「個人の時代」×ランサーズでつくっていきたい世界
「個人の時代」によせて
こんにちは。ランサーズの曽根です。最近、採用の面談などで「ランサーズ の長期的展望ってどんな感じですか?」と聞かれることが多いのですが、「『株式会社自分』の価値を大きくしたいんだよね」という話をよくします。
「株式会社自分?」と思った方もいるかもしれません。当然です。「1億総デザイン社会」とあわせて、わたしが勝手に使っている用語なので笑
2年くらい前に『未来の「フリーランス的」な世界』という記事を書いたのですが、「株式会社自分」という考え方は、昨今いわれる「個人の時代」において必然的なコンセプトだと思っています。
「資本主義×民主主義」という現代社会の仕組みへの不安
「100年人生時代」を迎えての個人のライフデザインの多様化
「クリエイターエコノミー」にみる仕事・報酬・経済の質的変化
「web3」の技術がもたらす分散型社会における個人の主権の拡大
などなど、「個人の時代」が広がっていく動きは、これから加速する一方だと思っています。
ちなみに、ランサーズのミッションは「個のエンパワーメント」。ますます広がる「個人の時代」においてランサーズがつくっていきたい・目指していきたい世界観を、直近で印象深かったユーザーのストーリー、最近リリースした新規事業を通してご紹介していきたいと思います。
※せっかくなので、新規事業を通しての学びや気づきについても共有したいと思います。ベンチャーや新規事業に興味がある方にとっても何か参考になればと願っております!
「株式会社自分」という世界観
まずは、「株式会社自分」と呼んでいる世界観について。
ランサーズ では「LOY(Lancer of the Year)」という、新しい働き方を実践する社会のロールモデルになるようなユーザーを表彰するアワードを、2015年から毎年開催しています("Lancer"とはランサーズのユーザーの呼称)
2015年から数えてこれまで8回のLOYを開催してきましたが、毎年のアワードを通じて、「個人の時代」×「働き方」の大きな変化をダイレクトに感じてきました。ユーザーの事例・ストーリーをいくつかご紹介しながら、その変化について少し語ってみたいと思います。
フリーランスとは「生き方」である
LOYの歴史を振り返ったときに、個人的にまず印象に残っているのが、2016年、2022年と2回受賞されている堂本さんという翻訳家です。
翻訳を生業とするプロフェッショナル(「言葉の仕立て屋」)として、言葉を大事に扱う彼の話の中でも、特にわたしの印象に残ったのが「フリーランスとは、働き方ではなく生き方である」という言葉です。
アワードの歴史を通じて「働くとは何だろうか?」とわたし自身ずっと考えてきているのですが、彼の言葉を聞いたとき、ものすごくハッとさせられたのをよく覚えています。
働くとは、「自分らしさと社会との接点」である
仕事とは、「人生における作品づくり」である
幸せとは、「自らの人生の主権を握ること」である
フリーランスとは、「Be Your Own Bossな生き方」である
毎回、LOYを通じたユーザーのストーリーには心の底から突き動かされます。これまでユーザーのみなさんの中でも、個人的に印象的だった3人のストーリーを紹介したいと思います。
1. フリーランスという「当たり前」
一人目は、平田さんというWebディレクターです。ちょうど還暦を迎えたタイミングで、今年2022年3月にLOYを受賞者された方です。
もともと日経新聞社の記者として2015年の第一回のLOYを取材
LOYの取材後、新聞社からベンチャーへ転職されメディア編集に従事
その後、さらにフリーランスに転身され、還暦を迎えてLOYを受賞
彼がLOYを取材してくれた2015年は、まだまだフリーランスという選択肢が社会的に珍しい中で、なかには「フリーターとどう違うの?」という勘違いさえあったような時代。
オールドメディアの記者・編集者から「強い個人」になりたくてフリーランスに転身され、挑戦を続ける中で、現在では多くのサイト群を展開するWebディレクターに。何歳になってもアップデートし続けてこられた平田さん。
今年、そんな平田さんの受賞を目の当たりにして、フリーランスが個人にとって「当たり前の選択肢」になってきたこの8年の歴史を、目の当たりにした思いがしました。
