無名人インタビュー:パートナーと養子縁組 宮古島へ移住したWEBデザイナーの人
某SNSで無名人インタビューの宣伝をしたら立候補してくれた、神森勉さん。知り合ってからは10年以上。普段はウェブデザイナーとして大活躍されていて、ググったら色々と出てくる人なんです(私も最近知った…)。普段はウェブ・IT系のインタビューや講演が大半を占める勉さんですが、せっかくの“無名”人インタビュー。“有名”な人の“無名”な部分にフォーカス。マイノリティ同士のガチンコトーク、楽しんでいただければ幸いです!
本日ご参加いただいたのは、神森勉さんです!
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▼イントロ
そんり:本日は無名人インタビューにご参加いただき、ありがとうございます。今日はどういったインタビューにしていきましょう。テーマ無しなんですよね、コレ。
神森勉(以下、神森):そうなんだ。
そんり:なので、テーマは本人が話したいことを話してもらうのが基本で。話したい事がなければ、会話していきながら、どこに着地するかを楽しんでもらう。
神森:そっかそっか、どうしようか。どうしよっかな。なんとなくさ、そんりと話をするから、こういう話って普段はしないなって思うことが、実はあってね。あのほら最近、やっぱりLGBT周りの事が、結構盛んにネットとかニュースとかになってるじゃない。
そんり:うんうん。
神森:で、ああいうので活動してる人たちって、結構いるじゃん。それ自体は別に、僕は否定も何もないんだけど、例えば昨今で言えば、同性婚の話とかあるじゃない。
そんり:うん、ありますね。
神森:でね実は僕は、同性婚って別にいいじゃん?っていう。いいじゃんっていうのは、あの…どうでもいいってところが、実はあってね。そこに積極的に関与しようって気が、実はない人なの。
そんり:うんうん。
神森:っていうのも、日本はそういう意味では同性婚ができないっていう、世界から見ても若干遅れてる部分はあるってのは、当然認めるし、できるんであれば、当然できた方が良いと思うんだけど。そういう中でも昔ながらの方法で、例えばウチなんかホントそうなんだけど。ウチはそういう(同性婚)制度がないから、養子縁組をしたワケですよ。そういう方法ってあるじゃん?っていうのをずっと思ってて。なので、そこにばっかりフォーカス当たってるけど、こうやって昔からある制度で、一緒に家族になりたいとか。まあ僕なんかもそうなんだけど、今はもう50歳超えてるけど、50歳を過ぎる前、これからの将来を考えた時に、どっちが先に逝くかわかんないし、今でこそ一部の保険会社だと、同性パートナーでも保険の受け渡しができるみたいなことはあるけれども、とはいえ、限定的で。だけどそれが養子縁組をして家族になった瞬間に、受け渡しすることができるワケじゃない。
そんり:うんうん。
神森:そんな将来を考えて養子縁組という道を取ったんだよね。だけど、LGBTについて語られるとき、そういう人たちのことって、実は全く触れられない中で、同性婚だ同性婚だって大騒ぎしてるからさ。それってそこまでしないとダメなんだ?って、ふと。僕の中で疑問に思うことが、たまにあってね。
▼養子縁組とカミングアウト
そんり:勉さんがカミングアウトしたのは、養子縁組と同時?
神森:そうだね。それまでは…多分知ってる人はわかるじゃない。特に女性なんか話ししてるとさ、やっぱ何となくそうなんだろうなって思ってた、みたいなのはあるから。でも男はだいたい鈍感だからさ(笑)全然気付かないで、普通にね。女性好きの男性っていうふうにしか、付き合ってもらえないんだけど。
そんり:(笑)
神森:やっぱりそいうのが、正直、面倒臭くなったってのがあったんだよね。僕の場合は、外に出て話をしたりするから、そうすると、「今度奥様と是非お越し下さい」とか、言われるワケですよ。「はい、行きますね」なんて言いながらも、仮にそこに遊びに行ったとしても、声かけ出来ないわけですよ。奥さんと来てると思われるから。それが嫌で、養子縁組したのをキッカケに記念写真を撮って、それを外に出して、自分はゲイなんだよっていうのを、外に出したんだよね。
そんり:でも勉さんって、某大手企業の広報室の室長じゃないですか。大きい会社の、大きい部署の、偉い人。私からしたらね。そういう人がカミングアウトをして、仕事しづらくなったとかってありました?
