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推定無罪
若き日のハリソン・フォードが好演した、映画「推定無罪」――ラスティ・サビッチ検事と不倫関係にあった同僚の女性検事補が、何者かに惨殺される。現場にあったグラスにラスティの指紋があったことから、ラスティ自身に嫌疑がかかる。しかし、無実を証明する決定的証拠はなく、逆に殺意を推測させる情況証拠もあり、裁判は彼にとって決定的に不利になる。
ところが、唯一の物証であったグラスが警察の保管室から消え、さらに検察側の証人として法廷に立った医師に対する反対尋問が功を奏し、弁護側は徐々にポイントを稼いでいく。
そして、ここからが感動的なシーンとなる。
結審のあと、裁判長は、陪審員に向かって次のような説示を行う。
みなさん、あなたがたが推定しなければならないことを、もう一度言っておきます。いいですか、サビッチ氏は無罪である。裁判長のわたしがそう言っているのですよ。彼を無罪と推定すること。みなさんはそこに坐っているとき、あちらを見て、自分に言いきかせていただきたい。あそこにいるのは無罪の人間である、と。
映画の結末にはもちろん触れないが、「無罪の推定」の精神について、これ以上雄弁に述べている言葉に出会ったことがない。(了)