めでたしの向こう側
運命とやらは、どこに消えたのだろう。
つい先日王妃になったばかりのシンデレラは、慣れないコルセットに締め付けられた肺から重いため息をこっそり吐くと、目の前で豪勢な食事を半分ほども残し満足気に腹をさする旦那様に目を遣った。
─価値観が、合わない。とにかく合わない。
この世で一番多い離婚の理由は性格の不一致だというが、それならば、この現状はもはや絶望的なのではないだろうか。
そもそも冷静に考えれば、たかが一度共に踊った程度の女のために国を挙げて盛大に捜索するような人間が、まともな神経の持ち主である筈が無かったのだ。
百年どころかワンナイトの恋は至極簡単に冷め果てた。
(…「めでたしめでたし」で、全てが終わってしまったら良かったのに。)
そうしてシンデレラは今日も、灰の代わりに猫を被って、旦那様に作り笑いを向けるのだった。