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読書記録

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2024年11月の記事一覧

分断された時代に、常識・正義・真理を求めて

分断された時代に、常識・正義・真理を求めて

最近、千葉雅也『現代思想入門』を読み直している。

本書が出版されてすぐにも読んだが、くどうれいん『日記の練習』を読んだことをきっかけに再び読んでいる。

『現代思想入門』では、現代思想を学ぶ補助線として、カントが紹介されている。

カントは世界の捉え方に対して新たな見方を提示した。

それ以前の世界の見方は、「世界は私たちが見えている通りに存在する」というものだった。

だが、「私たちは、色眼鏡

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他者の痛みと共感|文學界10月号を読みました

他者の痛みと共感|文學界10月号を読みました

『文學界』10月号を読みました。

今月は、仙田学『また次の夜に』、永方佑樹『字滑り』、宮内悠介『暗号の子』の3作の創作が面白かったです。

仙田学『また次の夜に』は、娘を亡くしてアルコール依存症になってしまった母親が、自助グループに参加し、そこで出会ったルナと呼ばれる女性をきっかけに立ち直っていく話。

永方佑樹『地滑り』は、「字滑り」呼ばれる、自分が思ってもいない文字の読み方をしてしまう現象が

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『君はどう生きるか』を読みました

『君はどう生きるか』を読みました

鴻上尚史『君はどう生きるか』を読みました。

タイトルは『君たちはどう生きるか』をもじったもの。多様性が叫ばれる時代では、「君たち」と、ひとくくりにできないので、「君」はどう生きるかになっている。

おそらく中高生向けに書かれた本ではあるが、それ以外の人が読んでも、考えさせられる内容になっている。

以下気になったことを書いています。

1.コミュニケーションについてもめた時の解決法

解決するに

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情報の非対称性 / エリート過剰生産|『群像』2024/10を読んで

情報の非対称性 / エリート過剰生産|『群像』2024/10を読んで

10月号は早めに借りられた『群像』。

ちなみに、12月号がもう発売されていて(11/7)、11月号はもう貸出中でした。追いついた時には、図書館で読んじゃった方が楽かもしれない。

2つの連載について書いておこうと思います。

小川哲『小説を探しにいく』かなり楽しみにしている連載。具体と抽象を行き来しながら小説を書く思考について書いている。今回は、小説の書き方について書いていた。

鴻上尚史『君は

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日常の感じた方と感情を言葉で伝えることの難しさ 『世界の適切な保存』を読んで

日常の感じた方と感情を言葉で伝えることの難しさ 『世界の適切な保存』を読んで

文芸誌『群像』で連載されていた頃から読んでいた、永井玲衣『世界の適切な保存』を単行本になって改めて読んだ。

今でも、最初に読んだときの美容室でのエピソードは忘れられません。

特に後半の、「自分がどのような自分でありたいのか、どのような仕方で他者にまなざされたいのか、そのことを宣言する時間でもある。」が衝撃でした。

視点が面白い。確かに、美容室で「どんな髪型にするか」という質問は「自分がどうな

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RPG×ミステリーの新ジャンル? 『誰が勇者を殺したか』を読んで

RPG×ミステリーの新ジャンル? 『誰が勇者を殺したか』を読んで

前々から読みたいと思っていた、『誰が勇者を殺したか』を読みました。知ったきっかけは、以下の動画だったのですが、リンクを調べたらもう1年経ってました…。

急に読もうと思ったのは、図書館でこの本の続編が貸出可能になったからです。セットで予約していましたが、続編の方が早く借りられるようになってしまい、「どうしたものか」と考えていました。これを逃せばまた待たなければならなくなるし、最悪、行きつけの本屋で

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え、そんな。 プロテスタンティズムに根ざすサービスと説明責任

え、そんな。 プロテスタンティズムに根ざすサービスと説明責任

先週、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を理解しようとしていることを書きました。

その補助線として、プロテスタンティズム周りについて他の本で理解しようと思って、『プロテスタンティズム』を読みました。

と、ここで本のページリンクを探したところ、著者の研究不正を発見…。この本は図書館で借りた本なのだが、現在は出荷停止されており、中古でしか手に入れられないようだ。そうなると、内容も怪しく

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「日記」ってなんなんだろう

「日記」ってなんなんだろう

ブクログのピックアップで気になった、くどうれいん『日記の練習』を読んだ。

noteも日記という体で書いている。けれども、自分で読み返して、「これは日記なのか…?」と呼べるものの方が圧倒的に多い。「毎日書いているから日記」と割り切ってるけれども、全然身近なことは書いていない。

冒頭で引用した「日記のあとがき」がグサッと刺さる。

書けない理由、書く理由を探してる。たとえ書けなかったとしても理由を

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