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雑誌『世界』2024/2月号・3月号のメモと感想
家を掃除したら、3年前の『世界』が出てきた。読むと興味深く、今後も読みたい雑誌になった。図書館にあった中で、興味の湧いた2024/2、2024/3を読んでみた。
そのメモと感想。
世界 2024/2
『「問い」へのアプローチ』小川哲。
・問いに対して、答えが知りたいのか、起源が知りたいのか。前者が理系的で、後者は文系的。
『絶望と希望が隣り合わせのこの世界で』畠山澄子。
・被爆者は日本人だけじゃない。臨界実験が行われたアメリカ、オーストラリアにもいる。
・核兵器廃絶、平和の象徴として日本人が各国に受け入れられているのを見ると、かつて日本の植民地支配を受けていた人たちがどう思うのかを考えられていない。
『所得再分配の壁』松本朋子
・当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数。所得だけの計算と社会保障を入れた計算の違い。
厚生労働省による「所得再分配」と書かれたグラフでは1980年代までは2つのジニ係数は連動していたが、それ以降は大きく乖離している。当初所得ジニ係数は約0.35(目視)から2020年の約0.57(目視)へと右肩上がりに。再分配所得ジニ係数は約0.32(目視)から約0.38(目視)と当初所得ジニ係数に比べ横ばい。
『娯楽としての暇アノン』安田浩一
・「colabo」の公的資金詐欺疑惑。Xで見て知っていた。仁藤夢乃さんの本を読んだこともあり、「え、そうだったの?」とショックだった。
しかし、この記事を見るとどうやらネットの記事はデマだったように見える。「ネットの情報に騙されるな」と言うが、「騙されていたかも?」と疑う機会になった。その後の情報が入ってこないとその当時の情報だけで善悪を判断してしまう。
『受験後遺症の大人たちが子どもを追い詰める』鳥羽和久
・勉強は目的を達成するための手段、という考えに疑問を挟まない。
これには賛成。数年前までは、勉強と目的、手段の関係性が分からなかった。が、当時よりは見通しが立っている。
さらに、子どもが勉強しない親へのアドバイスとして、自分が勉強している姿を見せること。勉強したことが役立っていることを示すことで、子どもに自ら学ぼうとさせる意識を芽生えさせると書いている。
これにも賛成で、「何のために勉強しているのか?」が日常生活では中々現れないし、誰も教えてくれない。
・小学校受験、中学受験。子どもの意志をやたら強調する親がいるが、このような親ほど受験を止めようとした子に対して「やるって言ったよね?」と子どもの発言に責任を持たせるようなことを言う。
小学生以下に意志による責任を取らせることは不可能だという。実際の手続きを考えると確かにそうで、勉強道具も、書類を書くのも、お金を払うのも、現地への移動手段も親が主体になって動く。
このような教育はその後の意思決定に大きく影響を与える。子どもの意志と言いながらも、親の意志と同化したものしか受け入れられず、親の目を見て判断する子どもになってしまう。
・作ることの大切さ。子どもの頃は作ることに夢中だが、思春期になると作ることが恥ずかしくなる。
デパートのプレイルームで遊んでいる子どもを見れば、1つの遊具で長い時間遊んでいる光景をみる。今、同じ遊びをすることを考えてみれば、ひと通り遊具を使えば大体飽きてしまう。その点子どもは、遊具を変えずとも自分で遊びを考えてずっと遊んでいる。スゴイと思う。
私たちが過去の地層の中に置いてきた「つくる」ことは、現代の競争社会への抵抗手段となり得る。なぜなら、つくるためには身体を使った試行錯誤が必要で、その際には、環境に対して入出力のループができ、自分の身体と世界が直接つながっていることを感じることができるからである。これは、自身の身体理解を深める経験であり、 それが自己認識につながることで、人生を支える軸のようなものが体得できるようになったとしても不思議はない。
太字は私によるもの
「環境に対して入出力のループ」がいい表現だと思った。頭で思ったことを試してみて、出来るか出来ないか。出来ないなら、自分の体の動かし方が思った通りになっていない。
それを知ることを自己認識というのではないだろうか。思ったことと現実のズレを知ることで、自分の体というのはこういうものであることを理解できる。それによって自分というプレイヤーを育て、動かせる。それが大切なんじゃないか。
全文はこちら↓から読めます。
世界2024/3
『低賃金社会はなぜ続くのか』 田中洋子
・『ブルショットジョブ』では、社会的に意味のある仕事ほど賃金が低い、「倒錯した関係」があると指摘している。
コロナ禍のエッセンシャルワーカーもそう。現代が金融資本主義なのを表している。
・経費削減という理由で人の削減。「経費は減るかもしれないが、やることは変わらず、1人1人の負担が重くなるだけ」。そんな話を誰かとした記憶がある。働き方改革も名ばかりで実態はなく、見えない労働が増えているだけ。
・ドイツでは正規と非正規というくくりがない。どんな仕事でも労働時間の多さ、少なさで給料が決まる。短時間勤務は理由に問われない。家を自分で建てたい男性が、フルタイムだと時間が取れないから1年間パートをやった話が載っている。
『〈小さな物語〉の復興』第3回 親ガチャ 小川公代
・自分の出生をガチャで照らし合わせることで、自分の境遇を過去によって説明する。『親ガチャという病』『親ガチャの哲学』が気になった。
・無敵の人。ひろゆきの考えでは、「未来永劫、社会的信用が皆無な無職の人にとって逮捕はなんでもない」という考え。「失うものは何もない」「死ぬこと以外かすり傷」的な考えが近いだろうか?
・反出生主義。親ガチャから逃れるための思想。『ONE PIECE』のエース、『進撃の巨人』のジークを例にしている。生まれてこなければ、生まれてから味わう苦痛から免れる。
しかし、反対に『SPY×FAMILY』を例に、親ガチャに外れても幸せに暮らせることを示している。アーニャ、ロイド、ヨルは親ガチャにハズレた。
この論考には関係ないが、家族はそれぞれ人に言えない秘密を抱えれながらも幸せに生きていけることを示せる作品だったりするんじゃないだろうか。
しかし、これを家族みんなで見ることを考えると、親の方が気の毒になりそうだ。