2. フリーランスにとっての「甲子園」
二人目にご紹介したいのはTAKAさんという営業コンサルタントです。セールス職としてこれまでの歴史上で初めて今年LOYを受賞された方です。
もともとIT企業の営業。趣味のヨガと両立するためにフリーランスに
世の中でまだまだなかったフリーランス×営業としての職を自ら開拓
フリーランス仲間と一緒にLOY受賞を目指して、その仲間と同時に受賞
フリーランスとして独立してから、まだまだ珍しかったフリーランスの営業職として実績を積み重ねる中で、「LOYで一緒に受賞したいよね」と言い合っていた仲間と、今回の2022年3月に同時受賞。
たとえるならば、夢を誓い合って同郷を離れた野球仲間と、目指した甲子園の舞台で再び出会う。まるでそんなストーリー。
ある意味で、このLOYがフリーランスのみなさんにとっての憧れとなる「甲子園」的な場所に育ってきたということに深く感慨を覚えた瞬間でした。
3. 「何者か」が生まれていくキセキ
最後に紹介したいのは、とっとこさんというマーケターです。我々のミッションである「個のエンパワーメント」を体現するユーザーの事例として、ランサーズのIR資料でも紹介させていただいているユーザーになります。
副業が本業の収入を超えるようになり独立してフリーランスに
ライターからSEOコンサルタントへ。現在フォロワーも2.7万人
実績も増え、受注から発注もするように。最終的に独立して法人化
もともとはエレベーター技師だったとっとこさん。インターネットとかフリーランスとかとは無縁だったところから、月400万円を超える報酬を得るようになり、そして現在は法人化して会社経営者に。
くわえてとても印象的だったのは、とっとこさんがご自身の結婚式で、オンラインのみでの関係だったランサーズ上でのクライアントやランサーズの社員を招待してくださったこと。「結婚式で、はじめまして。」
副業⇒フリーランス⇒会社経営者、ライター⇒SEOコンサル⇒マーケター、という変遷をたどっていったとっとこさん。もちろんご自身の努力の賜物であることは十分認識したうえで、それでも、ランサーズを通じて「何者か」「誰かのプロ」が生まれていく、そういう世界観に感動すら覚えます。
「人生の集合体」としてのランサーズ
「何者でもない」個人が「何者か」になっていく。ランサーズとは、「人生の集合体」のようなプラットフォームだと思っています。
仕事や働くを通じてユーザーの人生そのものを預かる中で、圧倒的な社会的大義と、それに合わせた社会的責任が表裏一体になっている。
「何者でもなかった」人たちが「何者か」になっていき、「誰かのプロ」として、自分の名前で価値を届ける主体になっていくサービス。一つひとつの実績が、評価が、彼ら彼女らにとっての名刺代わり。
「個人の時代」と言われて久しいですが、個人と法人の垣根はこれからどんどんなくなっていくと思います。もっというと、「個人」の定義は変わっていくと思います。
企業にとっての信用を可視化する帝国データバンクのように、個人といういわば「株式会社自分」の信用を可視化し、エンパワーメントする。ランサーズはそんなサービスでありたいと思っています。
3年前に「#採用やめよう」のキャンペーンで唱えていた「日本の価値観のアップデート」。コロナの影響も多分にありますが、こうしたロールモデルになるようなユーザーの活躍が増えてくることによって、日本の当たり前が変わっていきつつあるのを大変うれしく、そして感慨深く思っています。
新規事業による社会課題の解決
4月にサービスリリースを発表し、6月から実際にサービス提供を開始した仕事連動型のデジタル教育サービス「Lancers Digital Academy」。直近ではGoogleや経産省などが中心になって発足した日本リスキリングコンソーシアムへの参画も発表しました。
直近での岸田政権の「骨太の方針2022」にもあったように、スキルアップや人への投資、とくにデジタル人材育成は国家的なアジェンダ。2015年の「働き方改革」ならぬ「学び方改革」が日本における大きな社会課題の一つになっている、ともいえると思います。
このサービスの立ち上げ検討を始めたのは2021年の春でしたが、実際にサービスをリリースし、社外からの反響やユーザーの反応を見るにつれ、市場の大きな盛り上がりをあらためて感じています。
