#27 【バイク選び】重量車”FZ”リベンジの巻
↑の続き
居心地のいいクラブと広がる世界
その頃、僕はあるツーリングクラブの集まりに顔を出すようになっていた。当時流行していたmixiで知り合った仲間たちとつるむようになったのだ。そのクラブは、旅先の思いがけない出会いのように、不思議と自分に馴染む場所だった。
これまで僕は一人で走ることを好んでいた。早朝の静かな道を選び、誰にも邪魔されずに好きなペースで走る。その自由さを何よりも大事にしていた。しかし、クラブのメンバーと一緒に走るようになってからは、新しい楽しさを発見するようになった。一人では気づけなかった景色、一緒に共有する風の匂い、そしてペースが次第に噛み合っていく心地よさ。それは、ソロライディングとは違う種類の満足感を与えてくれた。
↑でも書いたグループでのお話です。
世はビッグバイクブーム。。
その一方で、少しずつ感じる違和感もあった。というのも、当時はビッグバイクブームの真っ只中で、クラブの仲間たちのバイクは軒並み大型だったのだ。伊豆への日帰りツーリングが企画されることも多く、片道130kmの距離が当たり前になっていった。
僕のSRXは峠道では軽快に曲がり、細かな操作に素直に応えてくれる相棒だった。しかし、長距離や高速道路ではその限界が顕著に現れた。100km/hで流しているうちはまだ良いが、そこからスピードを上げるとエンジンは悲鳴を上げ、風の抵抗に身体ごと押し戻されるようだった。家に帰る頃には、疲労感が肩や腰に重くのしかかり、自分がバイクに乗っているのか、それともバイクに運ばれているのか、曖昧になるほどだった。
やがてSRXはエンジントラブルを起こし、一度はきちんと治したものの、長期の休養を余儀なくされた。僕はその間、次の相棒を探し始めることになった。
バイク選びにおいて僕が重視したのは、次のようなポイントだった。
①遠くへ行くのが楽なバイク
SRXは峠道では手足のように自在だったが、高速道路では無理があった。高速道路にて検挙されない上限スピードでの巡航を「鼻歌」でこなせるようなポテンシャルを求めていた。
⓶長く愛用できるバイク
父親となったばかりの当時、頻繁にバイクを買い替えるのは現実的ではなかった。維持が楽で信頼性が高いモデルが理想だった。
③ロードスポーツ車であること
クルーザーはまだ早い。スーパースポーツは疲れる。適度にスポーティで快適性、普段使いの気楽さもあるモデルを求めた。
トラウマとの再会――FZ1を選んだ理由
そんな中で、ふと過去のトラウマが頭をよぎった。それは、かつて挫折したFZ750の記憶だった。あのバイクの重さや扱いにくさに負け、「自分には無理だ」と思い知らされた経験が、どこか心の奥にずっと引っかかっていた。
しかし、SRXと過ごした時間が、僕の中に新しい自信を育んでいた。軽快なバイクで乗り方を学び、少しずつ「今の自分ならいけるかもしれない」という希望が芽生えていた。そこで選んだのが、FZ1 Fazer だった。同じ「FZ」の名を冠するこのバイクで再び挑むのは、何か運命的なものを感じずにはいられなかった。
当時登場したばかりのFZ1は、スーパースポーツ譲りの性能とロングツーリングに適した快適さを兼ね備えたモデルで、僕が求める条件にぴったりだった。排気量1000cc、軽やかなデザイン、そして現代的な機能。どこまでも走れるような力強さと、それを支える信頼性があった。
納車の日――期待と不安の交錯
納車の日が近づくにつれ、不安と期待が入り混じった気持ちが大きくなっていった。FZ1は、FZ750よりもさらに大きな排気量を持つバイクだ。その重さやパワーを自分が本当に扱いきれるのかという不安は、消えることなく小さな影を落としていた。
しかし、「これもまたリベンジだ」と心に決めていた。SRXで得た経験が僕を支えてくれるはずだという確信があった。納車の日、実際にまたがった瞬間、その重さと大きさに一瞬ひるんだが、エンジンをかけて動き始めると、驚くほどスムーズに体が馴染んでいった。幅こそそれまで持っていたものからだいぶ横に広がっていて、跨った感触は「太っと」と感じたが、30分も乗ればなじんでしまった。それどころか、体に染みついたSRXでの走りで、マアマアの一体感が初日から得られた。
100%の自信とまでは行かないまでも、FZ750で感じたどうにもならない感は無く、「大丈夫、俺たちはやっていける」という確信が持てる乗り味に、これが俗にいうヤマハハンドリングなのか、、、とひとりごちた。いずれにしても、SRXで学んできたことが間違いじゃなかった事に気づかされ、その気づきは僕をかなり勇気づけた。
重さとスピードの教訓
一方FZ1に乗り始めて最初に気づいたのは、大きなバイク特有の「リアクションの大きさ」だった。速度が上がれば上がるほど、ミスに対する反動は倍増し、車重が増えたことでさらに増幅される。
その中で改めて気づいたのは、小さなバイクで始めることの大切さだ。小さなバイクは、速度が低ければ、あるいは車重が軽ければミスに対するリアクションも軽く済む。「ヒヤッとした」程度で済むことも多くなる。万が一転倒したとしても、車重が軽い分だけ損傷も少なくなる可能性が高い。もちろん、すべてが安全というわけではない。被視認性の低さや軽量車特有の弱点もある。
それでも、軽量なオートバイがライディングを学ぶための「ローリスクな教室」としての役割を果たしてくれるのは間違いないだろう。
あらためて、バイク選びとは
僕は長い間、勝手な思い込みや過剰な自意識で、バイク選びやライディングの回り道ばかりしてきた。そんな僕が偉そうにアドバイスを語る資格はないかもしれない。でも、これからバイクを選ぼうと思っている人たちが、この話を何かのヒントにしてくれたらうれしい。
ただ、イマドキ、インスタントに効率的に正解を求めたがるご時世ではあるけれど、こと趣味の世界に限って言えば、回り道もまた一興ではある。
オートバイ乗りにも色々いて、とっかえひっかえ愛車を乗り換えるどうしょうもない僕みたいな浮気者も居れば、愛車一筋何十年というハードコアで一途な人たちもいる。
言ってしまえば、心から愉しいと思えているなら、それが正解としか言いようがないが、自由に操れるようになる近道は?という観点に立つのであれば、自分が落ち着いてコントロールできるであろうサイズのバイクで始めるのが正解であることは、おおむね間違いないと言って差し支えないとは思う。
ただ今振り返ってみれば、回り道も悪い事ばかりでは無かったけどね。
皆様のバイク選びに幸多からん事を願って!
ってこれで終わりっぽい締め方だけどもう少し続きます。