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【読書記録】『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』

NewsPicksの動画で知りました。

書名を見た時に、『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』を思い出した。

偶然にも「4時に帰る」というのは変わらない。

とにかく北欧の国は幸福度だったり、GDPだったり、SDGsだったり、世界的な指標に対してランキングが高いイメージがある。

デンマークもフィンランドと同じく、北欧の国だ。

Google Mapより

『フィンランド人は~』は発売当初に読んだものの、ほとんど内容は忘れている。

なんとなく、「サウナ発祥」「食事は家族と一緒に食べる」「社会人も夏休みがめちゃくちゃ長い(3週間くらい)」「夏休みは自然の中(コテージ)で暮らす」みたいな記憶がある。

さて、本書の話です。全体を通して感じたのは、意外と『フィンランド人は~』に似ているのでは?と。

デンマークも家族一緒に夕食を取り、夏休みが長いというのが共通していた。

「家族の時間を大切にする」のは重要なようで、著者がインタビューした人の人生の優先順位として

1位 家族
2位 仕事
3位 趣味

と書かれていた。

「夏休みが3週間」あるのは、仕事ばかりしていては疲れるというシンプルな理由。

多くの人が7月にこの休みを取るようで、7月のデンマークは不便だそうです。このときの仕事の連絡は基本的に自動返信になっていて、「緊急時は〇〇へ」「別をあたって下さい」といった返信をするそうだ。

朧気な記憶の中で感じた共通点はこのくらい。

今思い返すと、タイトルがミソで、4時に帰れる・・・・・・だけであって、必ずしも仕事は4時には終わらない。

これには意外というか、安心した部分もあります。日本人の働き方から見ると「デンマーク人はエリートなんだ」と思ってしまいますが、仕事が終わらない場合も多くある。

ですが、4時には家に帰り、家族とご飯を食べてから夜の時間に残った仕事をするそうです。

家に持ち帰ってから仕事をすることはサービス残業に見えるかもしれません。しかし、デンマークでは強制されてやるわけではなく自分が必要だからやるという認識でやっています。

仕事に追われてやるのではなく、仕事を追いかけるためにやる。

デンマーク人にとって、仕事とは、単にお金を稼ぐ手段ではない。仕事とは、自分が関心のある分野への知識や経験を深めることであり、その役職を通じた社会貢献であり、社会的責任を果たすことである。また、社会的責任を果たしていくことを通じた自己成長である

p116

「私は仕事を自己成長のための『教育機会』だと思ってる。仕事を通じて専門知識を深め、 コミュニケーション能力を伸ばしたい」

p252

少しここには危うさも感じた。『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』では、仕事が自分の生活のためだけでなく、出世や人生にも大きく関わってくることで人は頑張りすぎて燃え尽きてしまう。それに近しい点を感じた。

仕事はアイデンティティであり、自己紹介の際には「どこどこで働いています」ではなく、「〇〇をしています」と職業を答えることが一般的だそうだ。

仕事には「社会的な意義」と「自分にとっての意味」を求める文化があるため、なぜその仕事をするのか?という点を自己紹介で話す。

失業中なら、「これまで何をしてきたのか?」や「これまで何を習ってきたのか?」など、過去にやってきたこと、学んだことからその人の社会的な興味関心を聞く。

自分に関連した仕事をするため、自分と無関係な仕事をし続けるカルチャーはなく、すぐに転職を視野に入れる文化がある。

デンマークでは仕事と人生が密接に関わってるんだなと感じた。

実際にデンマークで燃え尽きている人が多いのか少ないのかは知らない。けれども、本書を読む限りそんな気配はしない。

『なぜ私たちは〜』では、人々が燃え尽きてしまう原因として6つの要素が挙げられている。「報酬」「価値観」「コミュニティ」「作業負荷」「裁量権」「公正さ」の6つ。この要素が自分と組織でかけ離れているほど燃え尽きやすいと言われている。

書いたように、仕事と自分の人生が結びついていて、自分が嫌な仕事はしない。そういった点で、6つの燃え尽きる要因の内、「価値観」はクリアされている。

本書を読んで強く感じたのは、「裁量権」「公正さ」が日本よりも間違いなくある。

裁量権で言えば、「会議に参加するしないも自由」「仕事の進め方が自由」「労働時間の配分が自由」「出社かリモートか自由」などが書かれていた。

「裁量権」で書けばこんな感じだ。

・会議は特に発言しないから出席しない。
・仕事の進め方も上司の承認を必要とせずに、自分で判断して進める。
・デンマークは週に37時間労働が基本とされているが、1日大体12時間×3日という働き方でもいい。
・子どもの送り迎え、病院、用事など個人の都合に合わせて出社かリモートか選べる。

「公正さ」は、書いたような長期休暇にも現れているが、他にも、「仕事あとの飲み会はしない」「部下が上司に率直な意見を言える」「無理しない・させない」がある。

付き合い上、行かないといけない飲み会はない。家族との時間を大切にするのが文化としてあるため、基本的には行わない。

しかし、プライベートと仕事の時間が曖昧なクリエイティブな職種に就いている人は互いに刺激しあうために飲み会をしているそうだが、ここにも「行かなければならない」「付き合いで飲む」ということはない。

その他にも、部下が上司に対等な意見を言える。

これは文字通りで、清掃員が会社の社長に対して物を言う場面もある。本書では名言されていないが、「心理的安全性」があるといってもいいんじゃないだろか。問題解決のためなら、立場を越えて議論しあえる。そんな環境がある。

実際に、無目的・無意味な指示は部下から「なぜ?それをやるんですか?」と質問責めにあうという。「その行動が本当に問題解決に結び付いているのか?」それを部下も確認した上で仕事を進めるため、無目的・無意味だと感じたら部下からNoと言われる。

無理しない・させないは時間の使い方に関して言えば、飲み会もそうだし、上司の意見に必ず従わないもそう。仕事時間が37時間と決まっているのだから、「この仕事を頼むべきか?それほど相手に時間を使わせるのかメリットがあるのか」と考える。

また、7月は長期休暇でみんな休みなんだから、不便なのは仕方ない。休みたいのは自分だけではない。みんなも休みたいのだから、相手の選択を尊重する。

日本では、「連休で遊びに来たのにスタッフが少ない!」と文句を言う人がいるが、デンマークなら「連休でみんな休みたいのだから当たり前」で終わるのだろう。むしろ連休に遊びに行くのだから、「人が少ないのを承知で遊べ」という考えなのだろう。

似たような話として、たしかイタリアではボイコットが日常的にある。そのため電車が止まることが普通にあるらしい。しかし、これも自分の労働環境改善のためのボイコットであり、自分自身の権利を守るための行動だ。そのため、国民は不便だと思いつつも、相手を思いやり、それぞれが自分のために戦っているのだと受け入れる。

このように「裁量権」と「公正さ」が日本よりもあるように感じた。

そのため、仕事と人生が密接に関わっていたとしても、燃え尽きてしまう人は少ないんじゃないだろうか、と思った。

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