『バナナに教えられたこと』ショートショート
「テレビを見た」
Bは興奮しながら言った。
「何言ってるんだ?テレビはもう違法になっただろ」
「A、本当なんだよ、そこのカフェにあったんだよ」
現実と幻想を混沌させるとして、テレビを見ることを禁じられてから20年。
テレビが世に出回る事はなくなり、放送局も解体した。
「じゃあ、どんな番組がやっていたんだよ」
「料理番組だ、それも古いやつだ」
「録画していたものか?」
「多分、そうだ」
話を聞くと、バナナを使ったパウンドケーキの作り方らしい。
(そう言えば、小さい頃のおやつはいつもバナナだったな)
Aはバナナと聞き、小さい頃の思い出を巡らせた。
(いつも同じだから、母親に怒った時があったっけ、そしたら母親は「なら食べるな」つって、バナナを取りあげたんだよな)
Aの母は数年前に他界している。
(驚いたことに次の日には、ケーキが出てきたな、あれってなんのケーキだっけ?)
Aはそこでハッとした。
Aは久しぶりに墓参りに行くことにした。
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