ほうれい線がチャーミング - ヨゼフ・ラダのチョコレート
先日KALDIに行ったら、見覚えのある絵がついた板チョコが棚に。
「シュベイク」で原産国チェコ共和国ときたらこれではないですか!
懐かしくなって図書館で探したら、最寄りの館には筑摩書房版の下巻しかなかった(誰かが上巻借りてるんだ⁈)。
私が高校か大学の頃に読んだのは、岩波文庫版でもっと数巻に分かれていた。
あれから40数年ぶりに、まさかチョコレートとしてKALDIで再会するとは!シュベイクのチョコレートなんてシブいなー。
第一次世界大戦でオーストリアをはじめ周辺の国々に翻弄されたチェコ。兵士シュベイクはすっとぼけた言動で軍隊や戦争を皮肉たっぷりにコケにする。
作者ハシェクの自己投影とも言われているが、けっこうブラックな話がたくさん出てくる。
でも、ヨゼフ・ラダの挿絵のおかげで毒気や残酷さがちょっとだけ和らいでユーモア小説としても楽しめる。
チョコレートはダークラム。パッケージのシュベイクの足元にもしっかりラム酒の瓶が。
ただしラム香料のみでお酒は入っていないっぽい。ロッテのラミーよりずっとマイルドな味。
チェコといえばカレル・チャペックの方が日本にはなじみ深いのかもしれないが、子どもにはやっぱりヨゼフ・ラダ。
チェコの田舎で生まれ育ったラダは、故郷の農村や森や池に住む動物たちを擬人化した素朴な物語を書いた。
(ちなみにチェコのかっぱも日本と同じく村の水辺にいて人間と共棲しているが、たまに人を水中に引きずりこんで魂を抜き取り壺にしまっておくそう。日本のかっぱと違うのは、緑色のスタイリッシュな燕尾服を着てパイプをくわえて靴を作っているということ。頭にお皿はないけれど、燕尾服の左の裾は常に濡れていなければならず、ここが乾くと神通力を失うと言われている)
服を着た動物たちはおしゃれなボヘミアンスタイルだし、物語にはちょくちょくハムやソーセージ、焼きじゃがいも、ケーキやクリームやチョコレートなどおいしそうな食べ物も出てくるので、小さい頃はうっとりしながら読んだ。物語の本の挿絵は基本白黒だが、時々挟まるカラー挿絵の色合いにも、子ども心に異国情緒を感じていた。
でも何より目をひいたのは、特徴的なほうれい線。はじめは「年寄りってわけでもないのに変なの〜!」と違和感があったが、だんだんとそれが魅力的なものに思えてきた。
そういえばサザエさんの四コマ漫画でもカツオ、ワカメ、タラちゃんの顔にたまにほうれい線が入っている。
小学生の頃読んだのは『きつねものがたり』(福音館書店 1966)と『黒ねこミケシュのぼうけん』(岩波書店 1967)の2冊で、『おばけとかっぱ』や絵本はその後大人になってから読んだ。
どの本にも、やっぱりほうれい線付き動物たちがいる。かわいいなあ。
自分もほうれい線くっきりとなった今は、なおさら親近感も湧くというもの。つまりこれは表情を生き生きとさせる線なのよね!
チョコレートのおかげで、ラダについての思い出も蘇った。
KALDIでは以前、黒ねこミケシュのチョコレートも売っていたらしい。知らなかった。欲しかった!ミケシュはクリーム好きだからミルクチョコレートだったのかな?
現在KALDIで売っているラダの絵のチョコレートは、シュベイクの他に、これ。
『兵士シュベイクの冒険』と、同じくハシェクの文章にラダが挿絵をつけた『不埒な人たち』も秋の夜長にゆっくりもう一度読んでみるか。
これもかなりブラックな短編集。