上着を置いていく


あのひとはわからないだろう

ぼくのこの景色

いまにはじまったものじゃない

この寒さは幾度と知っている

あなたのひざにうずもれたので

あなたはこれを置いてったけれど

ぼくにとっての夜は

きょうだけじゃない

みんなの足音が聞こえる

肉を焼く匂いがする

ぼくは湯船のにおいを知らぬまま

あのひとはそのひざに布団と猫を

のせて眠る

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