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#28【バイク選び】最良の伴侶を得て・・・

↑でハッピーエンドと思いきや


自分も異次元進化する感覚に有頂天

FZ1に乗りはじめ、その感触に慣れるに従い、正直「これが僕の最終形かもしれない」と思った。今まで乗り継いできたバイクたちが教えてくれたこと、それにSRXで身に着けた感覚や技術のすべてが、この最新のテクノロジーをまとったバイクで一気に進化したような気がしたのだ。それは、目の前に立ちはだかっていた壁を一つ、いや二つぶち破ったような爽快感だった。

スロットルをひねるたび、身体で操作するたびに気持ちよくレスポンスしてくるエンジンや車体のポテンシャルに僕はにやけが止まらなかった。まるでこのバイクが、「お前が望んでたのはこれだろう?」と問いかけてくるようだった。そして僕は、「そう、それよ、欲しかったのは」と心の中で答えていた。そしてバイクはさらに言うのだ「まだまだいけるぜ」と。

大きなバイクでつるんで遠くまで行くのも苦にならない

初めての高速道路では、その余裕のパワーに思わず鼻歌が出たくらいだ。風を切る感覚がこれまでとは段違いだった。僕は完全に有頂天だった。そして、FZ1はそんな僕の期待を裏切るどころか、さらに高めてくれる存在だった。

週末は峠でが常態化していた。遅れてきた青春のようだった。

日常が広がり、距離が伸びる

当時、僕はクラブの仲間とつるんで走ることが多かった。峠道やワインディングロードを軽快に駆け抜けるあの感覚は、何度経験しても飽きることがなかった。一方で、FZ1の余裕のパワーは、僕に新しい扉を開いてくれた。それは、ソロツーリングの楽しさだ。


仲間と都合が合わない週末は、結局一人で走りに出る

日帰りのツーリングでも、これまでより遠くへ行けるようになった。走る距離が増えるにつれ、ペースも自然と上がった。家族の事もあり、やはり午前中帰宅が基本はマストではあったが、気が付けば、日の出と共に出発くらいだったのが、さらに未明の白み始める前に出発して200km先の山間部を巡り、昼に帰ったとしても、距離は300、400㎞と伸びて行った。

それまでの僕は、どちらかというと「走ること」そのものを楽しむタイプだった。だが、FZ1と過ごす日々は、見知らぬ景色の細部や訪れる先々の空気感にまで感覚を広げさせてくれた。言うなれば、「ツーリング」という行為そのものが一段階進化したように思えたのだ。


人生の転機、そして心の揺らぎ

FZ1は、間違いなく僕にとって「最良の伴侶」だった。信頼感があり、乗れば乗るほど馴染み、さらに距離を伸ばしたいという衝動をかき立ててくれるバイクだった。だからこそ、僕はこのバイクと長く付き合っていこうと思っていた。カスタムを少しずつ進め、いずれは自分好みの色にペイントする計画も立てていた。

しかし、そんな僕に転機が訪れた。仕事で海外赴任の可能性があるポジションに就いたのだ。突然、FZ1との日々に「期限」という概念が生まれた。バイクを降りるつもりはなかったが、もし赴任が決まればしばらく乗れなくなるのは確実だった。

「これで最後」と決めていたはずの心が、揺れ始めた。これまで以上に「やり切った」と言える状況を作りたくなった。経験をもっと積み、何か大きなことを達成したい――そんな焦りにも似た気持ちが生まれた。


アラフォーおじさん。サーキットへ向かう。

さらに、この頃からスポーツライディングへの欲求が高まっていった。FZ1の性能を知るにつれ、「もっと攻めてみたい」という衝動が止まらなくなったのだ。そしてその先に待っていたのが、サーキットだった。

ロードレースへの憧れは、中学生の頃から僕の心の片隅にあった。当時、テレビで見たレーサーたちの勇姿に魅了され、「いつかは」と夢見ていたのだ。それが現実味を帯びてきたのは、FZ1のおかげだった。

僕は意を決して革ツナギを作った。その行動は、これまでの自分のライディングスタイルを超えていこうとする意思の表れだった。そしてその意思が、次の選択へと僕を向かわせた。


YZF-R1――化け物への挑戦

FZ1との日々が進むにつれ、僕の中には次第に「次の一歩を」という欲求が芽生えていた。そしてついに、悩みに悩んだ末に僕はFZ1を降りる決心をした。選んだのは、YZF-R1――スーパースポーツの頂点とも言える化け物じみたバイクだった。

買った当時で3年落ち。最新ではなかったがスタイリングはこの年式が一番好みだった
ヤマハ:YZF-R1

FZ1がエレガントで包容力のある伴侶だとすれば、R1は野生的で予測不可能な恋人だった。そのデザインも、性能も、全てが圧倒的だった。そして何より、ヤマハのフラッグシップモデルということで、エンジンのベースこそ同じではあったが、細部の作りこみや使用しているパーツの精度から発せられるオーラは文系の僕にでもわかるくらい違いが感じられた

ガレージに佇んでいるだけで絵になるオーラを放つ
乗らない週末はバイクを眺めて過ごした。

R1は、僕にさらなる挑戦を求めてきた。FZ1で広がった世界をさらに押し広げ、その先に待つ未知の景色を見せてくれる存在だった。でもFZ1に乗る前のような「自分には扱えないかもしれない」という不安はあまりなかった。FZ1というバイクは僕にそれくらいの自信を与えてくれた。

FZ1との日々は短かったが、その体験は僕のバイクライフを一段と深めるものだった。進化を実感し、新しい景色を見せてくれたFZ1。そしてその先に待っていたR1への道筋を作ってくれたのも、FZ1だった。


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