体が毒々しい食べ物を欲する
服もおやつも手作り主義のめんどくさい母のせいで、駄菓子屋は行ってはいけない場所。子どもの頃は憧れだった。親戚や友だちのところに遊びに行き、親の目が届かない隙に連れて行ってもらった時などにこっそり食べた駄菓子は夢のような味だった。
一番好きだったのは、何という名前だったか淡く染められた色とりどりの短冊状の細長い紙がこよりで束ねて吊るしてあって、それを一枚引いて店の人に外してもらう。
紙にはハッカ味の薄甘いものが染み込ませてあり、紙を舐めてアタリの文字が浮き出てくればもう一枚引けるもの。
糸引きあめの紙バージョンみたいな感じ?
たぶん他の駄菓子より地味で食べ(舐め)ごたえもないせいか、あまり人気はなかったと思う。
ただでさえ親に内緒で駄菓子を買うという禁を犯している上に「紙を舐める」という普通でない背徳感が、なんだかすごい物を食べているのだ!と興奮させたのかもしれず、本当はそんなに美味しくはなかったのかも。それでもほんのりハッカの味がするざらっとした紙の質感は今でも覚えている。
子どもの頃はチクロ騒ぎというのがあった。あの前後から、人工甘味料や人工着色料が体によくない物として浸透していったのかな。でも母はそういう人工ナニナニはよくないと言いつつも、手作りケーキのデコレーションには毒々しい色のドレンチェリーやアンゼリカを飾ったりもしていたし、バタークリームのバラの花や葉っぱにもピンクや黄緑の色がついていた。
毒々しいといえば、数年はまっていたかなりジャンクなお菓子がある。
アイシングは主張強めの青と黄のスウェーデン国旗カラー、フレーバーはバブルガム。カリカリの黄色い粒はバナナ味。
ハロウィーンシーズンには目玉チョコもトッピングされていた。
かなりヤバめのビジュアルだが、ドーナツ本体はふわふわで甘さ控えめ。一方バブルガム味アイシングはそれなりに過激なテイストなのだけれど、おとなしいドーナツ本体に「まぁまあ、そうとんがらんでも」と諌められて、鼻ピアス舌ピアス眉ピアスのパンク兄ちゃんがじいちゃんちの縁側で緑茶すすってるような、ちょっとほのぼのする味。
でも油断しているとこのアイシング、服につくと激しい青色がなかなか落ちなくて難儀なのだ。
口の端についてもかなり目立つので、最初のひとかじりは慎重に。
値段はIKEAだけに、一つ200円もしなかったと思う。「と思う」と書いたのは、いつの間にか店頭から姿を消したから。
とても残念。一緒に売られていたピンクや紫のベリー味には目もくれず、ひたすらこの青いバブルガム味だけを愛していたのに。
ヴィーガンやBio信奉ではないけれど普段はそれなりに健康に気をつけた食生活を送っているつもり。でも時々たがが外れたように体がジャンクな物を求める時がある。これも幼少期に駄菓子を禁止されていた反動なのか?