50女、転ぶ。
さっき、夜道で転んだ。
…
遠くのイルミネーションに気を取られていたため、全く足元は見ていなかった。急に転んで、片足が側溝に落ちたとわかった。
手に持っていたはずのスマホをまずは泥の中から救出し、脱げた靴を履きなおした。行動は早かった。
側溝の縁に座って靴を履いた。「あ」と思ったが、それでズボンのお尻も泥がついたはず、とわかった。
どこに泥がついているのか。
暗闇なので被害の全貌がわからない。
まず、左手は湿っているし目を凝らして見ると泥だらけだ。ズボンの両足も泥がついているだろうが、たまたま黒いズボンなので良く見えない。
被害の全貌がわからない。
怪我をしているかどうかもわからない。左指は小指と薬指あたりが痛い。
とにかく、車まで戻り、早く家に帰ろう。
左指が痺れているが、冷たさなのか痛さなのかもわからない。
そういえば、転ぶ前にすれ違ったおじさんは懐中電灯を持っていた。
危ない道だったのだ。
なんてことだ。
…
車が泥だらけになるのも、最小限に抑えたい。
すぐ手に取れる場所にタオルがあって良かった。
手をぬぐって、尻に敷いた。
泥だらけと思われるスマホは助手席の足元に置いた。
…
痺れる左指が気になるが、ハンドルも握れるので、折れてはいないし、打撲も大したことはないだろう。
幸い、足の痛みもない。良かった。
考えてみれば、もっとひどい目にあっていたかもしれない。
側溝がもっと深く広かったら、真っ暗な中、落ちて、気を失って動けずに、命の危険があったかもしれない。
凍死とか、打撲死とか、出血死とか。
いけない、考え事をして運転がおろそかになっている。
ここで事故を起こしたら、泥だらけの50女が事故を起こした謎事件になる。
慎重に早急に帰らねば。
…
自宅の洗面所で被害の全貌を確認。
上着とズボンは泥だらけ。スマホも泥だらけ。左指は擦過傷と打撲。
意外と被害は少なかった。
高齢者なら、骨折をしていただろう。まだ元気な自分、案外若いのでは?なんて胸をなでおろしてお風呂に入って、洗濯した。
…
はい、3時間後。
きました。
腰が何となく痛い。
腕や脇のあたりも筋肉痛のような痛みが出てきている。
打撲ではなく、衝撃による痛みだろう。
もしかしたら、明日はもっと痛いのかもしれない…
いろんなところに痛みが出るのかもしれない。
今夜は湿布を貼ったりできる限りのことをして、怯えて眠る予定。