毎日、毎日思い出す。 PENTAGON 『Spring Snow』所感
春。
雪解けの季節。
降るはずのないそれは、どこかあたたかだった。
見事に咲いた白い花畑。
何も言えなくなる程、綺麗な空。
その中の君。
僕はそれを。
※この記事はPENTAGON『Spring Snow』 (作曲:KINO,NATHAN,HoHo 作詞:YUTO,KINO,WOOSEOK 編曲:NATHAN,HoHo) から一部歌詞を引用しています。全て、個人の感想です。
言わずと知れた名曲『Spring Snow』を取り上げたい。私がPENTAGON楽曲の中でも並々ならない気持ちを抱いている曲なので。こんなに、歌詞に心臓を引き摺られまくる体験をしたのはこの曲が初めてだったので。ただ、その前に。PENTAGONとUNIVERSEにとってどんな意味合いがあるのか。私たちにどんな奇跡を呼び寄せてくれたのか。それについて、言及している記事(『【カナルビ/ 歌詞和訳】봄눈(Spring Snow) PENTAGON - 10人の戦士 (hatenablog.com)』この方の記事は日本語訳からビハインドまでまとめてる良記事なので是非読んでみてほしい)だったりツイートだったりは既にあるだろうし、今更それをここにまとめようとは思わない。立春の日に降った、あたたかい雪のこともね。この記事は、この曲の何が、こんなにも私の心に焼きついて堪らなくさせるのか。それだけをここに。一部断定的な書き方をしていますが、あくまで個人の感想です。あしからず。
春に、雪は降らない。
まず、『Spring Snow』で繰り返し歌われるこの歌詞。
『Spring Snow』はお別れの歌だ。幾度となく歌われる歌詞"春に雪は降るでしょうか"は、「僕」は重要な事実を知っているとわかる。この歌詞は、「春に雪は降るのでしょうか、いや、降らない」そんな、反語的な表現なのだと思う。あたたかい春に、つめたい雪は降らないのを、「僕」は知っている。
「君」とは離れてしまったことがわかるのが、サビの歌詞と、ユウトのラスサビ前の歌詞。
"幸せだったあの時"
"あの日の君"
2つとも過去形だったり、「君」との日々は大分前の出来事であると示したりしている。恐らく、曲中出て来る「君」はもれなく過去の、「僕」の記憶の中の人である可能性が高いんですよね。
この歌詞、手を繋いでいるのは誰かの手ではなく、多分自分自身の手を握ってるんだと思っている。祈るように。”期待してみてもいいでしょう?”と。今年も雪が降ることを。
ウソクパートでも同様に、今年の春にも雪が降ることを期待しながら待っているところから、曲中の「僕」は春の雪が降ることをずっと祈っている。でも、多分、もう、春のあたたかい空気の中で、ただ綺麗な空と雪と、そして「君」に出会うことは難しいのではないか、とわかっているはず。それはもう、痛いほどに。実際には、春に雪なんて降らないので。祈らないといけないのは、本当は、春に雪が降らないことを知っているから。人は今自分の手元に無いものに対して祈るし、願うんですよ。春に、雪は降らない。きっともう二度と、春の雪の中の「君」には会えない。美しかったあの日の「君」は、この曲を歌った段階ではもう「僕」のそばにはいないんです。
毎日、毎日思い出す。
何が理由かはわかりませんが、「君」とは別れてしまった「僕」。この曲のいじらしさは、そんな「君」との思い出を、恐らく一生かけて、大事に自分だけのものとして抱えて生きていくその姿にある。
ユウトのパート。春に、雪は降らない。けれど、あの時降った春の雪が、あの日の時間を閉じ込める。春の雪の中で笑う「君」とその香りを閉じ込める。そして、今年もまたその雪が「僕」に触れて、あの日を想起させる。
”毎日、毎日思い出す あの日の君一人、君だけを”
”それだけでいい、何も望まない”
”寒かった冬の終わり 君がいて本当に良かった”
ここのパート、キノ曲(ユウトパートはユウトが書いたのかな?いつもわからない…)特有のいじらしさ、独り善がりさが前面に、全部出ていて、私はとても...…とてもつらい。「君」はこれを歌っている段階ではもう「僕」のそばにはいないのでしょう。今でも脳裏にあの日の美しい「君」が焼き付いて離れない程の愛なのに、「思い出すだけでいい」って言いだすんですよ、この曲。毎日毎日「君」だけを思い出してるはず。毎日毎日、あの日の「君」だけを。戻ってきてほしいとかあの日に戻りたいじゃなく、あの日の「君」を想起させる春の雪が今年も降らないかな、で終わらせてしまうんですよ。”それだけでいい、何も望まない”んですよ。終わりを終わりのまま受け止めて、自分だけずっと、自分だけの美しい「君」の記憶を抱えて、ささやかな願いを持って、このあと生きていくんだ…。こう...自分の世界だけで終わってる感...自己満足的サムシング…人間~~~!!!!って感じがすごいする。なんだこのいじらしさ、愛おしさは...。(PENTAGONいっつもそう。相手との記憶とその時の気持ちを独りで全部抱えてずっと生きていくんだよ。相手への大きな思慕とそれでも変わらない現実に傷つきまくった心を、慈しんで、大事に大事にずっと、きっと一生持っているんだよ。いっつもそうだよPENTAGON。独りで自己完結するだけの愛を表現するのうますぎる)(エンドロールのその後 PENTAGON『Don’t』所感|彼杵|note)。
『Spring Snow』はお別れの歌だ。でも、別れを乗り越えよう、前に進もう、さっぱり忘れて新しい何かを見つけに行こう、そんな方向には全くいかなくて。むしろ、別れを乗り越えられずに、一生、このまま何も「僕」は変わらず、「君」を思い出し続けるだけなんだろう。その姿は、どこかちょっとだけ哀れなのかもしれない。『Spring Snow』は、お別れの歌だ。それでいて、一途な「君」への想いと、そんな綺麗な気持ちでは隠し切れない執着の歌だ。けれど、永遠に抱えていられる、抱えていたいと願える何かに出会えることは、この世界ではきっと奇跡と呼べるものなのではないか、と私は強く思う。かけがえのない、愛なのだと思う。毎日、毎日思い出す、その姿は堪らなく愛おしくて、美しい。
ずっと、輝き続ける。
『Spring snow』然り、『Don't』然り、そのほか楽曲然り、キノ曲の切実さ、一途さは何が起因で出てくるものなんだろう。「変わらないものなんて何もない」日常や「ずっと変わらないままでいるのは難しい」人の心を知っていてもなお、私は信じてしまう。多分、彼らの曲で紡がれる「永遠」は、本当に永遠なんだろうな、と。だからこそ、この曲で終わる彼らのライブは、そこから生まれたあの幸せは、「永遠」に心の中で生き続けるんだろうな。
何も変わらないでいてくれるんだろうな。
ずっとずっと、輝き続けるんだろうな。
そんな確信がある。
2022年9月17日。日本のファンミーティング。あの瞬間、私は「僕」だった。アンコール。会場を行きかう、白の星。その下で笑顔で飛んで跳ねて駆け回るメンバーたち。きっと、これなんだ。この景色のことを言ってたんだ。あぁ、これが"ずっとずっと思い出す あの日の君、君だけを"なんだ。
春。
雪解けの季節。
降るはずのないそれは、どこかあたたかだった。
見事に咲いた白い花畑。
何も言えなくなる程、綺麗な空。
その中の君。
僕はそれをずっと、ずっと思い出す。
あの日の君、君だけを。
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