見出し画像

弾丸日帰り因島(前編)

先週のことである。
台風が接近して、予定が吹き飛んだ。本当であれば、野球をして過ごす予定だったが、グラウンドが使えないので中止になり、何もやることがなくなってしまった。ただ、どうやら台風は当初の予定よりも進路が逸れていき、夜の東京は電車での移動が差し支えないくらいになっていた。

新幹線は止まっているけど、在来線は動いているらしい。サンライズ瀬戸・出雲も動くらしい。何の気なしに、e5489を開いてみた。
あ、空いている。1席だけ、のびのびシートが空いている。どうしよう、出かけたい。このお盆、私はどこにも旅行をしていなかったから、どこかに行きたいという気持ちは確かにあった。

気づいたら、切符を抑えていた。
夜に出て、朝に着いて、夜に帰る。0泊2日の実質日帰りの旅行が確定した。出発のわずか3時間前のできごとであった。
行先はすぐに決まった。ポルノグラフィティの故郷、因島。
いま、ちょうどポルノグラフィティの25周年を記念して、因島全体でポルノグラフィティをお祝いする「島ごとぽるの展」をやっていて、なんとか足を運べないかと考えていたから、行けそうなタイミングができたのは神の思し召しかもしれないと思ったのだ。

夜の21時過ぎ、東京駅に到着。
家の近くのみどりの窓口は閉まっているし、えきねっとでも発券ができなさそうだったので、東京駅の遅くまで空いている窓口に行って、【東京〜尾道】の往復乗車券を購入した。往復割引がつくので、ちょっとだけ安くなる。
事前にe5489で抑えたサンライズの切符と、帰りの新幹線の切符を自動券売機で発券し、近くのNew Daysで適当に水を買い込む。サンライズの車内は空調が結構効いているので喉が渇く。だから、少し多めにお水を買っておくのだ。

色々と準備をしていたら、あっという間に21時30分くらい。
サンライズ瀬戸・出雲号の入線時間である。家でお風呂に入ってきているので、シャワーカードを購入する列には並ばないのだが、少しでも長く車内にいたいの気持ちがあるので、ドアが開くと同時に車内に乗り込み、自分の席へと急いだ。


何度見ても心が躍る案内
東京駅に入線するサンライズ


自分の席を見つけ、早速カーペットに横たわる。枕は着替えを詰め込んだデレパのバックパック。備え付けの枕カバーだけつけておけば、割としっかりとした枕っぽくなるので優秀。
なんだかんだ低気圧の影響だろうか、東京を出てすぐに眠くなってくる。かといっても、寝られないのは私が不眠に悩んでいるからで、困ったことだ。なので、とりあえずスマホを開き、Twitterのタイムラインを眺める。平和な話題が溢れていて、なんだか幸せな気持ちになる。

そんなとき、「因島謎解きサウンドウォーク」追加分発売のツイートを見つける。これは、謎解きをすると音声ドラマで物語を聞くことができ、実際に因島を舞台に物語と連動した冒険ができるというものだ。
謎解き……謎解きねぇ。そういえば、いつも聞いているラジオで、めちゃくちゃ楽しいって言われてたけど、どうなんだろうか?
謎解きというと、ちょっと子供だましっぽいイメージがある。お値段は4,000円するので、ちょっと悩んだ。ざっとチケットの残部を見てみると、9時〜9時30分受付のチケットが残りわずかで、他の時間は全て完売済み。つまり、参加するなら、遅くとも9時過ぎには因島に到着していないといけない。
悩む。とても悩む。でも、なかなかない機会だし、参加してみたい気もする。順調に列車移動ができたとして、尾道に着くのは8時過ぎ。バスで因島に向かうこともできるけど、サウンドウォークの後は自転車で島内を移動したい。そう考えると、自転車の貸し出し台数が一番多い尾道で自転車を借りた方が無難だろう。じゃあ、レンタサイクルの手続きとか、飲み物買ったりとかしていたら、なんだかんだ因島への出発は8時半は回るか……。頭の中で最適なルートと手段を考える……。
ギリギリだけどなんとか行けるかも。自分がどのくらいのスピードで自転車を漕げるか分からないけど、距離的には45分あれば行けるはず。
列車が遅れることなく進んでくれることを信じて、デジタルでチケットを購入した。多分1時間くらい考えていたのだが、いざ購入した後は、「もし列車が遅れたら、そのとき考えればいいや」などと急に気楽な考えになっていた。いつもそうやって考えてれば良いのに。