新規事業を通じて大きな社会課題を解決する、その中でゼロイチの新しい価値を届ける瞬間というのは、常にワクワクするものです。この新サービスが生まれるまでの軌跡を通じて、私自身が感じたことをあらためてつづっていきたいと思います。
事業立ち上げのきっかけはユーザー
あらためて、なぜ、この事業を立ち上げようと思ったのか。きっかけは、ユーザーの皆さんの以下のようなの実際のストーリーでした。
営業職からWEBデザイナー目指して独立⇒Lancersでshopifyのブートキャンプを受講⇒「shopify認定エキスパート」を取得⇒Lancers上での受注が増加し結果的に単価も大きく向上
料理人目指すもコロナ禍で職を失う⇒MENTAでメンターを見つけてプログラミングを学習⇒その後IT企業へエンジニアとして就職⇒実際のサービス開発で実力をつけてフリーランスとして独立
いずれも、自分らしく働くための学びと、世の中の仕事のニーズがしっかりと合致し、学習⇒成長⇒仕事のサイクルを通して自身の市場価値、つまり「株式会社自分」の企業価値をあげることができた例だと思います。
さまざまな人たちが、LancersやMENTAという「働く」や「学ぶ」のプラットフォームで成長していく軌跡を目の当たりにする中で、このサイクルをまわすサービスを事業としてつくり大きく育てたいと思うようになりました。
1. 責任者:「最高の地獄」を楽しむ
新規事業をつくるうえで、ユーザーの何のペイン・課題を解決するか、つまり「何のためにやるか」が大事ですが、それと同じかそれ以上に重要なのが、「誰がやるか」つまり責任者をどうするか。
強い想いで新規事業の立上げをドライブしていく、いわば「社内創業者」。今回のLancers Digital Academyにおいては、これぞという候補者にダイレクトスカウトをかけまくり、新規事業責任者を採用しました。
「株式会社自分」の世界観や「誰もが自分らしく才能を発揮して『誰かのプロ』になれる社会をつくる」という新たなビジョン、そして事業の構想を伝え続ける中で出会、共鳴したのが、現在の事業責任者である奥脇さんです。
新規事業を「最高の地獄」と考えて楽しむ奥脇さんとの議論の中で印象的だったのが、仲間集めをする社内プレゼンで彼が語っていた「新規事業とは、崖の上から飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ」という言葉。Linkedinの創業者であるリード・ホフマンからの引用です。
ビジョン実現への強い想いはもちろん大事だけれど、成功するかどうかわからない中での耐性やレジリエンスが必須。上記の言葉を聞いて、あらためて彼が「社内創業者」としてベストフィットだと確信した瞬間でもあります。
2. チーム:既存事業のエースをあてる
責任者が決まったら、次はチームづくり。「誰がやるか」の次は、「誰とやるか」。どんな事業も一人ではつくれない。最初は最小構成人数でスモールに回すことが重要になります。
個人的に、社内の新規事業においては「豪華客船型」と「いかだ型」があると思っているのですが、ブランドや顧客資産などを使う前者をとった場合、それなりに社内の理解や協力を仰げる仕組みをつくる必要が出てきます。
結論として、社内で議論を重ねた中で、既存事業のエースを新規事業へ送り込むことにしました。当然、既存事業のエースを引っこ抜くことは短期的な業績にはマイナスですが、そこは腹をくくるしかありません。
新規事業と既存事業では勝手も違う中で、どうしても最初はプロトコルが合わないこともあります。だから、初期はとにかくどういうサービスをつくるべきかの議論を重ねて、仕事のなかで関係性をつくることを重視しました。関係の質が思考の質を、行動の質を、そして結果の質をつくっていく。
結果的に、実現したい世界観や目指すべきビジョン、そのためのサービスのコンセプトをベースに、マーケットのことをよく知ったうえで、お互いが背中を預け合いながら、社内を効果的に動かすことができる、そんな「社内創業チーム」がいまできあがりつつあると思っています。
3. 意思決定:走りながら大胆に決める
責任者と最低限のチームが決まったら、あとはとにかく走る。「どうやるか」を考えるうえで、新規事業においてはアジャイルなアクションが最重要。とにかく、走りながら大胆な意思決定をしていく。
