見つかりませんように10
25歳の時に結婚をした
式を挙げて10日後父の危篤の連絡が入る
物心ついた時から酒乱だった父と
母が離婚したのは10歳の時だった
それから父には会わないまま時が過ぎ
結婚の知らせもしなかった
そもそもどこにいるかも分からなかったし
父が酒乱であることも知られたくなかった
身内だけの小さい式で父が暴れたらと思うと
とてもとても呼べなかった
結局結婚の知らせは出来なかった
危篤の知らせを受けた職場から
父が住むという山形の父の実家に直接向かった
東京駅で慌てて下着だけ買い込んで
東京駅の構内を泣きながら歩いた
どんなにお酒に溺れても
子供である私たちには声を荒げず手も上げなかった
それは愛されていたからだと
そう思っていた
思いたかった
時すでに遅く父は帰らぬ人となっていた
結婚の知らせをしなかったこと
伝えたかった言葉があったろうに
聞いてあげられなかったこと
言わせてあげられなかったこと
そんな後悔で泣きながら歩いた東京駅
あの時の悲しさより今が悲しい
父に対しての申し訳なさは
綺麗だしそこで終わりでもあるから
あの時働き者で優しかった母
共にふざけあった姉
2人はもういない
2人とも生きているのに
そしてそれは綺麗でもなく終わりではない
こんな日が来るとはな
悲しさには
こんな悲しさもある
知らないで欲しい
今ともに楽しく暮らす子供達には
そんな日が来ないように
私の代で終わりにしよう