神森:全然ないかな。ウチ社名は某大手企業の冠がついてるけど、実は子会社なんです。それが先ず一つあるのと。もともとウチの会社って、昔トランスジェンダーの方が働いていて。会社自体はね、普通に受け入れる会社だったりするので、自分がセクシャルマイノリティって偏見に晒されることがあったとしても、仕事で結果出しときゃ、何も言われないだろうってところで生きてきたのもあるかな。ただ、もしその親会社に勤務していたとしても、親会社はLGBTに関しての制度が整っている会社なので、心配は無いかもしれませんね。
そんり:うん、確かに。結果残してるもんね。
神森:もうなんか本当にそれだけの為に、がむしゃらにやってきたような気がするので。タイミングを見て、自分はそうなんだみたいなことをね、公表したところかな。
そんり:養子縁組して、公表して、去年?一昨年?宮古島に引っ越したのって。
神森:宮古に引っ越したのは、去年の12月。
そんり:そもそも、余生をゆっくり過ごしたいってプランがあって、養子縁組もカミングアウトも引越しも、同時にしたんですか?
神森:養子縁組したのは…二年?今年の12月で三年目になるんだけど。で、もともと二人で沖縄に住みたいねって話をしていて。で、タイミングよく宮古島にオフィスがあって、移住したい人いる?って会社から言われて。で、二人で相談して、二日後には行きますって会社に言ったっていう(笑)
そんり:羨ましい(笑)で、さっきの同性婚と養子縁組の話に戻りますけど。芸術家の岡本太郎と奥様は養子縁組なんですよ。
神森:ふーん、そうなんだ。知らなかった。
そんり:奥様なんだけど、通常の婚姻関係じゃなくて、法律上では岡本太郎の養女なんだって。なんでそうしたのか、理由は分かんないんだけど。でも家族になるのが目的なら、養子縁組でも入籍でもどっちでも良いと思うんだよね、私も。ただ選択の自由は必要で、そういう意味で同性婚は必要だと思うんです。
神森:うん、そうだね。
そんり:けど、そこに感じる違和感みたいなのが…。
神森:あるのあるの。すごい、あるんだよね。
そんり:それは何で?
神森:わかんない、何なんだろう。それがねだから、自分の中では全然まだ答えが出てないの。だからこうやって話してる間に、何か見えてくるのかなと。
そんり:今まで、勉さんも含め、家族になる手段として養子縁組をしてきた人達がいっぱいいると思うんだけど。その事実をすっ飛ばして、同性婚だなんだって言うなって感じなの?
神森:どうかなぁ…。
そんり:じゃあもし、いま同性婚が日本にあって同性同士で入籍が出来るとしても、養子縁組をしてたと思います?
