永久凍結の13歳 - ペパーミントソーダ
カルト的人気を誇り、ウェス・アンダーソンもお気に入りという「ペパーミントソーダ」、噂には聞いていたが4Kリマスターでやっと日本で観られた!
本国フランス初公開は1977年。女優として活動はしていたものの映画制作には全く素人のディアーヌ・キュリスの初監督作品。制作資金を自分で集めて主人公役は映画初出演、まっさらなスタートだったが、公開されるや爆発的ヒットになったという。
家族や学校生活などキュリス自身の少女時代を投影した1963年が舞台のこの映画、13歳のアンヌを主人公に姉フレデリックや友だちの日常が淡々と描かれている。
教師や友人とのいざこざ、親との関係など小さな衝突は起こるがどれも劇的というわけではなく、はたから見ればとるにたらないことばかり。
でも13歳というこじらせまくりの年代の女の子にとっては、他人にはどうでもいいことが人生を左右する一大事だし、日々は不条理な事だらけだよね、わかる、わかるよ!と63歳は50年前に戻って大いに共感。13歳のあの頃の気分がここにあった。
姉のフレデリックは恋もするし社会運動にも関心を持ち、まだ15だから危なっかしいところはあるけれど確実に大人に近づいている。一方妹のアンヌは自己が確立できていなくて不安定。自分でもどうしたいのか、何をすればいいのかがわかっていない。
公開時には、トリュフォーの「大人は判ってくれない」のガールズ版という評もあったそう。
う〜ん、そうかな?「大人は判ってくれない」のアントワーヌ・ドワネル君はルナールの「にんじん」みたいにもっと根源的に悲惨な状況だったと思うけれど。
映画の中ではエディット・ピアフの葬儀、映画「大脱走」、ケネディ暗殺、アルジェリア戦争に端を発するシャロンヌ駅でのデモ隊への警察暴行事件、極右によるユダヤ人排斥などあの時代の社会情勢や世相も描かれる。5月革命が起きる5年前。
「ペパーミントソーダ」なんてかわいいタイトルだけれど、「なまいきシャルロット」やエリック・ロメール作品みたいなキュートな少女映画とはちょっと違う。アンヌやフレデリックのファッションはもっさりしているし、恋もドキドキワクワク感が特に無い。
それでもウェス・アンダーソンのお気に入りというだけあって、リセの建物やアパルトマンの部屋の構図、色使いなどはやっぱりおしゃれ。
それにしても姉妹が通うリセの酷さよ。教師陣はサディストだらけ。キュリス監督が行っていた当時のリセもあんな感じとインタビューで語っていたが、そうなの⁈ ジャージに毛皮のコートを羽織った体育教師には笑ったけど、あんな学校だったらアンヌ達でなくても反抗心は確実に育まれるな。机に上がって「アイドルを探せ」を熱唱したくもなろう。
海辺のバカンスに始まり、次の年のバカンスまでの1年間の物語。
エンディング、イブ・シモンが歌う映画と同じタイトルのDiabolo Mentheがノスタルジックでとても良い。