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ソニーのテクノロジーでめざす  素材を通じた製品の環境配慮の取り組み

ソニー広報部のYAです。

ソニーは、2050年に向けた環境計画「Road to Zero」のもと、気候変動や資源、化学物質や生物多様性の4つの視点で環境負荷ゼロをめざす取り組みを推進しています。
その中でも今回は「資源」に着目し、優れた音質と環境への配慮を両立する「高音質再生プラスチック」を開発した藤平さん、環境に配慮した100%バイオマス由来のカネカ生分解性バイオポリマ―「Green Planet®」のプロジェクトを主導した澤田さんの2人のエンジニアへのインタビューを通じて、素材開発の裏側を紹介します。

環境負荷低減に向けたさまざまな取り組みの裏に、ソニーのテクノロジーが生かされていることが伝わればうれしいです。

音にも環境にも妥協しない 独自の再生プラスチック開発

ソニーでは、2000年代からウォークマン®やCD/DVDプレーヤーに植物を原料とするプラスチックを採用したり、2015年には良音再生PS(ポリスチレン)樹脂を開発し、スピーカーの内部部品に採用したりと、環境に配慮した素材や製品の開発を行ってきました。
2024年6月に発売したホームオーディオの製品においても、本体の複数の部品に「高音質再生プラスチック」を採用するなど、バージンプラスチックの使用量削減に向けた取り組みを拡大しています。

廃ディスクと使用済みボトルを原料とし、独自の再生プラスチックを開発。
製品のうち最も樹脂使用量の多かった筐体部分に使用することで、
本体の再生プラスチック利用率向上に貢献している。

高音質を追求するホームオーディオ製品ならではのチャレンジも…

6月に発売した新モデル、サウンドバーのBRAVIA Theatre Bar 9(A9000)、BRAVIA Theatre Bar 8(A8000)、ホームシアターシステムのBRAVIA Theatre Quad(A9M2)、ワイヤレスネックバンドスピーカーのBRAVIA Theatre U(AN7)での採用に向けて新たに開発された高音質再生プラスチックは、再生PC(ポリカーボネート)とABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂を原料としています。
新モデルは、広大な音場と臨場感を創出するソニー独自の立体音響技術によって、まるで映画の世界に入り込んだような音体験を実現することを特長としており、高音質化の実現には妥協せず取り組んでいます。

この素材の開発者である藤平さんは

「設計の過程で求められる多くの要求仕様を満たすことにさまざまなチャレンジがあった」

と言います。
単に再生材の比率を増やすだけでは、音響設計者が満足する音を実現できなかったり、成形しづらくなったり…、音質以外にも強度や長期信頼性、難燃性(燃えにくくする技術)の観点で課題が残ります。
これらの課題を解消し、「バージン材に比べると性能が落ちてしまう」「脆い」といった再生材に対するイメージを払しょくするためには、これまで使用していた素材と同等以上の信頼性を実現することが求められました。

「ソニーのオーディオ製品の強みである”美しく響く音”、そしてお客さまに長く使っていただける品質を目指して原料の配合を少しずつ変えながら何度も試作を重ねました。」

優れた音質と環境の両方に配慮した独自の材料を作り上げた背景には「環境問題の解決に貢献できる技術をもっと開発したい」という入社時から一貫して材料開発に携わってきた藤平さんならではの強い思い、そして長年の素材の音評価の蓄積がありました。


入社後の初めての業務がウォークマン®に採用された
「植物原料プラスチック」の開発だったという藤平さん。

「製品の環境負荷低減への取り組みは、縁の下の力持ちのような存在かもしれませんが、真摯に継続することが必要です。また、お客さまからの期待にも応えるために、その価値を伝えていくことが重要です。」

今後も、環境負荷低減に向け、高音質再生プラスチックの多様な製品への採用を進めたいと意気込みます。

業界初 大型テレビの緩衝材で発泡スチロールを撤廃

社外のパートナー企業との共創の取り組みとして、2024年4月には、業界初※1となる大型テレビでの発泡スチロールを使わない梱包を発表しました。香港・台湾向けの液晶テレビ『BRAVIA 9』の緩衝材に、株式会社カネカ製のカネカ生分解性バイオポリマーGreen Planetを採用するというものです。

Green Planetは、バイオマス由来でさまざまな環境下で生分解性を持つことから、この素材の採用により、大型の製品における発泡スチロールを使った梱包材を大幅に削減できるだけでなく、2050年にはプラスチックごみの量が海洋生物を超えると言われるほど深刻化している環境汚染問題へのアプローチとしても期待されます。

最も苦労したのは、素材の成形性とテレビの包装材として使用可能な
保護性の両立だったという。

環境負荷低減の取り組みを支える 独自のノウハウとテクノロジー

包装の役割は、輸送中の落下衝撃などのダメージから商品を守り、お客さまに安全にお届けすること、そしてさまざまな情報や製品に込めたメッセージをお客さまに伝達することです。
大型かつ重量のあるテレビでは紙素材でそれらの役割を担うことが難しく、発泡スチロールの撤廃に向けて、材料を見つけ、複雑な形状を持つテレビの緩衝材に見合う代替素材となり得るかの検証からスタートしました。

Green Planetの採用に向けたプロジェクトをリードした澤田さんは

「5年前に中途入社して以来、ずっとテレビの包装材の環境対応に取り組んできました。数年来チーム一丸となり取り組んできた要素技術、そしてソニーの強みである、設計の完成度を高めるための包装シミュレーション技術の向上が今回の新素材導入の土壌となり、材料探索から導入まで足かけ3年で完遂することができました」

と話します。

「社会に貢献したい、チャレンジしたいという思いに社内外で共感いただき、共創が生まれ、両社の技術を組み合わせることで大型製品で初めてとなる発泡スチロール撤廃が実現できました。」

左から:シミュレーションモデル構築・運用を担当した住田さん、クッションを含む包装材の設計・評価を担当した今井さん、プロジェクト全体を推進した澤田さん、
EGP(発泡Green Planet)の包装性能の評価を担当した正木さん

ソニーは今後も、テクノロジーを通じた環境負荷ゼロをめざす取り組みを推進します。

製品における環境配慮の取り組みについては、下記のサイトもぜひご覧ください。

※1 テレビ製品の梱包において。ソニー株式会社および株式会社カネカ調べ。(2024年4月18日現在)


執筆:広報部YA
サステナビリティの視点からもソニーの製品やサービスに注目していただけるような
情報を発信していきたいです!