神森:それしか選択肢がなかったから、養子縁組をしたのかなって気はするけどね。多分。
そんり:一部の性的にマジョリティな人達は、一緒に居られるんだからパートナーシップ制度もあるし、そんな同性婚だって騒がなくても良いじゃないって言う人たちもいるじゃないですか。
神森:うんうん。
そんり:そんなのは、そもそも論点が違うし御門違いだからほっとけば良いんだけど。
神森:(笑)
そんり:選択の自由があるっていうのが大前提だから。とはいえ、私も訳もわからず、同性婚だって騒いでる人達を見て、気持ち悪いなって思うんですよ、確かに。いま日本では、同性同士の性行為が法律上では無いものになってるから、ウリセンとかハッテン場も黙認されてるけど、合法化ししちゃったら、それは取り締まられるでしょ。そこらへんまで理解してるのかなって。もちろん法を欺く手段なんて、いくらでもあるけど。
神森:うん、なるほどね。
▼平等のカツアゲとダイバーシティの押売
そんり:私も在日で、確かにマイノリティって法律的に不利だったり不便な部分っていっぱいあるけど、社会的な弱者として、下駄履かせてもらってるなって思う時もあるんですよ。
神森:はい、わかるわかる。
そんり:わかるでしょ?それ。
神森:うんうん、すっごいわかる。
そんり:下駄履かせてもらえなくなった時に、自分って大丈夫かなって不安もあったりするの。
神森:うん、わかる。
そんり:在日かつ女性、であるがゆえにね。だからなんでもかんでも、みんなが平等なのが本当に良いことなのかなって疑問もある。そうなると、みんなと同じ土俵に立つことになるから。
神森:そうだね。うん、そうだね。
そんり:そういう意味で、本当に良いのかなって。同性婚に限らずね。
神森:確かにさ、日本以外や普通に海外ドラマを観てたりすると、もうなんか当たり前のように男性カップルだったり女性カップルだったりが、出てくるじゃない。特に最近の洋画のヒーローものも、普通に同性同士のカップルが出てきたりして、そういうの観てると、良いな羨ましいな、なんて思うんだよね。でもそれが実際に、仮にそれがアメリカって土地でいうと、本当にそれって日常なのかどうかって疑問もあってさ。
そんり:あれは違うよね。
神森:まあショウビジネス界は、他よりセクシャルマイノリティが多いってのは、モチロンあるんだけれども、なんとなくそういうのをメディアが扇動してるっていうか、誘導してるな。なんて穿った見方をしてるのもあるんだよね。
そんり:それは私も全然あります。わざとらしくて気持ち悪い。アメコミヒーローものでも絶対に同性愛者がいるし。
神森:いるいる、絶対に一人はいるよね。
そんり:有色人種も絶対にいて、色とりどりで。そんなみんなが力を合わせて、みたいなさ。ダイバーシティの押し売りが気持ち悪いというか。
神森:うんうん、わかる。
そんり:そういうベースの上で、同性婚っていう制度を無理矢理ねじ込んで、表面上だけ平等っぽくしても、結局何も変わらない気はするんですよ。
神森:うん、本当に何も変わらない気はする。そんりも在日で、たぶん子供の頃とか、普通ならしなくてもいい苦労もしてきたんだろうなって思うんだけどさ、こんな日本だから。それでもね、こうやっていま頑張って、自分のできることからやってるのを見るとさ、こうなんだろう、マイノリティってことに胡座をかいてるような人達の状況は、すごく僕の中では違和感でしかないって言うかさ。その狭いコミュニティの中の閉塞感みたいなものをすごい感じてて。お前ら、もっと頑張れよって思うんだよね。
そんり:めちゃくちゃわかる。そりゃ誰もが等分であることが一番美しいんだろうけど、今SNSがこれだけ発達してて、誰でも自分の思ってることを発信できる世の中で、弱者と言われてる人たちの些細な声にも、強者と言われてる人たちがビビっちゃって。なんか、甘やかされた子供達のワガママに付き合わされてるみたいな、印象も受けるんですよね。
神森:うん、そうだね。