沼津、富士……と停車し、たぶん浜松のあたりで本格的に寝ようと、水を一口飲んで、持参したアイマスクをつけた。夏の因島。きっと、すごくすごく暑いに違いない。熱中症になったら大変だし、どんなに寝られなくても、最低限の睡眠は取らないといけない。
視界が暗くなると、心地よい電車の揺れと共に、夢の世界に入り込んだ。

次に目が覚めたのは上郡のあたりだった。だいたい6時前くらい。
珍しく、姫路で起きることがなかった。
夏のサンライズ号は、岡山駅に到着する前の景色がとにかく美しい。何度見ても飽きない。山間から顔を覗かせる陽の光が、この上なく心地よいのだ。


何度見ても飽きない岡山到着前の景色


しばらくすると、およそ7時間ぶりの車内チャイムが鳴り響き、自動放送で「おはようございます」と叩き起こされる。

その後、肉声でも車掌さんのアナウンスが流れる。
「時刻は6時10分。6時10分です。ただいま、この列車は定刻通りに運行しております。あと10分ほどで、岡山駅に到着いたします」
この定刻のアナウンスに安心感を覚える。どうやら、この旅行の滑り出しは上手くいったようである。


定刻通り 6時23分に岡山駅到着

岡山駅に到着し、ホームに降りて少し伸びをする。
多くのお客さんが瀬戸号と出雲号の切り離し作業を見学しに行くなか、私は駅のホームで朝ご飯を買っていた。岡山駅の8番のりばの倉敷寄りには、サンライズ号の到着にあわせて営業を始めてくれる売店がある。私はいつも、その売店で朝ごはんの駅弁を購入していて、旅行の始まり感じる瞬間でもある。


いつもお世話になってます。


いつもタコ飯を食べたくなるのだが、この時間には入荷されていないことがほとんどなので、鶏肉がたくさん入っている「いいとこ鶏弁当」を購入することが多い。これもまたとっても美味しいのだ。


これがうまいんです


ついでに一旦改札の外に出て、コンビニでお金を下ろした。
因島は現金しか使えないところが多いし、何よりなるべく現金を使った方が直接お金を落とせる。地方に行く時はなるべくそうしたいのだ。
そんなことをしていると、乗り換えの列車がやってくる。山陽本線の三原行き。これで1時間半ほど移動すると、しまなみ海道の入口である尾道に行けるのだ。

やってきたのは新型車両Urara。なんだかんだ初めて見たので、おーこれが新型……と思った。当たり前だけど、新快速っぽい顔。
思い入れのある115系に乗りたかったのでちょっと残念だなとか思いつつ乗り込む。流石に新型だけあって乗り心地は良いし、そりゃ地域の人のことを考えるなら、こうして新しい車両になっていったほうがいいんだよなと思う。

これがUraraなる車両です

尾道までの道中、お客さんも結構乗ってくる。地元の学生さんも多くて、特に福山までは立ち客もチラホラいる。こうして使っている地域の人がいるのはいいこと。
普段、ぎゅうぎゅう詰めにされながら、駅員に押し込まれている身としては、全列車これくらいの混み具合がちょうどいいよ……と思ってしまうんですがね……。東京なんて、良いことばっかりじゃないのです。

去年、同じように足を運んだ時は115系の爆音のモーターを子守唄に寝ていたのだが、さすがは新型、走行音が静かで乗り心地も良かった。あっという間に尾道駅まで到着した。

尾道駅。晴天!

