ナイトシネマ
北海道の短い夏も終わり、涼しくなってきたころ。ふと思い立って一人でシアターキノに行き、「永遠に僕のもの」の21時10分の回を鑑賞した。当日になってシアターキノのナイトシネマを観たいと思った結果選んだ映画だったから、鑑賞以前はこれっぽちも知らなかったのだけど、結構ファッションとか若者文化界隈を賑わせている映画なんだなあと後で知った。その日は土曜日で、映画が始まる一時間前からシアターキノの隣にある「古本とワインバー」で白ワインを飲み、スペイン旅行に関する誰かが書いたエッセイを本棚から漁って読んでいた。カウンターにいる常連客同士が聞いたことも(もちろん観たことも)ない映画の話をしていた。私より後に来たカップルが私の前の席に座り、それぞれ本を読んだりスマホをいじっていたのだけれど、女の方がイヤリングをいじったりちらちらと男の横顔に視線を送ったりしていた。そこの空間はまどろんでいて、全体的にゆったりとしていた。私は私の前の席にいる女のように視線を送ったりする対象もいない。土曜日の夜に一人で白ワインを飲んでいるなんて、贅沢な孤独だなぁと思った。