そんり:あと今は、言葉狩りみたいなのでさ、マイノリティに言ってはいけない言葉とかあるけど、それってマイノリティ当事者じゃないと分からないこともあって、マジョリティは知らなくて当然で。だから教えてあげればいいだけじゃん?とも思うし。
神森:でもさ、それって自分たちは言うじゃん。二丁目なんかで飲んでてもさ、自分たちはオカマだホモだなんだって、会話してんじゃん。それは矛盾してるよね。
そんり:うんうん、確かにね。ただそれはそのコミュニティ内でのみ通用する、親愛の情みたいなのも込められてるから。ただ、それだけ聞いちゃうと、知らない人は使っていい言葉なんだって思っちゃうよね。
神森:そうなんだよなあ。
そんり:だからそれを外部から言われた時に、それを教えてあげる余裕が、マイノリティ側にもっとあっても良いと思うんだよね。それもせずにキーキー怒ってもさって。
神森:確かに。
そんり:だって、わかんない人たちはわかんないもん。言わないと。
神森:なんか理解してもらえない…まあ理解してもらえないって、もうこれも言葉のアレになっちゃうんだけど、そういう人たちが存在してるんだよって頭で理解はしても、絶対に受け入れられないって人たちもいるワケじゃない。それはもう、生きてきた過程の中で知ってるし。でもそれはそれで、もう仕方ないじゃない。
そんり:うん、仕方ない。
神森:だから、そこまで踏み込んで活動する必要もないような気がしてんのね。意味も分からず活動している人が、もちろん全てではないし、ネットの書き込みだったりとか色々見てると、ちゃんと活動してたりとか、例えば同性婚の訴訟をしてる人たちとか見ると、本当に頑張れって応援してるし。遠目で見てるだけなんだけどさ。なんかそうじゃないものを感じる場面も、あったりするので。なんとなくそこら辺の、こうなんだろうな…違和感も感じるんだよね。
そんり:うん、気持ち悪さみたいなのはありますよね。こう据わりが悪いというか。
神森:うん、そうなの。なんだろうね、あれ。
そんり:すごい理解して欲しいとも思ってないんですよ、私は。
神森:そうなの、俺もそうなの。なんか俺っていう人を見てくれる人だけ、もう歳が歳っていうのもあるんだけどね。もうそれこそ10・20代の若い子だったらさ、色んな人と仲良くなりたいみたいなのもあるけど、もうこれくらいの歳になっちゃうと、そんな誰とでも仲良しこよしなんて、考えないワケですよ。老い先が短い人間にとってはさ。やっぱり一人の人として見てくれて、仲良くしてくれて、お付き合いをしてくださる人たち。それこそ少ない人数で良いから、長く付き合ってきたいって思うようになるので。
そんり:私はね、いわゆるセクシャルマイノリティの人達と知り合うキッカケになったのが、Twitterで。その頃に知り合ったのは、ゲイの人たちが多かったんですけど、それまではテレビや映画で見かけるくらい、まあ普通にいるんだろうけど、自分の周りにはいないと思ってたから、でもいるんだって目の前に現れた時も、別に何とも思わなかったんですよ。
神森:うん。
そんり:実際に興味がないの、そんなに。こういう活動してると、私自身がセクシャルマイノリティだと思われたり、すごくゲイリブを応援してる人みたいに思われるけど、それすらもどうでも良くて。
神森:本当にそうだよね、そういうふうにも見えない(笑)
そんり:たまたまセクシャルマイノリティの友人や知り合いがいて、そういう差別的な発言を見たり聞いたりして、友達が悲しむのが嫌で腹が立つだけで。自分も属性で人を判断するのは好きじゃないし、だからって、腫れ物に触るみたいなこともしたくない、言葉狩りみたいなのも嫌だし。
神森:そうだね。
そんり:障がい者の「害」も、ひらがなだったら良いんかって話で。
