計20ピンをハンダ付けしてあります。
【※最重要!】通信線シートは差し直しができない
DRESSTHINGを組み立てる工程の中でも一番の注意点が、通信線シートへの差し直しができないことです。
コンスルーのピンをよく見るとループ状になっているのが分かります。
このループ状のピンをスルーホールに差し込むと、ピンがバネのように広がろうとするため、はんだ付けなしで固定できる、という仕組みになっています。
そのため、今回使用している通信線シートのような薄い基板に差し込む際、シートのスルーホールを押し広げながら刺さっていきます。
一度差し込んだコンスルーを抜いてしまうと、画像のようにスルーホールが広がり、ゆるくなってしまいます。
そこへコンスルーを差し直しても、一度押し広げられてしまったスルーホールとコンスルーのピンとの接触が不十分となり、左右通信に影響が出てしまうというわけです。
コンスルーを差し込むときは基板の重ね順など、十分確認してから行うようにしてください。
サポート基板とコンスルーははんだ付けするまで固定されないので、サポート基板は外れても大丈夫です。あくまで差し直しができないのは通信線シートのみなので安心してください。
組み立てとハンダ付け
それではここから、シート基板とサポート基板のはんだ付けをしていきます。先ほどご覧いただいた通り、以下の画像のように重ね合わせます。通信線シートのロゴマークの向きに注意して下さい。
下がサポート基板(左右、裏表の区別はありません)、その上に通信線シートが乗っています。この状態でコンスルーの向きに気をつけて5つずつ並んでいるスルーホールへ差し込んでいきます。コンスルーの向きについては「【重要】コンスルーの向きを確認」の項目を参照して下さい。
コンスルーの向きは、表面(金色と黒色の窓がある方)が全て手前を向くように、下側が(スペースが広い方)が基板側になるように差し込みます。
差し込んだ後、基板からコンスルーが浮いていないか確認して下さい。浮いている場合は隙間がなくなるまできちんと差し込んでください。浮いたままハンダ付けしてしまうと接触不良の原因となります。
コンスルーを隙間なく差し込めたら、基板を裏返して全てのピンをはんだ付けしていきます。はんだの量は多すぎると組み立て時に干渉してしまう場合があるため、スルーホールが塞がるぐらいの量にしましょう。
この時に基板からコンスルーが浮いて、はんだ付けされてしまうことがあるので、注意してはんだ付けを行って下さい。
左右10ピンずつ、計20ピンのはんだ付けが完了したら、全てのはんだ付けは終了です。お疲れ様でした。
4.組み立て
DRESSTHINGは「一体型」「折畳型」「分割型」の3スタイルから選べるのが最大の特徴。この工程では、この3つのスタイルの組み立て方を紹介していきます。
4-1. DRESSTHINGの構造
組み立てに取り掛かる前に、まずはDRESSTHINGの構造をみていきましょう。
DRESSTHINGは6層のプレートで構成されています。
このビルドガイドでは、全てのスタイルで共通する部分2)と3)を「メインユニット」、それぞれのスタイルで異なる部分4)~6)を「ボトムユニット」と呼び解説していきます。
4-2.メインユニットの組み立て
まずは3つのスタイルに共通する「メインユニット」を組み立てていきます。このパートは、
「4-2-1.BLE Micro Proの取り付け」
「4-2-2.コイン電池の取り付け」
「4-2-3.スイッチプレートの取り付け」
の3工程となります。
4-2-1.BLE Micro Proの取り付け
マイコンである「BLE Micro Pro」をコンスルーを使いメイン基板に取り付けていきます。
用意するものは以下の4つ。
はじめに、BLE Micro Proへ12ピンコンスルーと13ピンコンスルーを差し込んでいきます。コンスルーの向きについては「【重要】コンスルーの向きを確認」の項目を参照して下さい。
BLE Micro Pro の部品が何もついていない面を表、USBコネクタを上にした時、左側の列に13ピンコンスルーを、右側に12ピンコンスルーを差し込みます。
コンスルーの向きは、表面(金色と黒色の窓がある方)が全て左側を向くように、上側(スペースが狭い方)がBLE Micro Pro側になるように差し込んで下さい。
この時、右側の12ピンコンスルーは一番上のスルーホールを空けて差し込みます。上の画像のような形で差し込まれていればOKです。
差し込む際、必ずピンセットを使って差し込んでください。指で押し込むとケガをする恐れがあります。
差し込んだ後、基板からコンスルーが浮いていないか確認し、浮いている場合は隙間がなくなるまできちんと差し込んでください。
BLE Micro Proにコンスルーを取り付けた後は、反対側のピンをメイン基板右に裏側から差し込みます。BLE Micro Proを使う場合は、基板側の「WIRED」と書かれたスルーホールを空けるように取り付けて下さい。
これでBLE Micro Proの取り付けは完了です。
