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#40 ほぼリターンライダーのきもち
かつて、ツーリングクラブの仲間とともに走ることが習慣になっていた時期があった。毎週のように集まり、バイクに乗ることが当たり前のように日常に組み込まれていた。しかし、仕事の都合でしばらくあまり乗れない状況になり、リズムが崩れ、気がつけば十年の月日が過ぎていた。その間に仲間は散り散りになり、乗れる時間ができた頃にも、なぜかソロで走る気が湧かなかった。かつての自分なら、少しでも時間があればバイクに跨り、風を感じることが何よりの喜びだったはずなのに。そう思うと、自分は本当にバイクが好きだったのか?仲間がいないと何もできないのか?そんな疑問が心の奥底に沈んでいった。全く乗ってなかったわけじゃないけど、ほぼほぼ降りた人みたいな状況だった。
↓その頃の事はここでも書きましたが
その理由を考えてみると、まず思い当たるのは、ツーリングそのものの本質が、ただバイクに乗ることだけではなく、「仲間とともに楽しむこと」にあったのではないかということだ。バイクを操る快感や美しい景色、走ることによる解放感は確かに魅力だが、それ以上に、仲間と同じルートを走り、同じ風景を共有し、休憩のたびにバイク談義に花を咲かせる――そうした時間が、ツーリングの大きな意味を持っていたのかもしれない。もしそうなら、仲間がいなくなった今、かつて感じていた「楽しさ」そのものが成り立たなくなってしまったとしても不思議ではない。
また、かつてのツーリングが「仲間と予定を合わせることで自然に発生していた」ものであったことも影響しているだろう。毎週のように走ることが習慣化していた時期は、特に意識しなくても誰かが声をかけ、ルートが決まり、集合場所に行けばいつものメンバーが揃っていた。つまり、行動の起点は自分自身ではなく、仲間の存在だったのだ。しかし、その流れが途切れてしまった今、誰かが背中を押してくれることもなくなり、自分から動き出す必要が生じた。その結果、「バイクに乗ろう」というスイッチを自分で入れることができなくなってしまったのかもしれない。
また、グループツーリングとソロツーリングでは楽しみ方が大きく異なる点も影響している。仲間と走るツーリングは、ルートの選択や休憩のタイミングもすべて共有し、「一緒に過ごすこと」が喜びになっていた。一方で、ソロツーリングは自由で気ままではあるものの、孤独を伴う。これまで「仲間と走ること」こそがバイクの楽しみ方だったのなら、一人で走ることに対して物足りなさを感じ、無意識のうちに敬遠するようになっていた可能性もある。
さらに、十年前のツーリングの記憶が「楽しかったもの」として強く残っているからこそ、今新しく走り出すことに対して心理的なハードルが生まれているのかもしれない。当時のような楽しさを再現できるかどうか分からない。それどころか、昔の仲間と過ごした時間を思い出すたびに、今はもうその時間が戻ってこないという現実を突きつけられる。それならば、無理に乗らないほうがいいのではないか、という気持ちが湧いてきても不思議ではない。
しかし、そんな停滞していた気持ちに変化が訪れた。ふと、「遠くに行く」という新たな欲求が生まれ、それがきっかけとなってソロ活動を再開することになった。そして、思い出したのが、かつて憧れながらも果たせずにいたFJRに乗ることだった。ある日、高速道路をクルマで走っていたとき、ジェントルに、しかしスパーンと流れるように自分の横を駆け抜けていったFJR。その姿に、何かスイッチが入ったのを感じた。
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それだけでワクワクする
幼き日の遠足的な感じかな
そうして再びバイクに乗り出すと、不思議なことに、今までとは違う感覚でバイクライフを楽しめるようになっていた。昔のツーリングクラブの仲間と走っていた頃とも、ソロで気ままに走る今とも、どちらにもそれぞれの良さがあることに気づいた。そして、バイクに乗る喜びを純粋に感じられるようになったころ、次第に昔の仲間とも再会したりもしたし、新たな仲間もできていった。気づけば、かつてのツーリングとは違う形で、バイクを通じたつながりが自然と広がっていた。
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新しいお仲間さんもできたのは嬉しい
今思えば、バイクに乗ることはただの趣味でもなかったのかもしれない。それは、その時々の自分を映し出し、気持ちのあり方や環境の変化とともに形を変えるものだった。そして今、新たな目的を見つけたことで、今までになくバイクライフが楽しくなっている。
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ちょっとした近所の小径を探索
みたいなのもしみじみ楽しめるようになった。
やっぱりバイク好きだったね。と今では思える。
歳をとることも悪い事ばかりじゃないね。