日本の価値観を、アップデートしよう。 「#採用やめよう」に込めた想い
はじめにー「終身雇用の限界」
早いもので、「令和」の時代になってもう1ヶ月。未曾有の10連休から始まって、なんとなくふわふわした新時代の空気感もあった中で、日本の雇用システムの特徴でもある「終身雇用」に関する財界トップたちの発言が、世の中に波紋を呼びました。
『雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないとなかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた』(トヨタ自動車社長 豊田氏)
『(終身雇用は)制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている』(経団連会長・日立製作所会長 中西氏)
日本企業の成長を支えてきた日本型雇用システムの三種の神器といえば、新卒一括採用、年功序列、そして終身雇用。
変化が激しく、非連続な破壊的イノベーションが起こりやすくなった時代になったとはいえ、ここまで露骨に、財界トップが自らのこれまでの「過去」を否定するような発言は、新時代の幕開けにおいて、十分に世論を騒がせ、今後の未来を考えさせるものとなったように思います。
さて、そんな中、今日から正式に学生たちの就活期間がスタートです。そして、あえてそんなタイミングでランサーズが始めた、「#採用やめよう」のプロジェクト。
一見、世の中やこれから必死に社会へ出ていこうとがんばる就活生の皆さんにケンカを売っているかのようなこのコピー。言葉の背景にあるぼくらの真意を伝えたたくて、このブログを書くことにしました。
本当にやめたいのは、古い常識や価値観
まず最初に書いておきたいのは、採用や就職、正社員をすべて否定してやめるべきと考えているわけではない、ということです。
時代が変わってきた中で、本当に終わらせるべき、やめるべきだと思っているのは、古くなってしまった既存の価値観です。
たとえば「職業=会社員」という考え方。海外に行かれたことがある方は想像しやすいと思いますが、出入国カードで書く「職業欄」。なんとなく、「会社員」と書いてしまう。潜在意識において、社会人<「会社人」、就職<「就社」という考え方があるのではないでしょうか。
あるいは、「正社員の方がえらい」というなんとなくの偏見。安倍首相が「この国から非正規という言葉を一掃する」と発言したのが2018年。副業を含む広義のフリーランスは増え続けていますが、致し方なく不本意に「非正規」と呼ばれる働き方をする人は年々減ってきており、直近ではわずか14%。多くの方は、これを自分の意思でその働き方を選択しています。
そして、人手が足りないときに「まず正社員を採用」する、という先入観。高いスキルを持ち、プロフェッショナルな仕事をするフリーランスが、世の中に本当に多く存在します。労働力人口が減り続ける中で、普通に考えて、増え続けるフリーランスや副業を積極的に活用しない手はないと思います。
当たり前と思っている常識を、新時代に向けて、アップデートしたい。そう心から信じています。
働くとは、社会と「自分らしさ」との接点
ひるがえって、一人ひとりの個人にとって、働くとは、いったいなんでしょうか?あらためて問いかけてみたいと思います。
これはもう永遠の問いというか、哲学の領域に近いですが、ランサーズではよく、働くとは「社会と自分らしさの接点」ではないか、というような話をしています。これはどういうことか。
ランサーズでは、「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」というビジョンに掲げていますが、個人のユーザーである「ランサー」の皆さんの働き方、生き方は本当にさまざまです。
あるエンジニアは、1年の半分をクライアントワーク、1年のもう半分を自分の好きなオリジナルのアプリの開発に使っている。
あるWebデザイナーは、地方で農作業をしながら、東京からのWeb制作の仕事を受注して生計をたてている。
あるライターは、家族との時間や自分の趣味を大切にしながら、その趣味をいかせる記事の執筆を主な仕事にしている。
いろいろなランサーの皆さんに出会い、話してきた中で感じるのは、「圧倒的なまでに生身の人生の集合体」が、そこにあるということ。
内発的動機にもとづいた自分らしさをセンターピンにして、いかにそれを社会に接続させて仕事にするか。一人ひとりのスキルや経験がプロフィールとなり、それが「会社員」ではない職業や肩書きになる時代をつくっていきたいと考えています。
「オープンタレント」の活用が、未来をつくる
つい最近ランサーズで出した新サービスの「Lancers Enterprise」。構想当初から掲げてきたプロダクトのコンセプトは、「企業と個人が共創できる社会をつくる」というものです。
この新サービスの立ち上げにおいては、たくさんの社外の「オープンタレント」に方々にチームに入ってもらいました。
プロダクトのUI/UXを設計してもらったり、ビジネスリサーチをしてもらったり、一緒にクライアントヒアリングにいったり。ノンコア業務を切り出してアウトソースする、というのではなく、コア業務に社外タレントを巻き込んでインソースする、といった感じでしょうか。
もし、ぼくらが正社員の採用に、あるいは正社員だけでチームを組むことにこだわっていたならば、このサービスの立ち上げは3ヶ月、いや半年は止まり、それだけ新しい価値をユーザーに届けるのが遅れていたと思います。
上記のような新サービスだけでなく、他にも社外タレントと一緒に重要なプロジェクトをすすめることはランサーズでよくあります。
たとえば最近実現した大きな事業提携において、プロフェッショナルなOB/OG(アルムナイ=卒業生)にチームに入ってもらうことでプロジェクトが一気に進む、ということがありました。
複雑に入り組んだプロジェクトではなかなか社外の人材を活用するのは難しい、といった場合に、元社員をパートナーにすることは、オンボーディングの効率性や心理的な関係性の面においても、大きなメリットがあります。
新規事業や重要プロジェクトなどのミッションにおいて、社内だけでは知見やリソースが不足してしまう、というのはありがちなこと。そんな時に、社外のオープンタレントを活用するという選択肢をもつことは、企業の未来をつくるうえで、きっと大きな前進につながると思います。
おわりに
いま、個人の価値観が、社会の流れが、大きく変わってきています。少し前にバズった経産省の『不安な個人、立ちすくむ国家』にもあったように、モデルなき時代において、個人は「自由だけど、不安」というのが現代の特徴だと思っています。
一方で、企業の考え方や、企業と個人の関係のあり方は、まだまだ今後、変わっていくべきと感じています。そのために、これまでの先入観をいちど捨てて、「採用やめよう」と考えてみることが、変化の第一歩になるのではないか。
これは、どちらが良い悪いということではなくて、時代の変化にあわせた社会の価値観のアップデートなんだと思っています。
一人ひとりの個人が、自分の人生の主権を手にしていくために。
日本の企業が、未来に向けて新たなモデルで成長していくために。
日本の社会が、課題先進国から課題解決先進国になっていくために。
ぜひ一緒に、未来に向けて、世の中を変えて、日本をアップデートしていきましょう。皆さんのご意見やフィードバックをお待ちしています。
※「#採用やめよう」の公式メッセージはこちら↓
※ぼくが個人的に考える「1億総デザイン社会」のコンセプトの詳細をご覧になりたい方は、↓をぜひ読んでみてください