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2020年5月の記事一覧
イタロ・カルヴィーノ「冬の夜ひとりの旅人が」
言葉の魔術師と評された、イタリアの作家、イタロ・カルヴィーノの最後の長編です。
カルヴィーノの長編は毎回趣向が凝らされているのですが、本作のそれはメタフィクションによる読書論。
こう書くとややこしく感じる方もいるかもしれませんが、彼の魅力的な語り口は難解さを感じさせません。
本作の書き出しはこうです。
<あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている
中村邦生編「この愛のゆくえ」ポケット・アンソロジー
これも愛 あれも愛 たぶん愛 きっと愛
(松坂慶子「愛の水中花」より)
岩波文庫別冊で「ポケットアンソロジー」として発行された2冊のうちの1つです。
「愛」というテーマは魅力的でありながらも漠然としていますが、編者の中村さんは古今東西の作品を目配りよく取り上げて、未知の作家・作品に出合う喜びと、既知の作品を新たな視点から捉えなおすことができる愉しみを読者に提供してくれています。