尾道駅についてまず、コインロッカーにいらない荷物を預けて身軽になる。今回は自転車で移動するので、極力重いものは持ちたくないのだ。実際、ツーリングで来られる方も多いからか、尾道駅には大小様々なコインロッカーがあって助かった。
改札を出て、目の前に広がる瀬戸内海になぜか懐かしさを覚える。尾道には去年の一回しか来たことないんだけどねぇ。そして、目の前に「島ごとぽるの展」ラッピングバスがきて少しテンションが上がる。


ぽ!


このバスは尾道から因島に直通する連絡バスで、前に来たときはこれで因島に渡った。確か、因島の繁華街である土生まで1時間程度で結んでいる。
しかし今回、因島は自転車で移動するため、尾道駅すぐのレンタサイクルに向かう。しまなみ海道はサイクリングの聖地と言われるだけあって、レンタサイクルも充実している。朝7時から借りられるらしい。

きっと自転車を趣味にしている人は、ロードバイクを使うんだろうけど、あいにく私にそんな自信はないので、大人しく電動自転車を借りようと心に決めていた。
去年、因島に行った時、島の中央は勾配で相当キツかったし、今回は因島大橋を渡って行かなければならない。しまなみ海道を架ける橋は、とても高いところにあるので、そこに行き着くまでに凄まじい坂があるのは目に見えている。どう考えても初心者の私は電動自転車が身の丈にあっているだろう。
電動自転車の数には限りがあるので、もしなかったらロードバイクで頑張るしかないけど……。
急に決まった旅行だったから、特に予約もしてないし、もし「もう自転車全部貸出中です」とか言われたらどうしようと思っていたのだが、問題なく電動自転車を借りられた。危ない危ない……。

尾道から自転車で因島に行くには、まず手前の向島まで渡船で移動する。
運賃は100円で、自転車と一緒に乗る場合は50円追加で払う。
渡船には地元の学生も結構乗っていて、みんな日常的に船を使っているんだなと感じた。海なし県の人間としては凄く新鮮な光景だ。
8時30分頃に船が来たので、学生や他の観光客とともに船に乗り込んだ。


うっかり電動自転車が作動して、海に突っ込んだらどうしようとか思ってました。
(電源はOFFにしてた)


だいたい2〜3分で向島の船着場に到着。
地図を開き、因島大橋へのルートを確認する。直線距離ではそこまでではないけど、推奨されているのは島の海側を回るルート。市街地を通るよりも、サイクリング用に道が整備されているほうが安全だし、道も間違えないだろうということで、向島の海沿いを駆け抜ける。
途中、何人かガチ勢の方々に抜かれつつ、海風を感じながら自転車を漕ぐ。最初は大して勾配がなかったので、「ロードバイクでもいけたかも?」などと思ってしまったが、因島大橋が近づくにつれてやはり坂が増えてくる。自分の目で因島大橋を捉えられるようになると、その大きさと高さに圧倒された。(ひたすら自転車を漕いでいたので、この時の写真はないです)

因島大橋への入り口には、グルグルと山を登っていく。覚悟していたとはいえ、かなりの急勾配だし、電動自転車いえどしっかり漕がないと進めない。途中、自転車を押している人もいたので、やはりここは最初の難関なのだろう。
電動自転車をフルパワーにして、なんとか因島大橋の入口にたどり着く。
高い。下が透けてる。怖い、怖い、怖い。写真でも撮りたかったけど、手が震えてしょうがなかったし、うっかりスマホをぶん投げて海に落としたら大変だと思って撮れなかった。

長い因島大橋を渡って、ついに因島にたどり着く。
文字にするとずいぶんさっぱりしているけど、まぁまぁ大変だった。
因島到着が9時13分という記録が残っていたので、尾道を出てからだいたい45分くらいで到着したことになる。自分の肌感覚、結構あってたみたい。


