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冷蔵庫だけじゃなかった - 潮田登久子の写真展

写真家の潮田登久子は、私の中では冷蔵庫の人で、なんだかすごく楽しい中国の雑貨や食べ物の人だった。あと、しまおまほのお母さんで、島尾敏雄と島尾ミホの息子である、写真家の島尾伸三の奥さん。 

でももちろんそれはほんの一部分で、いくつかの写真集や雑誌などで紹介された面しか見ていなかった。

横浜市民ギャラリーで、潮田登久子の「永遠のレッスン」展。
このタイトルに決めるのに、写真家はたくさん候補を考えて迷っていたようだが(会場のインタビュー映像に選んでるところが出てきた)、80歳を過ぎても、写真という表現でさらに次のステップへという気持ちが伝わってきた。

展示は6つの構成。
一番最初の「街へ」シリーズは、1976年にニコンサロンで「微笑みの手錠」というタイトルで展示されたものを今回改題。
そのいかにもありがちなタイトルや、カメラを武器にしているような気持ちに、当時は疑問を感じたこともあったという。 
私は写真家ではないけれど、その気持ちはわかるような気がする。

1960〜70年代、新宿で街の人たちに声をかけて撮った一連の「街へ」を見て、へぇ、人物も撮っていたのかと意外だったが、書籍に人格があるかのように見える「本の景色」のシリーズ、亡き師、大辻清司の自宅アトリエを撮った「先生のアトリエ」、みすず書房の旧社屋が解体され更地になるまでの撮影、個人的に大好きな豪徳寺の自宅など、全てモノクロの静かな風景なのだが、人が写っていない写真にも確かにそこにも人の存在は感じられるのだった。

夫、島尾伸三のメモ
まほちゃんが着ていたセーター?
「3びきのくま」のアップリケがかわいい

島尾伸三・潮田登久子・しまおまほ一家が暮らした洋館2階で撮られた「マイハズバンド」シリーズは、平和で幸せに満ちている。伸三の両親の壮絶な愛憎の物語を読むと、親子とは思えないほどこちらは別世界だ。
ガラスケースに入った家族の所持品一つ一つも、単なるモノではなく持ち主の豊かな思い出がこもっているようだった。
島尾伸三は「モノには、どんなつまらないモノにも、物語がある」と言ったそう。

圧巻の冷蔵庫、冷蔵庫、冷蔵庫…

時々添えてあるキャプションも楽しかった。
「本の景色/Bibliotheca」で『大石兵六夢物語』の本のところに、父親の潮田みつぎの九州出張のお土産は必ず兵六餅とボンタンアメだったというエピソードとか、島尾伸三が自宅に買ってきたスウェーデン製の大きな冷蔵庫のズブロッカの話とか、みすず書房の棚に置き忘れられたように置かれていた丸山真男の本が、何か美しい建築物のように見えた、とか。

会場にご本人いらっしゃったが、恥ずかしくて声かけられず。
とてもよかったですって伝えればよかったのだが、心臓小さいもので。

無料なのに申し訳ないくらい見応え読み応えのある参考図録までもらえた。

32ページもある


会期は今週末の26日まで。

初めて行く場所で、うっかり目的地手前の企業の組合施設に間違えて入ってしまい、展示室はどこだろう?としばらくウロウロしてしまった。
立派できれいな館内に思いっきり不審者。

駅からの道には早咲きの大きな桜の木が

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