神森:そこは本当にちょっと、未だに違和感があるんだよね。英語だとさ、障がい者って“Disabled”でしょ。出来る・出来ないだけの言葉の違いでやってるじゃない。日本はそこが“障害”に置き換わってるって事に対する、何かがあるんだろうなって。自分自身もそういう障がい者と関わる仕事もしているから、なんとなくそこは感じるものはあるんだけど、とはいえ、“害”という字を、“がい・碍”にするのかって。それってさ…って思うんだよね。
そんり:気を使ってるように見えるっていうか。
神森:ああ、そういうことか。表面上なだけか。
そんり:外ヅラ変わっただけで、何も変わってないというか。だからさっきの話じゃないけど、同性婚がオッケーになったら、同性愛者への偏見がなくなるのかっていわれたら、なくなんないだろうし。
神森:絶対になくならないと思うよ。
そんり:ウワベを整理することによって、50年後・100年後に変わってるかもしれないから、もちろんやって然るべきだととは思うんですけど。そのウワベに踊らされてるみたいな人たちが、チラホラ見える気持ち悪さはあるかなっていう、気はしますよね。
神森:そういうところが、鼻につくんだろうね。
二人:(笑)
神森:自分が他人より、一生懸命生きてるとかっていうつもりなんて毛頭ないけど、なんとなくやっぱり、なんだろうね、自分が同性愛者だっていうのが、自分からじゃなくて意図せずに知られた時にね、アイツは同性愛者だからって思われたくないっていうのがあって、自分はこういう人間なんだって言えるようにガムシャラに生きてきて、仕事もしてきたんだよね。そういう意味では。だから、そのさっきの元の話に戻ると、胡座かいてんじゃねーよって話に戻るわけですよ。
そんり:要は過保護にされたいだけでしょ?って思っちゃうの、私は。
神森:そうそう。なんかね、この先の将来、今の若い子達に対する不安というか、何ていうんだろうね…そういったものをちょっと感じずにはいられないなって、気はする。苦労しろなんて思ってないし、もちろん時代が変わって、彼らが生きやすい時代になってくれればいいなっていうのは、本当に心底思うんですよ。やっぱり、これからので日本の時代を背負っていく子達にとっては、少しでも生きやすい世界であって欲しいなっていう気持ちは、本当にあるんだけど。なんとなく、今の雰囲気に踊らされて生きてる子たちも、多いんじゃないの?っていうふうに、思うこともあるんだよね。
▼セクシャルマイノリティの現在・過去・未来
そんり:うん、すごくわかります。差別も偏見も絶対にないほうが良いし。でも、ないフリはダメだよねって。今後、10年・20年・100年後、今よりも偏見がより少なくなるだろうけど、なくなることはないと思うから。人間同士が生きてる以上。だけど、みんながより生きやすい世の中になった方が、それは絶対良いに決まっていて。だから今、そういう意味ではセクシャルマイノリティの人達っていうのは、ちょうど過度期に来てるのかなって、今日話してて思いましたよね。
神森:確かに、時代は変わったよね。
そんり:10年前ですら、全然違ったもんね。
神森:10年前もそうだし。こっちの世界を知ったのは高校生の時で。道端に捨ててあった『SABU』(※ゲイ雑誌)ってあるじゃん。
そんり:ありますね。
神森:『SABU』が道端にバラバラにされて、捨ててあったのを見た時に、それを見たときの衝撃。なんかこう、すごく胸にグッと来るものがあって。その時に自分はそうなんだっていうのを、悟ったというか、気付いたんだよね。だけどやっぱりその時代は、そういうものが許されないというかさ、おかしいヤツ、ヘンタイ?ヘンタイってのもおかしな話なんだけど、そういうふうに見られる時代だったからさ。
そんり:それは学生の時?
神森:30年くらい前かな?高校生くらいだったから…30年どころの騒ぎじゃねえか(笑)
そんり:40年くらいだよね、約四半世紀(笑)
神森:だからそういうことを考えたら、その時代からはもう、全く違うよね。
そんり:違う違う。私が勉さんと知り合ったのが…10年は経ってるよね?
神森:経ってる経ってる。夜中にみんなでTwitterしてた時でしょ?
