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小型バイオマス発電機メーカー Volter 本社を訪ねる

おはようございます。ただいまフィンランド時間で朝の6時30分。外は氷点下を下回っております。

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西粟倉村では、木材の更なる有効利用を考えて、自立運転が可能な小型バイオマスガス化発電の導入を検討しています。その最先端の情報を仕入れるため、今回遠くフィンランドまでVolter本社を訪ねました。アテンドはフォレストエナジー代表の沼さん、現地ではVolter社長のヤルノさんによる解説と、ちょっと贅沢すぎる組み合わせに襟を立てて研修に挑んでおります。

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※写真左から2番目がヤルノさん、右から2番目が沼さん

Volterはフィンランド前首相のユハさんが、自らの敷地内に自立電源を設けることを目的に設立された会社で、当初は風力、太陽光、バックアップのディーゼルエンジンによる発電の研究を進めてきました。その中でやはりディーゼルの代替えが課題になっており、バイオマス、さらに木質バイオマスに研究対象がシフトしていったそうです。木質バイオマスガス化発電の発想も、近所の若者が自動車のエンジンに活用していたことからヒントを得たそうで、当初はビジネス色はなく「遊び」から誕生したメーカーであることが伺えます。

また、フィンランドにはFITのようなバイオマス発電導入を優遇する政策もなければ、電気料金も約12円/kWhと安く、事業を展開していく上では不利な条件です。しかし、エコビレッジをつくるという「遊び」がそもそもの目的だっただけに研究を続けてこれたのだと感じました。

現在社長を務めるヤルノさんは2008年にバイオマス発電事業の第一号社員として入社。2010年ごろからユハさんの政治活動が活発化するに伴い、2011年から社長を引き継ぐことになったそうです。

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Volter発電機は2014年ごろから日本にも導入が始まりましたが、主に燃料への配慮不足が原因となりトラブルが相次ぎました。Volterに限らず、日本に輸入された小型バイオマスガス化発電メーカーのほとんどが同じトラブルで悩まされ身を引いたメーカーも数社。2019年の今でも同じく燃料の改善が緊急課題となっています。

具体的には水分率と形状、質量です。ガス化発電には水分15%以下が求められるため、人工乾燥が必須になります。チップの人工乾燥はこれまで熱供給の分野でも導入が進められてきましたが、15%以下を求めるためにはさらに精度の高いものが求められ、それに伴い設備費も嵩みます。この点についてはフォレストエナジーの沼さんが世界各国から最先端の情報を入手しており、年明けには日本に導入されると伺っています。形状と質量については、スクリーンと樹種がキーワードになってきます。フィンランドではパインやトウヒ、シラカバのような比較的質量が高い樹種が用いられますが、日本だと杉やヒノキといった質量の低い針葉樹がメインとなります。質量が低い=軽いとガス化炉の中で上手くコントロールできなくなり、低温になった部分からタールが発生してしまいそれがトラブルの原因になります。形状も同様で、細かいチップが含まれているとガス化炉の空気穴を塞いでしまいコントロールを失う原因になります。したがって、スクリーンで細かいチップを取り除かなければなりません。日本でガス化発電が上手くいかない原因として水分率と樹種の問題と捉えられがちですが、実は樹種ではなく質量と形状にポイントがあり、現在ではガス化炉の形状を変えるなどの対策が講じられています。

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※ボルターの研究開発の様子

もう一つ、経済的な側面からいうと、フィンランドでは電気料金が安い代わりに原木の仕入れを安く抑えられます。チップの状態で、なおかつ絶乾トン120-150€/tを仕入れることができ、それはざっくり日本より1/2の価格になります。フィンランドの木が生えている地形が平地であることを見るとすぐにわかりますが、仕入れ値が安い要因は伐採コストの差によるものと推測できます。

さて、これらの問題を抱えながら日本でガス化発電はどう戦っていくのかという議論になりますが、おそらく技術面では問題がはっきりしている以上クリアされていくものと思われます。実際に、燃料規格を厳しくしている地域では安定運転が実現しています。

そうなると問題は経済性とそれに伴うポジションングになります。ポイントとなるのは2つ。まずは太陽光や風力などの変動電源では補うことができない避難所などの安定した自立電源が必要になるスポットへの導入。ガス化発電では電気だけでなく熱も生み出すことができるため、避難所や集合住宅への熱供給もプラスで考えると経済メリットが見えてきます。このポジショニングは正しい姿だと感じました。また、FIT終了後の経済性を考えると仕入れ値をガクンと落としていく必要がありますが、現在地方で問題になっている耕作放棄地を利用した早生樹の植林(環境への影響は研究必須)や、大手建築業者が生み出す廃材を活用するなどの方向で検討が進められているとのことでした。

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※フィンランドのエコビレッジに導入されているボルター

まだまだ日本導入において課題が残る小型バイオマスガス化発電ですが、解決への道は確実に開かれています。


文責:半田

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