4-2-2.コイン電池の取り付け
続いて、DRESSTHINGのバッテリーとなるコイン電池をセットしていきます。
スライドスイッチが上にスライドされて「OFF」になっていることを確認し電池ケースにコイン電池CR2032を取り付けます。
コイン電池はプラス面(平らな面)が見える向きでに取り付けて下さい。
4-2-3.スイッチプレートの取り付け
メイン基板の組み立てが終わったら、ここにスイッチプレートを取り付けていきます。
ここで用意してほしいパーツは3種類。
はじめに、スイッチプレートの四隅にキースイッチをはめていきます。この時、キースイッチの上下の向きに注意して下さい。
DRESSTHINGはMXスイッチとロープロファイルスイッチ(choc v1、choc v2 Full POM)に対応しています。それぞれで差し込むソケットが変わるため、スイッチプレートへの取り付け向きも変わります。
通常の高さのMXスイッチの場合はふたつの金属ピンが上になるようにしてください。2種類あるソケットのうち、MXスイッチのピンは上側のソケットに差し込まれるためです。
ロープロファイルスイッチ(choc V1、choc v2 Full POM)の場合は金属ピンが下向きになるようにはめ込んでください。ロープロファイルのスイッチのピンはMXスイッチの逆、下側のソケットに差し込まれます。
このスイッチプレートをメイン基板にはめていきます。
キースイッチの金属ピンは折れやすいためソケットの穴とピンの位置が合っているかを確認してはめ込んでください。
この時、スイッチに押されてソケットが剥がれてしまわないよう裏側からおさえながら取り付けて下さい。
他のスイッチも同様にはめて、共通部分であるメインユニットの完成です。
4-3.スタイル別の組み立て
ここからは、それぞれのスタイルで組み立て方が変わってくる部分となります。使いたいスタイルの項目を選んで読み進めて下さい。
▷【一体型の組み立て】
▷【折畳型の組み立て】
▷【分割型の組み立て】
4-3.a 一体型の組み立て
一体型の組み立てに必要なパーツを用意します。
アクリルプレートの保護紙を全て剥がし、ボトムプレートの裏面(溝が彫ってある面)にゴム足を貼り付けていきます。一体型で使う場合は画像を参考にして4箇所ゴム足を貼り付けて下さい。
他のスタイルでも使う予定がある場合は、ゴム足の位置をずらす必要があるので貼り付け位置はこちらの位置に貼り付けてください。
【一体型ボトムユニットの組み立て】
画像のように、上からスペーサー、一体ミドルプレート、ボトムプレートを重ね、底面からM2ネジ8mmでネジ止めします。スペーサーは上部のバッジ部分となる2箇所に9.5mmスペーサーを、そのほかの8箇所に4.5mmスペーサーを使用して下さい。
一体ミドルプレートは上から見て「DRESSTHING」の文字が読める向きで重ねます。
これでボトムユニットの完成です。続いて先ほど組み立てたメインユニットと組み合わせていきます。
【ボトムユニットとメインユニットを組み合わせる。】
それではメインユニットとボトムユニットを組み合わせていきます。
シート基板アタッチメントのコンスルーをメイン基板上部のスルーホールに裏側から差し込みます。
アタッチメントを取り付けたメイン基板をボトムユニットに重ね、左右4箇所ずつ計8箇所をM2ネジ4mmで止めていきます。
一体バッジプレートを六角穴付きM2ボルトで止めます。
最後にキーキャップとダイヤルノブを取り付けて組み立て完了です。
このまま「5.DRESSTHINGの使い方」へ進んでください。
4-3.b 折畳型の組み立て
折畳型の組み立てに必要なパーツを用意します。
アクリルプレートの保護紙を剥がし、ボトムプレートの裏面(溝が彫ってある面)にゴム足を貼り付けていきます。画像を参考にして8箇所ゴム足を貼り付けて下さい。
【折畳型のボトムユニットの組み立て】
画像のように、上からスペーサー、分割ミドルプレート、基板固定シート、ボトムプレートを重ね、底面から8mmM2ネジでネジ止めします。スペーサーは上部のバッジ部分となる2箇所に9.5mmスペーサーを、そのほかの8箇所に4.5mmスペーサーを使用して下さい。
分割ミドルプレートは上から見て「DRESSTHING」の文字が読める向きで重ねます。
これでボトムユニットの完成です。続いて先ほど組み立てたメインユニットと組み合わせていきます。
【ボトムユニットとメインユニットを組み合わせる】
それではメインユニットとボトムユニットを組み合わせていきます。
シート基板アタッチメントのコンスルーをメイン基板上部のスルーホールに裏側から差し込みます。
アタッチメントを取り付けたメイン基板をボトムユニットに重ね、左右4箇所ずつ計8箇所をM2ネジ4mmで止めていきます。
分割バッジプレートを六角穴付きM2ボルトで止めます。
最後にキーキャップとダイヤルノブを取り付けて組み立て完了です。
このまま「5.DRESSTHINGの使い方」へ進んでください。
4-3.c 分割型の組み立て