そんり:その時と比べても、状況が全然違うもんね。
神森:そうだね。10年前って、俺は裏アカウント使ってたから。隠さなくていい人たちとやりとりしてるのが楽しくて、ずっと裏アカでツイートしてたんだよね(笑)まだ、そういう話を表ではしづらくて。今だったら、全然平気だけど。
そんり:うんうん。でも10年でこんなに変わるんだなってね。
神森:確かに。
そんり:いわゆる、デジタルネイティブって言われる世代の子たちは、10代で既にSNSもあったりするから、仲間が当たり前にいるんだよね。
神森:そうだよね、アプリだってあるしね。
そんり:そういう意味では、今はテレビでも映画でも当たり前にセクシャルマイノリティの人たちがいて。あ、でも時々、そういうのに理解を示すのがクール、みたいな気持ち悪さは感じる。ファッション的な。
神森:ああ、わかるわかる。スッゲーわかる。
そんり:私はこんなに理解してますよ的なポーズが、めっちゃ気持ち悪い!みたいな。あと“マイノリティの友達”が欲しいとか言ってるやつら(笑)
神森:わかる。それ、わかる。
そんり:アレ、嫌だよね(笑)人なんて一皮剥けばみんな同じって、私は信じてるんですけど、でも相性合わないとか嫌いなヤツもおるし。ゲイだからって、お洒落で楽しいなんてあり得ないし。
神森:ないない!そんなの誰かが作ったイメージだよ。本当に紛れてんだから、普通に。日本の人口の5パーセントは同性愛者って話で、その中の男性/女性の比率はわかんないけど、本当に紛れてしまうくらいに、普通の人たちですから。
そんり:そう本当に普通、その言葉しか出てこない。属性なんて全く関係ない。
神森:本当に関係ない。
そんり:だからそういう意味ではね、私すごい本当に恵まれてるなって。色んな人たちと知り合えてお付き合いできて、それを実際に体感できる状況にいるから。
神森:うんうん。
そんり:別にみんなで幸せになろうねとか、差別をなくそうねなんて、そんな大それたことは思ってないけど、今の日本において、愛し合う二人のゴールが“結婚”にあるんだとすれば、そりゃ同性婚も認められるべきだよね、とは思います。
神森:ああ、そうかそうか。今そんりと話してて思ったのは、なんだろうな、目的と手段が変わっちゃってきてるような状況なのかね、同性婚の動きみたいなものが。もちろん、活動してる人で、裁判起こしてる人たちは頑張れって思うんだけど、多分、目的と手段が逆転しちゃってるような状況に、違和感を覚えてるのかもしれないね。
そんり:ああ、それはあるかもしれないですね。
神森:なんとなくなんだけどね。これだけ、世間に注目されていることだったりするから。
そんり:毎日とまでは言わないけど、ほぼ毎日そういうったニュースがね。
神森:そうなのよ。実はさ、俺が12月まで住んでた都内某区の議員がさ、同性婚を認めると滅びるとかなんとか言ったのかな?
そんり:おめーが滅びちまえ(笑)
神森:そうそれで、いっとき話題になったんだよね。で、それに半分抗議する形で、仕事繋がりだったり色んな友達とかがわざわざ沖縄まで来てくれて、パーティーした時の写真をインスタで出したの。その時はまだ住所は都内某区で、そこに養子縁組届けを出したんだけど、窓口の女性が「おめでとうございます」って言ってくれたのが、未だに忘れられなくて。スゲー嬉しかったのね。で、ここにはそういう人たちもいるんだよっていうのを、発信したのよ。で、その都内某区にこの4月、パートナーシップ制度ができたんだよ。
そんり:世間の流れ的にも、やんないとってのもあったんだろうね。無理やり形だけを先に整えるってやり方も、全然ありだとは思うんですけど、なんかね、言語化しろって言われたら難しいけど、据わりの悪さみたいなのは残りますよね。
神森:そうなんだよね。なんなんだろうね、これね。
そんり:うん。
▼クローゼット・マイノリティ
神森:そんりはさ、日本で生まれたんだよね?
