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J. S. バッハの音楽にある「希望Zuversicht」とは?

「テューリンゲン・バッハ週間」音楽祭2023年のモットーは「希望Zuversicht」。バッハの音楽がなぜ「希望」と関係があるのでしょうか。

まずは、主催者クリストフ・ドレッシャーさんの話を聞いてみましょう。日本語字幕をがんばって付けてみたので、よろしければご覧ください(#^.^#)。

もっと詳しく知りたくなった!と言う方は、さらにこちらもどうぞ。音楽祭2023年のパンフレットの内容です(一部抜粋、要約)。

「勇気を持って」ー 観客のみなさまに、アーティストに、そして私たち自身に呼びかけたいと思います。なぜなら、この厳しい時代に向き合わざるをえない、生きる、死ぬ、生き延びる、といった根源的なことの中で、絶望するのではなく、バッハがその音楽の中で私たちに贈ってくれた見識に目を向けてほしいと思うからです。彼が音にした聖書の歌詞には(彼の人生そのものと同様に)苦しみと死が扱われていますが、その音楽には救いへの信仰が内在しています。
比類なきバッハの美しい音楽が、何よりまずメッセージを伝えるための道具であったことを忘れてはなりません。バッハの主な仕事は、礼拝でキリスト教の教えを伝えることでした。その中で「希望 Zuversicht」はバッハの音楽において常に重要な役割を果たしています。人生の最後は最終的に救われ、天国で永遠に煩うことなく生きることができるという、深い信仰に根ざした確信が、バッハや当時の人々を生かし、この世のものとは思えない美しい音楽を書く力を与えてくれたのでしょう。その音楽は今日でも私たちに慰めと平和を与えてくれます。彼の大作《ヨハネ受難曲》を思い出しましょう。2時間以上もキリストの受難を聴いた後、最後に最も美しいコラールの中で、目を上げて前を向くようにと、バッハの音楽が私たちを救ってくれます。「希望、将来の展望がある」― これがバッハを突き動かした根本的な気持ちだったのでしょう。この作曲家はたくさんの家族を亡くしました。神による救いを信じることなくして、どうして人はそれに耐えられるでしょうか。バッハとその音楽が、危機的状況にある今でも、なぜこれほどまでに強い影響を与えることができるのか、その鍵がここにあるのではないでしょうか。彼の音楽には神への深い信頼と救いへの信仰があり、それによって湧いてくる希望が聴く人の心に染み込んでいくのでしょう。 

こちらから当音楽祭2021年の公演The English Concertの《ヨハネ受難曲》が無料でご覧いただけます⇒https://www.bachfromhome.live/concert/the-english-concert


「Zuversicht」ーここでは「希望」と訳しましたが、日本語のニュアンスでは「なんとかなるよ」「大丈夫」という感じでしょうか。最も苦しい時にこの気持ちを持てるか持てないかで、人生は変わってくることでしょう。つまり危機の時代だからこそ、「Zuversicht」が重要というメッセージなんですね。こう見ると、バッハの音楽にある、この「Zuversicht」のメッセージ性は、元々は当時のキリスト教、ドイツ・プロテスタント信仰に基づいているものの、現代の私たちにも共感できるものがありますね。バッハの音楽を通して、皆さんの心の中にも、勇気と希望が湧いてくることを願っています。


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園田順子(Junko Sonoda)
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