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スペシャル・シークレット・スパイ 佐藤守

「その日はJealousy Angelsのオーストラリア公演があるのですが...」細身のスーツの男が眉を八の字にして言う。
「いや、残念だがこれは最優先事項だ、佐藤君。彼の身の安全を確保してもらわないと世界が大変なことになるかもしれないんだ」と白髪混じりのおじさんが言う。
「しかし、伊神さん。今回は神席が当たったんですよ!前から二列目!他の人でもできる任務だと私は思いますが...」
「いや、陛下から直々に君への任務ということになっておる。これは絶対だ。君もわかってるだろう?」
「わかりました。またあの夢ですね。仕方ないですね」そう言うと佐藤はうなだれ部屋を出て行った。

この国では特殊秘密機関が存在する!霊力に長ける夢人の悪予知夢の成就を阻止し、国の発展と平安を守るために人知れず活躍しているのだ。佐藤守、彼もまたその中の一人。大学在学中にスーツの男達に連れてこられた場所で夢人なる人物に見初められてからずっと『特殊秘密工作員(Special Secret Spy)』通称『SSS』なのである!

飛行機の中で改めて今回の任務について考える佐藤。
「古代アステカ文明の力を復活させるため世界を大洪水に陥れる計画の奴らがわざわざうちの国のマツオカを誘拐するだって…普通に考えてありえないだろ。すごい科学者とかならわかるけど、スポーツ解説者とか…しかも、フランスでとかやめて欲しい。めちゃくちゃ観光に行きたいじゃないか...」

ドカーン!
急な大きな爆発音と共に機体は大きく揺れ電気が消え風が吹き、天井から酸素マスクが降ってきた!
「なんだ!?事故かテロか?機体に穴が空いてどんどん高度が落ちてるぞ!?」焦る佐藤。
「佐藤ゥゥゥゥ!ここであったが首年目!」短髪で黒の革ジャンを着た若い男が通路から飛びかかってきた。
「コブシ!?しかもクビ年目ってなんだよ!話し言葉じゃ普通ありえないボケを入れてくるな!」
ガシッ!
佐藤の胸ぐらを掴んだ男は高校時代の悪友ムサシコブシである。頭が良いようで悪く、運があるようでない残念な男である。彼が現在所属している団体は 『SSS』の仇の『555』である。『555』とは『郷に入っては郷に従えゴウダマシッタ教』という新興宗教。我らがJAのリーダーに頂上決戦で負けて以来自暴自棄になって新宿だか池袋だか秋葉原だかで勧誘され入ったらしい。
「邪魔はさせんぞ佐藤!ゴウゴウゴウダマシッタ様のお告げによれば、大洪水の後にイルルミルカが帰って来るのだ〜!」
「お告げの内容に意外と詳しいじゃないかコブシ、だが惜しい」そう言うと佐藤はスーツの襟を触った。
ビリビリ!
電気が流れた!と思ったが違う。佐藤のスーツが脆く破け去ったのだ。
「なんだと〜!」コブシは急いで佐藤の肩を掴もうとしたが軽くパーで払われ風に乗って飛行機に空いた穴に飛んでいった。
「I'll be there〜!」そう言い残しコブシは完全に消えた。
「ある意味合ってるが、そこはbackだろ...」

今回は2000文字小説なのにコブシの登場で字数を無駄に使ってしまったので、ここからの佐藤の活躍を急ぎ足で説明する。

コブシ撃退後、飛行機はN県に不時着する。佐藤はそこで出会った謎の美女アミに連れられ、ヘリコプターに乗せられどこかの山の「ラクーンラスカル」という地下施設ヘと向かうのであった。そしてそこで佐藤は世界の五本の指が入る夢人「吉岡マディ」(オネエキャラ)と出会いあるお告げを聴く。それは佐藤がマツオカと出会うことで世界が滅ぶというものであった。
だが佐藤はそれを気に留めず任務遂行のため施設から脱出を試みる。が、アミの色仕掛けに引っかかり毒薬を盛られてしまうのである!
しかし幸いにもアミが毒薬と間違えて笑い薬を盛ったため腹筋崩壊しながら命からがらその場から脱出した佐藤は、盗んだバイクで行く先もわからぬまま闇の中に消えて行くのであった。

そして次の日、伊神からの連絡でマツオカがすでに何者かに拉致されてしまったことを知らされる。それからイギリス行って、ああなって、こうなって、ケネディ宇宙センターまで来たよ!


「しっかりするんだマツオカさん!大丈夫か?」佐藤はロケットの中の男に声をかけた。
「...」しかし、へんじがない。ただのしゅうぞうのようだ。

「くそ!みんなが太陽神と崇めるからマツオカを北極に落として氷を溶かそうとするやつが現れるんだ!」
ロケット発射まであと5分。佐藤はマツオカをどうにか下の通路まで運び、コブシの乗って来たバイクに乗り込む。そこへ襲いかかるコブシ。手に汗握る展開だが字数の関係で全カット!

ぐわ!爆風で転がるバイク。佐藤は無事にマツオカを救出し任務を達成したのである!

...後日行方不明だったマツオカのインタビューがテレビで放送された。
そして最後に彼を助けた男が去り際にこう言ったことを伝えている。
「グランドスラムは楽じゃない」と。

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