2023年9月21日広島市議会一般質問(パールハーバーとの姉妹公園協定関連部分のメモおこし)
今日9月21日は国際平和デーですが、広島市議会9月定例会は一般質問の初日でした。最初から最後までオンライン傍聴していましたが、6月末に唐突に行われた、広島の平和記念公園と米真珠湾の「パールハーバー国立記念公園」との間の姉妹公園協定について、質問がありました。その中で、担当局長から、原爆投下の責任についての議論は「棚上げにする」という発言がありましたので、その部分をほぼ全文メモ起こししました。議論のきっかけになれば。
中村孝江議員(安佐南区/日本共産党):
広島市は、6月22日に突然、在大阪アメリカ総領事の要請に応え、未来志向で平和と和解の架け橋の役割を果たすとして、平和記念公園とパールアメリカのパールハーバー国立記念公園の姉妹公園協定を締結すると表明し、6月29日に協定を締結しました。この突然の協定に対し、平和公園で修学旅行生などに原爆被害や平和の願いを伝える広島県原爆被害者団体協議会のガイドさんたちからも疑問の声が上がっています。
人道上許されない残虐な核兵器を使用したアメリカから国としての謝罪もないのに、相互理解と未来志向という言葉のもとに、核保有や核抑止を振りかざすアメリカの国家が運営する公園と姉妹になれるのか。原爆投下が戦争を終わらせたという誤った歴史認識を容認することになるのではないかと危惧する意見です。
そして、岸田政権がアメリカの核の傘に依存しながら、憲法違反の大軍拡と、敵基地攻撃能力保有沖縄を初めとする南西諸島の軍事化など、日本をアメリカの対中戦略の最善基地にしようとする中、これらの戦争する国作りの実現を戦争する国作りの現実を見えなくさせるための姉妹公園協定ではないのか。アメリカ政府の真の意図がわからないという不安の声です。
市民への説明を尽くさず唐突に締結された姉妹公園協定に不安が出されるのは当然です。インターネットでパールハーバー国立記念公園を検索しましたが、検索には出てこず、地図にもありません。検索で出てきたのは、ハワイ州パールハーバーの一部として、アリゾナ記念碑ビジターセンター、戦艦ミズーリ博物館です。アリゾナ記念碑は、日本軍による真珠湾攻撃で祖国のために命を失ったアメリカ軍兵士の名誉を追悼する碑であり、アリゾナ記念碑やビジターセンターを紹介する日本語訳パンフレットには、第二次世界大戦太平洋における武勇をたたえる国立記念碑と紹介されています。
周辺はヒッカム統合空軍基地で、パールハーバー国立記念館のエリアは、軍の施設とされています。被爆地は、米軍と協定を結んだのでしょうか?パールハーバー国立記念公園は一体どんなところなのですか。どこにあるのかお聞きします。
広島平和記念公園は、恒久の平和の実現を目指す広島平和記念都市建設法により建設された平和記念施設です。市長の私物ではありません。公園協定が被爆地広島の原点にふさわしいのかどうか、市民の声や議会の意見を聞き、市民の合意を得るのが当然です。なぜ十分な熟慮をせず、市長の独断で拙速に姉妹公園協定を締結されたのかお聞きします。
アメリカ駐日大使のエマニュエル氏は、「かつて対立の場であった両公園は、今では和解の場になった」と強調しています。結局この姉妹公園協定は人道に反する原爆投下を行ったアメリカ国家の責任を、不問・免罪し、G7広島サミットで発表された広島ビジョンの中で、岸田首相が肯定した核抑止論を受け入れるということになるのではないでしょうか?市長の認識をお尋ねします。市民の意見を聞くこともなく、議会の議論を経ることもないまま調印した、姉妹公園協定は白紙に戻すべきと考えますが、いかがですか。
市民局長:
(平和記念公園と、パールハーバー国立記念公園の姉妹公園提供について、被爆地は米軍と協定を結んだのか、パールハーバー国立記念公園は一体どんなところでどこにあるのかについて)
