フレッシュパンチという概念
皆さんはフレッシュパンチという、サンリオキャラクターを知っているだろうか。フレッシュパンチとは、1981年に生まれたキャンディーやリップスティック、トロピカルジュースなどをちりばめたパターンだ。当時はフレッシュパンチ柄のアイテムが人気だったらしく、2015年にはフレッシュパンチのアイテムが再び発売された。
サンリオの公式サイトに掲載されているフレッシュパンチのプロフィールには、「キャンディーやリップスティックなどをちりばめたおしゃれなパターン」と書かれている。パターンという言葉の意味を調べると、型や模様、図案などと出てくる。
フレッシュパンチはキャラクターというよりも、デザインに近いのだが、フレッシュパンチはサンリオキャラクター大賞にエントリーされており、サンリオの中ではあくまでキャラクターという位置付けらしい。
サンリオキャラクター大賞のキャラクター紹介ページには、みんなへの「ひとこと」が書かれている。キティさんの「ひとこと」には、自分のトレードマークや妹の紹介、シナモンの「ひとこと」には、大きな耳で空を飛ぶという特技の紹介など、その他のキャラクターも自分のアピールポイントが書かれていることが多い。そんな中、フレッシュパンチの「ひとこと」には『キラキラ☆フレッシュ♪』とだけ書かれている。キラキラとフレッシュは人生において必要なことだが、キャラクターからのメッセージにしては簡潔すぎる。キャラクターというよりはデザインに近いフレッシュパンチは自分のコンセプトをそのまま「ひとこと」として掲載しているのだろう。
また、フレッシュパンチの代表的なモチーフとしてトロピカルジュースがあるのだが、2018年のサンリオキャラクター大賞では急にキャンディーマシンになったり、2019年のときにはアイスクリームになったり、2020年に元のトロピカルジュースに戻ったりと形を自由に変えている。
今回は、このフレッシュパンチという、どの概念にも当てはまらない存在について考えていこう。
フレッシュパンチにはキャラクターという概念と、パターンという概念が混在しており、その結果、どの概念にも当てはまらない異質な存在となっている。プロフィールにはおしゃれなパターンと書かれているが、サンリオとしての位置付けはキャラクターだ。ドラえもんのキャラクター図鑑にタイムふろしきの時計模様が載っているような違和感。もしもボックスに「もしも、タイムふろしきの時計模様が、キャラクターとして承認されていたら」と申し出ない限り存在しないはずの世界。それ程に、パターンがキャラクターとして存在していることは異質なのだ。
タイムふろしきの時計模様とは違い、フレッシュパンチは既にキャラクターとして多くの人に承認されている。公式サイトではキャラクターとして紹介され、サンリオキャラクター大賞に毎年エントリーされている。サンリオの社員はもちろん、ファンからもキャラクターとして承認されている。この世にフレッシュパンチ以外にキャラクターとして存在するパターンがあるだろうか。あるなら教えてほしい。
フレッシュパンチは、キャンディ、リップスティック、トロピカルジュース、アイスクリーム、ケーキ、リボン、トランプなど様々なモチーフの集合体である。代表的なトロピカルジュースのモチーフであっても、それだけではフレッシュパンチに成りえないのだ。あくまでフレッシュパンチはパターンであり、個ではない。この絶妙なバランスはとても形容しがたい。
プリキュアの場合、キュアブラックだけでもプリキュアだが、ゴレンジャーの場合、レッドだけではゴレンジャーではなく、ゴレンジャーのレッドでしかない。フレッシュパンチの場合、トロピカルジュースだけではフレッシュパンチではないのだが、その隣にキャンディを添えるとフレッシュパンチに成る。レッドの隣にブルーがいても、レッドとブルーでしかなく、ゴレンジャーではない、5人でゴレンジャーなのだ。しかし、フレッシュパンチは2種以上のモチーフが揃えばフレッシュパンチとして成立してしまうのだ。個でもなく、グループでもなく、あくまでパターンなのだ。
パターンであり、キャラクターとしても世間から承認されている特異な存在、フレッシュパンチ。どの概念にも当てはまらないフレッシュパンチは、フレッシュパンチでしかなく、フレッシュパンチという概念なのだ。
世間からの歪んだ承認力により生まれた概念、それがフレッシュパンチだ。