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あたしの裏・表
あの人が亡くなって1年と数か月。
名もないころからずっと好きで。
顔も知らないのに親近感があって。
顔を知った時も、前からそうこの人だとわかっていたような気がして。
何度も何度も詞を噛みしめて。
何度も音を聞き返して。
でもあの人の曲は早口すぎて歌えはしない。
マイノリティーを隠しもしない、あからさまな詞と曲なのに、あの人を好きな人たちはそのことを取り立てて強調せずに全てを受け入れている。
そんな存在のあの人。
何に、誰に、その思いを伝えたかったのだろうか、と今になって思う。
成就しない恋の歌を叫ぶ。
もどかしいくらい悲しく秘めた思いを吐く。
ずっと。
ひとり。孤独。と綴る。
ようやく、
光り輝く星をみつけたと思った。
もう、悲しい夜を乗り越えたんだと思った。
それほど希望に満ちたあの歌を、また何度も聴いて、これから、これからも、と思っていたのに。
大きくなって遠くなっていく誰かに、ちゃんと想いを伝えられたのか。
それだけが心残り。
あたし、と叫ぶあの人は最後も少女で終わる。
誰だって、裏表があり、価値観も違って、別々の考え方。
もっと、生きていてほしかった。
もっと、唄を、踊りを感じたかった。