実際、事業立ち上げにいたるまでに、いくつもの大胆な意思決定を実際に行いました。「学習と仕事を連動させてランサーズの強みをいかす」ということだけは決まっていたけれど、それ以外については、サービスを形にしていく中で、あとからどんどん変えていきました。
サービスモデル:講師なしの「課題解決型」サービスにする
サービス価格:個別価格ではなく「全コース一律」の価格にする
ユーザー体験:ユーザーが交流しあう「メタバース上での体験」にする
たくさんの意思決定をしましたが、業界初のメタバース×学習のサービスにするということも、ほぼ3日で決めました。多少の誇張を承知でいうと、「よくない?」「やろう!」「どうすればできる?」「これでいこう!」というような感じです笑
ただし、大胆に意思決定するからこそ、逆に最悪のケースも考え抜いたうえで、プランBやCを準備して動き続けることに気を付けました。そういう心理的安全性をつくってこそ、大胆なチャレンジをすることができますよね。
社内の新規事業においては、そうしたチャレンジャーの背中を押すスポンサーとしての役割が重要になってきたりします。いわば、起業家にとってのVCのような役割。上記のようなプランBやプランCを常に考えつつ、一定のコントロールができる状態で大胆な意思決定を続けています。
ベンチャー・イン・ベンチャーの起業
新規事業は「最高」と「地獄」が表裏一体。ベンチャー・イン・ベンチャーのHARD THINGSだらけ。これまでいくつか新規事業を立ち上げて、何度も失敗を繰り返してきましたが、新たな学びもたくさんありました。
会議を分ける:新規事業は既存事業とはたてつけが違う。なので、一定の立ち上がりまでは、同じ枠組みで会話をしない方が良い。わかりやすい策として、会議を中心とした情報流通を分離することが重要。
指標を減らす:新規事業は不確実な要素がとにかく多い。したがって、初期はとにかくいろいろな指標を見たくなる。グッとこらえて、シンプルなユーザー指標にフォーカスさせることが大事。
熱量を増やす:とにかく新規事業はチームの熱量がすべて。たくさんのトラブルにみまわれる中で、それを乗り越え続ける熱量をいかにつくるか、その仕掛けをどれだけつくれるかが勝負。
「Lancers Digital Academy」が目指すのは、まだ誰も解決できていない社会課題の解決。個人の「学ぶ」と「稼ぐ」の有機的結合。学習履歴と仕事履歴のかけ算。それによる個人の信用の蓄積と可視化。
これらを通して、「誰もが自分らしく才能を発揮して『誰かのプロ』になれる」社会を実現し、個人の「株式会社自分」の価値を最大化できるようにしたい。ここから、最高のサービス体験を最速でたくさんの方に届けていきたいと考えています。
「第三創業期」はまだまだこれから
「株式会社自分」といった世界観をシャープにするためにビジョンをアップデートし、事業戦略発表会を実施したのが昨年の11月。ここで紹介した新規事業も、すべてはこの新たなビジョン実現のためです。
昨年末にも書いたのですが、ランサーズはここから「第三創業期」だと思っています。時代を、価値観を、大きく変えていきたい。「個人の時代」×「ランサーズ経済圏での働く・学ぶ+α」=「『株式会社自分』のマーケットの価値最大化」。
新たに掲げたビジョンの実現に向けて、ここからランサーズはまだまだ新規事業・新サービスをつくっていく予定です。
直近でアナウンスした、フリーランスコンサルタントのマッチングサービス「Professionals on Demand」を運営するワークスタイルラボ社のグループ化も、ここから大きく育てていきたい事業のうちの一つ。
※今回は文字数の関係で触れませんでしたが、あらためてこのあたりについても書きたいと思うので、ぜひM&Aなど興味ある方はこうご期待ください。
最後に。ランサーズの「第三創業期」を一緒にこれからつくっていただける仲間を、絶賛大募集中です。私たちのえがく「株式会社自分」の世界観やランサーズのこれからの展望に興味をもった方、ぜひお声がけくださいませ!
※最後までお読みいただきありがとうございます! ビジネス系、働き方系、ときにディープな偏愛系のコンテンツなど発信していますので、よければnoteフォローくださいませ~