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「健康」よりもあたたかいカレー

池田園子さんが月1回もてなすカレーは、豆と野菜のカレーのワンプレート。今回私が初めて足を運んだロケーション、志村坂上から歩いて数分の裏路地のガレージ内の店舗を間借りする形で、園子さんのつくるカレーが1日限りで食べられる貴重なポップアップだ。朝は豪雨、昼は晴れ、夜は風が強く極寒という、稀に見る変化の激しい天気の一日の終わり、寒さと冷えとお腹ペコペコ状態で店に伺ったので、到着早々出して頂いたあたたかい白湯まで御馳走だった。

※こちらのtext/Photoは@Koshi_Annさんより提供いただきました。

特別にテイクアウト/イートイン両仕様で店内にお出し頂いた。豆カレーが2種類、野菜の付け合わせが5種類に、バスマティとフルーツ煮。

バスマティのお米を中心に、インドならではの家庭的なお菜が並ぶ。全部混ぜて食べても美味しそうだなと思ったが、せっかくなので控えめで繊細に盛り付けられた一品一品を丁寧に味わうことに。ワンプレートの盛り付けにも、山々と盛られたインド料理のそれとは違う“やまとなでしこ”な作り手のセンスが感じられた。

ムングダール(緑豆)のカレーはほくほく、キャベツのココナッツ炒めはそのままで甘い。中でも気にいったこの2品は真っ先にお代わりをさせていただき、他の店ではもっと濃い味付けで食べたことのある大豆と生野菜の「カチュンバル」は、同行した彼の分までぱくぱく完食。

少女の頃、一度気に入るともっともっとと母にせがんだように、何度でもお代わりしたくなる味。豆と野菜で構成する一皿は、本当に私の体に合っているのだと思う。時は金曜のクロージングということもあり、一週間の仕事で疲れた体に染みた。

と、出来る限り体験と感想を情緒的に伝えたつもりだが、実は全然足りていない。個々のスパイス料理の説明やインド料理のマニアックな文化話は今回は割愛する。

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まだ2度しかお会いしていないのに、園子さんは本当にあたたかい人である。例えはあまりにセンスがないが、今までお店で幾多食べてきたカレーたちの思い出を凌ぐ、10時間保温のカイロのようにじわじわと持続する暖さ。

園子さんの人柄にふれたなかで、真っ先に閃いたフレーズは「健康」よりもあたたかいカレー。ここでの「あたたかい」とは、カレーの温熱やスパイスの辛さを表現する意図ではない。日々ファンを増やしていただろう、園子さん発信の#プラントベースな生活は私も毎日読んでいて、写真や文章を通してだけでも伝わるものはあるが、直接のコミュニケーションの機会には人柄を含めた味、言葉の双方に感動があった。

なぜ、そう感じたのだろう。それはきっと私の個人的な体験からの深い“共感”にあるのでのは、と思った。

私も豆と野菜が身近な食生活を10年以上、今日まで営み続けていて、今や健康のため、環境のためと言わずとも、舌と体が当たり前の味と認識している。(詳しい経緯や私の思い入れはこの記事やこの記事などに反映させてきた。)

よそのお店で食べるように“非日常”をもてなしてもらうではなく、私の“日常”をもてなしてもらったから、こんな安心感なのだろう。

ちなみに、今回同行してくれた彼は違う。きっとこのプレートの味全体が、新鮮な体験だっただろう。私のように豆と野菜のワンプレートが“日常”ではない人にも一度は「こんなものなのか」と思って試してほしいバランスミールなのであえて誘ってみた。

一昨年までは純繰り訪ねていたアジアの料理、インド・ネパール店のオーセンティックで濃厚なスパイス料理の味も、今はだいぶご無沙汰。だが、この2021年末に(生きていて/ある程度お金がもらえていて/ちゃんと仕事がこの手にあって、一週間を終えた後に。こんな大げさに書くのは直前に観た韓国映画の影響かもしれないが)、園子さんという人に巡り合えて、園子さんが日々食べている日常のカレーを頂くことができて、本当によかったと思う。

そうしたあたたかい気持ちと、スパイスに似た刺激を受けた感覚をお土産に、土日まで余韻をひきずった。

※伏線をはるつもりはないが、園子さんのカレーを食べたこの日が公開初日だった映画を観て、ふと考えてしまった。

この先、死ぬまで毎日プラントベース食だけでカレーの文化か韓国の文化、どちらか選択して暮らすなら?ちょっとは考えるが、答えはどうしてもカレーだろう。(この日のカレーを頂きながら同じ質問を彼にもぶつけてみたが、私の予想通り、やっぱりカレーを即答した。)

私が好きな韓国料理のランキング3はチーズタッカルビ(鶏肉とチーズ)/トゥエジコギ(豚肉)/ケランチム(卵の蒸し物)。というラインナップだから仕方がない。

2021年は頭が先行するシーンも多かった反省がある。来る2022年は「したいこと」「食べたいもの」により頭と心を解放して生きていきたいと思う。



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