「ぽ」ののぼりを見て、因島に着いたのを実感した


因島に着いてしまえば、前にも来たことがある道なので、地図がなくても覚えていた。因島大橋を渡り終わったところから右に曲がると、因島アメニティ公園としまなみビーチがある。
下り坂をすーっと降りて、アメニティ公園に到着。サウンドウォークの受付があるので、駐輪場に自転車を置いて受付をする。


ここまででだいぶヘロヘロ

サウンドウォークの受付を済ませ、さっそく謎解きに挑戦する。
物語のボイスドラマを聴いて、謎解きブックを開き、謎を解いていく……これ普通に難しくね??
Twitterでは「簡単だったので誰でも楽しめますよ〜!」という声を割と見かけたのだが、私の固い脳みそにはちょっと難しかったようだ。ともあれ、ない知恵を絞って謎を解いていく。(ちなみに解けない時はヒントをみられるようになってたので安心でした)

謎を解いていくと、目的地に移動できるというシステムだったのだが、だんだんと因島の奥の方に連れて行かれる。坂道あり、階段ありなので、なかなか大変だが、移動中も退屈しないように、音声コンテンツが楽しめるようになっていて良かった。
そういえば、去年因島に来た時は、この辺は回りきれなかったなと思いながら、ずんずん道を進んでいく。なんだかんだ謎が解けるとスッキリするし、自然と因島を歩いていけるから、とても楽しい。道中、同じようにサウンドウォークを楽しんでいるラバッパーの方々を見かけて、それにちょっとした安心感を覚えた。

内容はネタバレになるので伏せておくとして………
2時間ほど歩いて、サウンドウォークは終了。あっという間の2時間だった。
因島大橋記念公園で少し休憩をする。ここは昭仁さんのソロ曲「歌を抱えて」のMV撮影地で、因島大橋がよく見える。


これを渡ってきたんだなぁと実感


ひと休憩したあと、また坂を登っていくと、因島で有名な「はっさく屋」というお店がある。ここでは因島名物のはっさく大福が食べられるのだ。
ちなみに、去年は土生港から一生懸命自転車を漕いで向かったのだが、売り切れていて膝から崩れ落ちた。頼む……今年こそは……今年こそは……と祈りながら坂を登る。


開いてる!!!!


大勝利!!!!
開いてる!!開いてるぞーーーー!!!!
喜びのあまりガッツポーズが出たのはここだけの話。
中に入ると、大福がずらり。夏ははっさく大福ではなく、「甘夏&はっさく大福」と「ぶどう&はっさく大福」になるらしい。どっちも美味しそうで、とりあえず自分が食べる用を注文する。お水とコーヒーが無料で飲めるサービス付きだった。ありがたい……。

因島大橋が見える席に座り、念願のはっさく屋の大福を食べる。
うまい……うますぎる……。モチモチとした生地に、甘夏とはっさくが丸っと入っている。甘酸っぱさが大福の甘さとマッチして、しつこくないさっぱりとした後味。今まで食べたことのない、最高の味だった。


また食べたい


自分だけ食べるのもったいないなぁ……お土産にしたいなぁ……と思い、追加購入を決意。この後も暑い中、因島を駆け巡るけど大丈夫かな……本当は後で買いたいけど、昼過ぎにはまた売り切れそうだしな……ということで、厳重保冷作戦を実行することにした。
保冷バッグに保冷剤をガンガン詰めて、大福を厳重に保管してカバンに入れた。(保冷バッグは熱中症対策グッズ用に持ち歩いていましたが、はっさく屋さんでも売ってました。保冷剤も小さめのやつを売ってくれます)

はっさく屋を後にして、アメニティ公園に戻る。直行すれば割とすぐ近く。
アメニティ公園には、島ごとぽるの展のキッチンカーが来ているので、何かしら食べたり飲んだりすることにした。
この時点で大体11時半くらいだったと思う。朝(というか前日の夜)から行動しているので、すでに濃密になっていたが、因島のお楽しみはまだまだ終わらないのだ。

因島旅行、後編に続く……。

いいなと思ったら応援しよう!