分割型の組み立てに必要なパーツを用意します。
まず全てのアクリルプレートの保護紙を剥がします。
ボトムプレートの裏面(溝彫が彫ってある面)にゴム足を貼り付けていきます。分割型で使う場合は画像を参考にして8箇所ゴム足を貼り付けて下さい。
折畳スタイルでも使う予定がある場合は、ゴム足の位置をずらす必要があるので貼り付け位置はこちらの位置に貼り付けてください。
【分割型ボトムユニットの組み立て】
次に画像のように、上からスペーサー、分割ミドルプレート、ボトムプレートを重ね、底面から8mmM2ネジでネジ止めします。スペーサーは上部のバッジ部分となる2箇所に9.5mmスペーサーを、そのほかの8箇所に4.5mmスペーサーを使用して下さい。
分割ミドルプレートは上から見て「DRESSTHING」の文字が読める向きで重ねます。
続いて、HDMIコネクタアタッチメントを組み立てていきます。
HDMIコネクタ基板に5ピンコンスルーを差し込んでいきます。
コンスルーには向きについては「コンスルーの向きを確認する」の項目を参照して下さい。
画像のようにHDMIコネクタを上にし、向かい合うように並べた時、コンスルーの向きは、表面(金色と黒色の窓がある方)が全て手前を向くように、下側(スペースが広い方)がHDMI基板側になるようにして下さい。HDMI基板には左右の指定はありませんので、どちらがどちらでも構いません。
これでボトムユニットのパーツは完成です。続いて先ほど組み立てたメインユニットと組み合わせていきます。
【ボトムユニットとメインユニットを組み合わせる。】
それではメインユニットとボトムユニットを組み合わせていきます。
HDMIコネクタアタッチメントのコンスルーをメイン基板上部のスルーホールに裏側から差し込みます。
アタッチメントを取り付けたメイン基板をボトムユニットに重ね、左右4箇所ずつ計8箇所を4mmM2ネジで止めていきます。
分割バッジプレートを六角穴付きM2ボルトで止めます。
最後にキーキャップとダイヤルノブを取り付けて組み立て完了です。
5. DRESSTHINGの使い方
DRESSTHINGが完成したら、いよいよキーボードとして使っていきます。この章ではDRESSTHINGを無線接続する方法と、デフォルトで設定してあるキーマップについて紹介していきます。
5-1.デバイスとのペアリング
M1 MacBook Airを例にペアリング方法を解説していきます。
まずはスライドスイッチを下にスライドしてDRESSTHINGの電源を入れます。
「L」の位置のキーを押しながら「P」の位置のキーを押して、DRESSTHINGをペアリングモードにします。
Mac側で「システム設定」→「Bluetooth」を開くと「(BMP)DRESSTHING」という名前のデバイスが現れます。
現れた「(BMP)DRESSTHING」の接続ボタンをクリックし、「自分のデバイス」に追加されたら完了です。
↓BLE Micro Pro公式ページにペアリング方法が記載されているので、ペアリングがうまくいかない時は公式ページを参照して下さい。
5-2.デフォルトキーマップの確認
35キーしかないDRESSTHINGはキーマップの設定次第で使い勝手が変わってきます。
ここではDRESSTHINGで使用しているマイコンBLE Micro Pro専用のキーマップ変更サイト「VIA Custom UI for Vial」を使ってデフォルトキーマップの確認をしていきます。
5-2-1.キーマップ確認準備
キーマップの確認準備として「2-1-3.キーマップの書き込み」で使用したVIA Custom UI for Vialにアクセスします。
「2-1-3.キーマップの書き込み」の同様、「Select Keyboard」を選択後「Add New Keyboard」をクリック。
PCとペアリングしている状態であれば「(BMP)DRESSTHING」が現れるので、選択後接続をクリックで完了です。
そのまま、「Keymap」をクリックしてDRESSTHINGのキーマップを表示させます。
5-2-2.デフォルトキーマップの紹介
それではここから実際にデフォルトキーマップを紹介していきます。
【レイヤー0】アルファベット
まずベースとなる「レイヤー0」にはアルファベットを中心に配置されています。各キー中央にある文字がキーをタップ(短押し)したときに入力される文字です。右上にある丸い2つのキーはロータリーエンコーダーを回した時に入力されるキーです。
中央のキー以外にも一回り小さな文字があるのが分かると思います。これはホールド(長押し)したときに入力されるキーです。
例えば、最下段左から二番目のTabキーをタップしたときは「Tab」が入力され、ホールドしたときは「GUI(command)」が押されている状態になります。
ただ、見ての通りこのままでは数字も記号も入力できないので、このレイヤー(階層)を追加してその他にも必要なキーを配置してあります。
【レイヤー1】数字、記号