そんり:うん、そうです。四世。
神森:ご両親が韓国の人ってのもあって、やっぱり大変な思いをずっとしてきたと思うんですよ。改めてそこらへん聞きたいなと思って。ていうのもさ、俺多いのよ。仕事の同僚とか、韓国から来て日本にも住んじゃってる人とか、元韓国人の同僚とかも多いのも。で、転職する度に、そいつらにすげーお世話になって来て、その人たちが好きで。でも実際は、みんなどういう気持ちがあったのかなって、俺は全然知らなくて。
そんり:どういうというか…私は在日韓国人で特別永住者なんだけど、もともとは北朝鮮籍だったの。
神森:そうなんだ。
そんり:で、ある日突然、父親が家族旅行でハワイに行こうって言い出して。でも北朝鮮って日本と国交がないから、パスポートが取れないのね。
神森:ほうほう。
そんり:で、北朝鮮籍だと再入国許可を取るにも時間がかかるから、もういっそのこと韓国籍に変えようって、家族全員、韓国籍に変えたの。
神森:そんなこと出来るんだ。
そんり:うん、国籍ってお金で買えるんですよ。お金で買えるって言い方は、あまりに説明をすっ飛ばしてるけど、要は税金って国からしたら家賃みたいなもんで、大家さんは家賃払ってくれれば良いワケじゃないですか。もしくはその人自体が何か利益をもたらしてくれるとか。例えばアメリカとかだと、和食のシェフはグリーンカードが取得しやすかったり。
神森:ああ、なるほど。そっかそっかなるほど、そういうことか。
そんり:だからそこの国の利益になる人だったら、その国の国籍って取りやすいと思うんですよ。多分ね。
神森:ああ、なるほどね。
そんり:私は朝鮮学校に通ってて、チョゴリを着て電車通学してたから、「チョーセンに帰れ!」みたいに言われることもあった。
神森:ああ、チョゴリ着てる子達いたね。俺も当時はクソガキで全然わからなかったからさ。お互いが学校に殴り込みだ!みたいな感じの人もいてさ。もう40年?50年くらい前?そうやって、大騒ぎしてた時代ですよ。
そんり:まあでもヤンチャな人たちは多かったよね。まさに映画の『パッチギ!』みたいな(笑)
神森:はいはいはい。
そんり:そういう意味では、嫌な思いをいたこともありますよ。
神森:そっかそっか。
そんり:でも私は晒してるから。制服もチョゴリだし、本名で生活してたし。その時点で、在日が嫌いな人たちは、周りから去っていってくれるんですよ。
神森:なるほどね。
そんり:そういう意味では、普段は通名(日本名)で生活して日本の学校に通って、その流れで社会人として生活してる人たちの方が、在日差別に怯えてるんじゃないかなって思うんですよね。
神森:そっかそっか、みんな通り名持ってるもんね。
そんり:だから公表してる分、直接罵声を浴びせられる腹立たしさはあっても、LGBTでクローゼットの人とか、生まれてからずっと通名で生活してる在日の人たちみたいな、怯え方はしてないかなって感じ。
神森:そっか、そんりって元々は北朝鮮籍だったんだ。だったら『愛の不時着』の話をすれば良かったな。
そんり:私観てない(笑)
神森:俺もう、6~7回観たんだよ。ハマってさ、アホみたいに(笑)
そんり:あれって、北に不時着しちゃった南のお嬢と、北の軍人のラブロマンスなんだよね?
神森:超観てたんだよ、ヒョンビン大好き(笑)
▼アウトロ
そんり:あと残り10分ほどになりましたけど、今後どうですか?ご自身としては家族も作って、宮古島にも移り住み、静かに余生を送るのみって感じ?
神森:いやいや、そんな。働かざるもの食うべからずですから、ガムシャラに働きますよ(笑)
そんり:でも将来的にはね、こんだけ言っといてあれだけど、将来はどんな人も属性からの偏見に晒されない、世の中になると良いなって思いますけど。
神森:そうだね。でもこの島もさ、多分普通に偏見はあると思うんですよ。
そんり:あ、そうね。田舎だしね。
神森:最近だと、沖縄で言えばさ、あの…那覇…浦添か、パートナーシップ制度が出来たんだよね。沖縄で言えば、那覇が一番早かったんだけど。あと那覇の場合は「ピンクドット沖縄」っていう、毎年秋にやってるイベントもあって、比較的、多様性のある都市を目指そうみたいな感じで動いてはいるものの、やっぱり県の全体、こういう離島になってくると、なかなか大手を振ってってのは難しいなって思ってる。
そんり:うんうん。
神森:ただ僕の場合、こうやって表に顔を出してる人間で、自分がそうだって言ってるがゆえに、この島にいる僕と繋がりが元々ある人に対しては、自分と彼が家族だって知った上で、対等に付き合ってるんだよ。でも、これから初めて会うこの島の人たちとは、どう接すればいいのかなって、正直悩む時はあるよ。やっぱり。
