カメラの顔認証があたふた - 玉井力三の表紙画
日比谷図書文化館で「学年誌100年と玉井力三 - 描かれた昭和の子ども」展。
1950年代から約20年間小学館の学年誌の表紙を描いていた画家、玉井力三の作品がずらり展示されている。
うちで親がとってくれていたのは就学前は国際情報社刊の「ことり」と福音館の「こどものとも」、小学生になって数年は学研の「科学」と「学習」で、小学館の学年誌は定期購読していなかった。でも書店では常に平積みされていて、友だちの家や小児科の待合室にあったりで、馴染みのある児童雑誌。
年代ごと、月ごとに展示されている原画や印刷された雑誌の表紙には、見たことあるものもいくつかあった。
玉井力三はツヤッツヤのほっぺにお目々ぱっちりの、賢そうな都会的坊ちゃんお嬢ちゃんがペアになった表紙の絵をずっと手がけてきた。
絵柄は高度成長期の、明るい未来を信じて疑わない日本の姿を象徴しているよう。
その画は一貫して写実的で、商業美術家として紹介されているが元々は中村不折に師事し西洋画を基礎から学んだ画家。
青年期の模写やクロッキーも展示されていたが、正統的な写実西洋画。
正直言って、表紙画の子どもたちに対して「わー、かわいい」とは思わない。なんというか、北の国の将軍様の前でお遊戯を披露しているみたいなやらされ感というか、演出感というか…。
でも、これだけの枚数をみっしり展示してあると、ある種の気持ちよさを感じてしまった。
撮影OKなのでたくさん写真も撮ったがiPhoneカメラを向けると、四角いフレームが大忙しで動き回って顔認証。
当時のファッションや風俗も最先端。
毎年毎学年、月ごとにほぼ同じモチーフだが、存在をすっかり忘れていた懐かしいキャラクターとの思いがけない再会も。
私もトッポ・ジージョが好きでTVアニメも見ていたし、小さな人形(硬いビニールだかプラスチック製で、なんだか臭かった)も持っていたが、このイタリア生まれの眠たげな目をした鼻声のネズミが表紙になっているのは、私が小学校に入った年。たしかにその頃お人形を買ってもらった記憶がある。
だんだん子どもの絵の原画より、下に飾ってある表紙の他の部分に見入ってしまう。
裏表紙の広告も興味深い。
紙の付録コーナーにもワクワク。
玉井力三、今回初めて名前を知った。
20数年も毎月、複数学年分の表紙の子どもたちを描くのは大変だったろう。でも、全くぶれずにそのスタイルを貫いたのはすごい。印刷で反転するのを見越して、子どもの持ち物の小さなロゴを鏡文字で描きこむ細かい技も。
描き直しも色々とされたようだし、プロスピリットに敬服。
その絵柄と共にお名前は、しかと脳に刻み込まれました!