オススメ映画を紹介するよ! (not) HEROINE movies編
(not) HEROINE moviesとは「“へたくそに今を生きる”等身大の女性たちの姿を、次世代を担う監督と主演女優の組み合わせで描くプロジェクト」だそうです。メーテレが主催とのことですが、「his」「勝手にふるえてろ」「寝ても覚めても」「愛がなんだ」など、意欲的かつ上質な作品が多いような気がします。
わたし達はおとな
予告編見て嫌な気持ちになった人、正解です。この映画は徹頭徹尾嫌な感覚を味わえます。自分大好きでプライドは高くて相手のことには全く興味がなくてそれでいて優しい顔をしていてキレる時には多分めっちゃキレる直哉と、色々気にし過ぎて言いたいことをなかなか言えず、だからこそ異性に間違った距離感を与えてしまう優実との、出会いから別れまでを描いた胸糞映画です。
直哉からは「怒るって言ったよね」「そう判断した」「予想できるでしょ」みたいな自分本位の言葉が次々出てきます。母親が亡くなり実家に帰っていた優実に、その理由を尋ねることなく冷たくあたったり、初めての温泉旅行に最後まで秘密にしながら連れて行ったホテルが、優実がかつて女友達と楽しい時間を過ごした場所だったり、結局自分のことしか考えてないんですよね。だから妊娠してしまった優実を気遣うことよりも、最後まで自分大事でした。
優実も優実で、そんな直哉に直接伝えれば良かったことを飲み込んでしまって、自分で処理しちゃってる。だから大事な局面で思いは大きくすれ違ってしまうのです。何より、2階まであるおしゃれな部屋に、親のお金で住まわせてもらっているのにどんな使い方してるんだ!って親目線で叱りたくなりますよ、優実にも。
と、ここまで書いたところで、直哉に向けて書いた言葉がプライベートで自分に跳ね返ってきてしまったので凹んでいます。自分のように、それを意識できていない人が胸糞なのでしょう。
閑話休題。映画の感想は自分のことを棚に上げて書きます。
映画としてもうひとつ引っかかるのは、時系列がわりとヒントなしにシャッフルされているところです。よく考えればわかるのですが、短い期間の出来事をシャッフルしているので、容姿に変化があるわけでもなく、無駄に混乱しました。
良かったところはラスト。決着をつけた優実は、自分で朝食を作り食べます。誰かのためでなく自分のために。「食べる」って大事ですよね。
よだかの片想い
Twitterなどではわりと早くからフォローしている松井玲奈さん。アイドル時代のこともよく知らないし、映画も初めてです。
アイコはのアザは、その見た目以上に深くアイコの心に根付いています。周囲は偏見なく接してくれる人がほとんどですが、アイコは自分で自分の世界を狭めています。結局アイコにとって、アザは一つのアイデンティティになってしまっているようです。アザがあることを受け入れて生きているのが私なんだ、と言うふうに。
そこに現れた飛坂は、アザのあるアイコをそのまま受け入れてくれる、ように思えました。ボートでのデートシーンなど、幸せを掴み取れそうにも見えましたが、飛坂にとっての優先順位は映画制作が最上位。アイコと付き合ったのもそのためであることが示唆されます。
物語終盤、アイコは大学院の後輩から、「僕はたぶんどんな先輩でも好きですけどね」と告白されます。アザが治療で治るかもしれないことを聞き、逆にアイデンティティを失うことに不安を感じていたアイコにとって、大切なのは外見(アザを含めて)ではなく、変わることのないその人自身なんだと気付かされるきっかけともなります。
ラストシーン、顔に火傷を負った先輩に、アイコはアザを隠すメイクをしてもらいます。ためらいを見せるアイコに、先輩は「人は裸で生きる動物じゃないんだから」と伝えます。アザがあろうとなかろうと、多かれ少なかれ人はメイクしたり、外見を装ったり、こころに仮面を被ったりして生きています。その痛みを知り、それを認めていくことで、本当の自分らしい生き方ができる。そんな前向きなエンディングでした。
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この感想、考えすぎて理屈っぽくなってしまいました。気が向いたら描き直します。
そばかす
よし、サクッと書こう。
この映画のテーマは「アセクシャル(無性愛)」です。
LGBTへの理解が進んでいるとは言え、アセクシャルについては自分も知識的に弱いです。リアルな社会ではなおさら無理解だろうし、映画でも異性に告白されたり、親にお見合いに連れて行かれたり、せっかくできた男友達と旅行に行ったり、それぞれの場面で困難が浮かび上がります。例えば男性に好意を寄せられても、それを断ると「男としての魅力がないってことか!」と言われてしまいます。いや、そうじゃないんだって!と思っても理解されない。異性愛同性愛だけの理解では、超えられない範疇なんですよね。
そんな中、心を許し合えたのが元AV女優の同級生真帆(前田敦子)。純粋に信頼し合える友人関係(シスターフッドって言葉を使いたいです)。この前田敦子登場パートは、本編中最も心地いいです。前田敦子天性のサッパリ感が、佳純にとっても見ている側にも、一時の幸福を感じさせてくれます。
最終盤、佳純の前に、アセクシャルらしい同僚が現れます。アセクシャル同士でしか分かり合えないのかって部分もありますが、佳純にとってはやっと心落ち着ける場所ができそうです。でもその同僚が北村匠海ってのは配役的にズルいなあとも思います(あまりにも信頼できる役者さんなので)。
映画的には、それぞれのパートが有機的には結びついていないこと、デジタル絵本が素人作には思えないことくらいがツッコミどころです。三浦透子は主題歌も歌っていて、存在感たっぷりでした。
(not) HEROINE moviesの3作品、どれも切り口が斬新で、それぞれの関連性はないですが、面白い取り組みと思いました。今後続く可能性はあるのかな?