このたびの協定の相手方であるパールハーバー国立記念公園は、英文では「パールハーバー・ナショナル・メモリアル」と表記されており、昭和34年に姉妹都市協定を締結した米国ハワイ州ホノルル市内の真珠湾の東西の湾岸に点在しているものです。また、姉妹公園協定の対象となる当公園の区域は、真珠湾攻撃に関連する史跡や資料保存展示施設等、具体的にはアリゾナ記念館、ユタ記念碑、オクラホマ記念碑、旧下士官宿舎のほか、佐々木禎子さんの折り鶴が展示されているビジターセンターとその周辺を対象としており、米軍に所属する軍事施設は含まれていません。
(公園協定が被爆地広島の原点にふさわしいのかどうか、市民の声を議会の声、議会の意見を聞き、市民の合意を得るのが当然である、なぜ十分な熟慮をせず、拙速に姉妹公園と協定を締結したのかについて)
このたびの姉妹公園協定に至るまでの経緯を簡単に説明しますと、まず2012年に市長がパールハーバーのアリゾナ記念館を訪問してホノルル市民の前で和解による平和の実現を訴え、その5年後の2017年に行われる広島県人会のウェイン・ミヤオ会長から両公園の協定締結の提案がございましたがその際には、本市としては時間をかけて検討したいとしてお断りをしました。そしてこのたび改めて、米国総領事からG7広島サミットの開催を機に、姉妹公園協定の申し出があったものです。
本市としましては、これまで二度とこんな思いを他の誰にもさせてはならないと、被爆者が和解と寛容の精神で訴える中で60年以上にわたり市民市民同士の交流を深めてきたこと。さらには、「迎える平和」の取り組みを10年以上にわたり続けて続けてきていることなどを踏まえつつ、現在の世界情勢を考慮するならば、今こそ和解の精神を重視した対応を逃してはならないと判断し、姉妹公園協定を締結したものです。
このたびの姉妹公園協定に対して、早急すぎるとか、両公園の位置づけが違うといった理由などからご指摘のような意見もあることは承知しておりますけども、今後本協定に基づいて未来志向の取り組みを両公園で検討し、次世代を担う若者を中心とする交流を深め、和解の精神を具現化した交流を好事例として世界に発信することで市民や議会の多くの賛意や歓迎する声にしっかりと応えていきたいと考えています。
(姉妹公園協定は人道に反する原爆投下を行ったアメリカ国家の責任を不問・免罪し、G7広島サミットで発表された広島ビジョンの中で岸田首相が容認にした核抑止論を受け入れるということになるのではないかについて)
和解の精神とは、あくまで現時点では責任に係る議論は双方で棚上げにし、二度と戦争の惨禍を繰り返すべきではないという考え方を確認し、未来志向に立って対処していこうというものです。従いまして、この姉妹公園協定は、原爆投下に関わる米国の責任に係る議論を現時点では棚上げにしますが、核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという市民社会における機運の醸成を図っていくために締結したものです。なお、広島ビジョンの中で安全保障政策に言及し、核の抑止力を肯定する記述はありますが、それは核抑止論が既に破綻していることを明示するものであり和解の精神に何ら関係するものではないと考えております。
(市民の意見を聞くこともなく議会の議論を経ることもないまま調印した姉妹公園協定を白紙に戻すべきと考えるが、どうかについて)
このたびの姉妹公園協定の締結については、先ほど申し上げた通りであり、こんな思いを他の誰にもさせてはならないと世界に訴えてきた被爆者の寛容・和解の精神に沿った対応であると考えています。今後、具体的な取り組みを両公園間で検討し、この協定に沿って、次世代を担う若い世代の交流などを深めるなど、市民一人一人が日常生活の中で、平和について考え行動する「平和文化」を市民社会に根づかせる重要な一歩としたいと考えています。
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