そんり:じゃあ今はまだ、そんなに大っぴらにはしてないんですね。
神森:知ってる人もいる。もともと仕事で繋がってた人たち、今すごくお世話になってるんだけど、そういう人たちは知ってますから、僕のパートナーだってことも。そういう体でお付き合いしてるけど。これから、いわゆる昔からこの島にいる人たちと会う機会がもしあった時に、どうしようかなっていうのは正直あるよね。
そんり:ああ、そうか。都会の人たちってそういうふうに思ってても、表には出さないじゃないですか。だけど田舎の人たちは、そういうのむき出しでくるもんね。
神森:いや本当にそうなのよ。逆に仲良くしようと、相手のことを知ろうと思うから、例えば、お子さんはいるの?奥さんはどういう方なの?って、普通に聞いてくるんだって。
そんり:うんうん。
神森:それが今後、面倒臭いなっていうのは、正直あるよね。
そんり:田舎に引っ越すってことは、そこのコミュニティに属して行くっていう覚悟が必要だから、そことどう折り合いをつけていくかですよね、今後は。
神森:だからこそ、ここの島に貢献できる何かをしていきたいなって、あるのよ。俺という人間が、この島で何かをして、島の人たちの役に立つ。役に立つというか、島の人たちに認めてもらえるような、何かしらの活動をした中で、俺ってこういう人間だよっていうふうに、自然にそうなれると良いなってのはあるよね。
そんり:うんうん。本来ならね、そんなふうに頑張らなくても受け入れてもらう、受け入れてもらうって謙るのも変な話だけど、でも実際にそういう現実が目の前にある中で、敵でも怖い人間でもないんだよっていうのを、示していかないとね。
神森:うん。
そんり:本当はそんなことしなくて良いんだけど、実際にそういう現実がある以上、そこで拗ねててもねって。
神森:そう、そこ!これが自分で選んだ道だったなら、自分なりに出来ることって何だろう?って考えて、やっぱり島の為に出来ることに最善を尽くした上で、俺という人間が同性愛者だったとしても、ああそうなんだくらいの感じで、思ってもらえるのが良いのかなっていう気はするかな。
そんり:うん。一度知ってしまえば、他は受け入れられうようになっちゃうと思うんですよね。
神森:この島にも、普通にいると思うのよ。絶対にいるんだけど、東京と違って、ゲイバーみたいなのもちゃんと出てないんだよね。ゲイマップにも載ってないんですよ。やっぱりあの…島だから、噂になりたくないとかあるじゃない。だから俺らも分かんないの、どこにあるか。そういう人たちは肩身の狭い思いをしながら、生きてるんだろうなって思うとね、島の外から来た暴れん坊がさ、こう何かできることをして、それは別にそういう活動ってワケじゃなくて、自分の今の仕事を通じてこの島に貢献して行って、自分という人間そのものを知ってもらうことが出来れば、何かしら変わっていくというか。変える為に、何かをするってワケでもないんだけど。
そんり:うん、わかるわかる。わかります。
神森:自分が生きてく上での、防御策というか。
そんり:うん、偏見なんてない方がみんな楽だし。それが一つなくなった分、みんなが自由になれると思うから。受け入れ合おうとか、愛し合おうとか、そんな大袈裟な話じゃなくて、そうなると良いなっていつも思います。うん、すごくわかる。
神森:だよね。そうそう、人として愛するというかさ、性的に愛するとかっていうんじゃなくて、人と人として愛し合えるような世界になっていくと良いなって、思うよね。
そんり:うん、いいインタビューだった!ありがとうございます。
神森:本当に?なんか結論があるのかないのか、ダラダラだったけど(笑)
そんり:いやいや、そんな。なかなかこんな深い話ってしないから。
神森:こちらこそ。久しぶりに話が出来て良かった。
そんり:このコロナが落ち着いたら、お邪魔します(笑)
神森:本当に何もない所だけど、ゆったりした時間を楽しむには最高の島なんで。
そんり:いつもあげてる写真とかも、めちゃくちゃ綺麗だもん。
神森:みんなが絶対来たいと思うような、写真しかあげてないから(笑)
そんり:(笑)
神森:絶対にみんな遊びに来てっていう、本当にささやかな願いですから。
そんり:今日は改めて、ありがとうございました。
神森:こちらこそ、とんでもない。ありがとうございました。
〜終〜
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