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根っからの食いしん坊
はじめまして。そのため光、初投稿です。
自己紹介も兼ねてのエピソードを書いていきます。
私は長女として生まれ、母の乳をグイグイ飲んで順調に育つ。
幼稚園に入りお弁当を毎日楽しみにしている私のため、
はじめは小さい箱だったものがそのうち少し大きめの箱になり
最終的には2段になった。
幼稚園に入った頃までは、祖母が近所のスーパーに自慢して歩きたい
というほど『べっぴんさん』だったというが年長組になる頃は、
顔はパンパンで・・・まさにアンパンマンみたいなふっくら感だった。
母はそんな私のぽっちゃりとした頬を愛おしそうに軽く掴んだ。
小学生になり、夏休みはほぼ田舎で過ごしていたが周りに同年代の子は住んでおらず遊ぶ場所もないから、いつも弟と妹を連れ3人で坂の上の公園まで歩いて行っていた。
親からすると、手が離せずどこかへ連れて行くこともできないから
子供だけで遊んでくれるのは助かる。
「ジュースでも飲みなさい」ひとり100円ずつお小遣いをもらっては
チビ2人とダラダラ公園に向かっていたが
私の目的は公園ではなかった。
公園の近くにスーパーがあり、レジ横で揚げたてのから揚げが1個50円で売られていた。手のひらくらいある大きいから揚げを買っては公園のベンチで食べていた。2個欲しい時は
消費税分足りないから「みんなで食べよう」とお金を出し合って
自分が多めに食べていた。
おやつとして食べるから揚げほど美味しいものはなかった。
この頃の私はもう『マシュマロマン』のような体格。
それでも母は
「お茶碗舐めたように米粒ひとつ残さず美味しそうに食べるんですよ」と
近所の人に自慢気に話していた。
高校生になり友人と食事をして帰ることも増え、その日も食事は要らないと母に伝えていた。
しかし、帰宅した私は残り香が妙に気になった。
「今日、夕飯は何だったの?」母に聞いても妹に聞いてもあやふやな回答。普通のごはんだよ。焼いたやつだよ。そんな誤魔化しはきかない。
キッチンに向かって証拠を探すがすでに三角コーナーさえも片付けられている。
もう一度尋ねる。すると妹は母に聞いてと言いながら部屋を出て行き、母は少し苛立った感じでお風呂へ行ってしまった。いや、逃げた。
ますます怪しい。
そう思うと自分を抑えきれなくなり、風呂場へ向かい扉の向こうにいる母に大きな声で尋ねた。
「ステーキ食べた?」
母は沈黙。これが答えだ。
ステーキを食べ損ねた自分への怒りと、私が居ない時にステーキを食べてそれを隠そうとしている家族に腹が立って仕方なかった。
扉の向こうにいる母とのバトルはしばらく続いた。
母は初めて後悔しただろう。
こんな風に育ててしまったことを。
私の食への執着は家族に浸透していた。
だからみんなで内緒にしたのだろう。
もちろん次の日、私もステーキを食べた。それで一件落着。
そして今日。
私は変わらず食欲に動かされている。根っからの食いしん坊。
そんな私に母は言う「健康な証拠よ」と。
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