このレイヤーには数字と記号をまとめています。レイヤー0の最下段左から三番目のキー「spacebar」をホールドしている間このレイヤーに移行します。(レイヤー0の画像を見返すと、ホールドに「Layer1」が割り当てられているのが分かると思います)
【レイヤー2】矢印キー
続いては「レイヤー2」矢印キーとファンクションキーをまとめたレイヤーです。最下段左から四番目のキー「backspace」をホールドしている間このレイヤーに移行します。
【レイヤー3】マウス操作キー
このレイヤーは「レイヤー2」にいるときに最下段左から三番目のキーをホールドしている間移行します。(backspaceキーをホールドしながら、spacebarをホールド)
右側にマウスカーソルを動かすキーを、左側にクリックボタンのキーを配置しています。マウスの代わりには全くなりませんが、iPadでアプリをアクティブにするためのクリックなど、簡易的な操作で使っています。意外と便利です。
【レイヤー4】BLE Micro Pro設定
最後のレイヤーはBLE Micro Proの設定関連のレイヤーです。「L」をホールドしている間このレイヤーに移行します。
デバイスを切り替えたり、スリープモードにするためのBLE Micro Proの独自キーを配置しています。
BLE Micro Pro独自キーの使い方は公式ページで紹介されています。
5-3.キーマップの変更方法
それでは最後に、キーマップの変更方法を紹介してビルドガイドを締めくくりたいと思います。
DRESSTHINGで使用しているマイコンBLE Micro Proは、ここまで紹介してきたキーマップ変更サイトの「VIA Custom UI for Vial」以外にも、「Vial公式サイト」を使用した有線接続でのキーマップ変更が可能です。
↓Vialの使い方については、サリチル酸さんの記事がとても綺麗にまとまっていて分かりやすいので、こちらを参考にキーマップ変更をしてみて下さい。
このビルドガイドでは「VIA Custom UI for Vial」でのキーマップ変更の方法についてお話ししていきます。先述したサリチル酸さんの記事をみていただくと分かるとおり、vialには本当にたくさんの機能があります。
すでに長い記事になってしまったこのビルドガイド内で全てを解説するにはボリュームがありすぎる(僕も全てを理解していない)ので、ここではタップとホールドの設定方法にしぼって紹介していこうと思います。
タップ(短押し)キーの登録
まずは、タップ(短押し)キーの設定方法から。タップにかんしては下に並んでいるキーから、レイアウト図の配置したいキーにドラック&ドロップするだけ。
配置できるキーは一般的なキーの他にも、マウス操作キーやメディアキーなども指定できますし、レイアウト左下のプルダウンからはキーリストの言語切り替えも可能です。
ホールド(長押し)キーの登録
ホールド(長押し)キーの登録方法について。タップを設定したキーをクリックすると、ポップアップが出現するので「Option(Hold)」にホールドした時のキーを設定します。
「Option(Hold)」クリックするとプルダウンリストが表示されます。
そこからレイヤー移行に使いたい場合は「Layer Tap x(xは移行先のレイヤーナンバー)」を選択。(レイヤー指定する場合は、移行先の同じキーは▽に指定して下さい)
装飾キーにしたい場合は「Mod Tap」を選択し入力したい装飾キーをチェックします。
そのほかの機能と設定
ここで紹介したのは一部も一部。30%キーボードをより使いやすくしてくれる「タップダンス」や「コンボ」「マクロ」など様々な機能や設定があります。
このビルドガイドでは紹介しきれないので、先ほど紹介したサリチル酸さんの記事を参考にしてみてください。
キーマップについては、正解はたくさんあれど不正解はないので、一度設定した後もこまめに修正しながら使いやすいキーマップに育てていきましょう。
最後に
2万文字をも超える記事をここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
DRESSTHINGは自分で組み立てなくてはいけないし、苦労して組み立てたキーボードには35キーしかない。
そんな導入ハードルの高いキーボードではありますが、それでもDRESSTHINGを手にしてくれる人に、どうしたら愛着を持ってもらえるかを考えて設計してきました。
メインキーボードとして導入される人は少ないと思いますが、いつかDRESSTHINGが手放すことできない唯一無二の相棒のようなキーボードとなることを願っています。
ぜひ、完成した暁には「#DRESSTHING」のタグをつけてシェアしていただけると嬉しいです。
ご質問などあれば、このnoteにコメントしていただくか、各種SNSへご連絡ください。
それでは、皆様のデスクを彩るDRESSTHINGを見れる日を楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【この記事はDRESSTHINGで書きました】