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NORDIC COMBINED NEW WAVE #2 【山本侑弥】
2024年春、スキー・ノルディックコンバインド競技で更なる高みを目指す選手達は、それぞれの新天地へと進みました。今回は新社会人として2024-2025シーズンに挑む選手へインタビューを実施。
2人目に登場するのは、2023年に世界選手権を経験、新たな環境で更なる飛躍を目指す山本侑弥選手(SWCCスキークラブ)です。
◾️父と兄の背中を追いかけて
___コンバインド競技を始めたきっかけは何ですか?
私の父が元複合の選手でコーチをしていたことと、4歳上の兄(山本涼太)が先に始めていたことが一番のきっかけです。2人が練習に行く時にジャンプ台についていき、見学をしているうちに「自分も飛びたい」と思うようになりました。
物心ついたときからスキーを履き始めていて、小学3年生の時に、飯山のスモールヒルで初めてジャンプを飛びました。ジャンプもクロスカントリーもどちらも好きだった私は、どんどんコンバインド競技に熱中していきました。
___2023年に世界選手権に初めて出場するなど、国内外の大会で活躍されていると思います。今までで一番印象に残っている試合は?
大学3年生の時に出場した、ワールドカップで初めてポイントを獲得したRuka(ルカ)の試合が一番印象に残っています。
その試合まではワールドカップでポイントを獲得したことはありませんでしたが、夏場に初めてサマーグランプリに参加して手応えを感じていたり、試合前のトレーニングからジャンプの調子も良く、自分の中でもどこまで通用するかワクワクしながら臨めた試合でした。
後半のクロスカントリーで一緒に走ったGeiger(GER)やGraabak(NOR)は世界でもトップの選手達で、ついていくことに必死だけど、走ることに夢中でした。すごく楽しめた試合でしたし、結果は18位でワールドカップでのベストリザルトを更新することができて自信が深まりましたね。
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◾️新しいスキークラブが設立。会社からの声援を力に
___早稲田大学を卒業し、新しくSWCCスキークラブで競技を継続。今までスキー部がなかった企業かと思いますが、設立に至った経緯を教えてください。
社会人でも競技を続けたいと思い就職活動に励みましたが、なかなかうまくいかず悩んでいました。そんな時に、早稲田のスキー部OBの方が、今の所属先に私を紹介してくださったのがきっかけです。
私が所属している「SWCC株式会社」は、元々「昭和電線」という名前の会社でしたが、2023年に会社の統合により社名を変更しました。
社名を変更したことを機に、アスリート社員の採用によって会社の名前をPRしていきたいという企業の思いと、世界での活躍を目指して競技を継続していきたい私の思いが合致して、採用していただき、新しくスキー部が設立されることとなりました。
___なるほど。SWCCはどのような事業をしている会社ですか?
神奈川県の川崎市にある会社で、主に電線・ケーブル等の製造や加工や、家庭への電気の供給を行なうなど、みなさんのもとへ電気を届ける事業を行なっています。
電線っていうと地上にあるものを想像しますが、アスファルトの下を通っているケーブルや、自動車の中の部品などでも使われていて、目に見えないところでも日本の生活を支えています。
これはスポーツにも共通している部分があって、自分の目に見えていない部分で大会の開催や競技を支えてくれている方々が沢山いるんじゃないかと。
社員の方々も馴染みやすい方ばかりで、私が出社した時には「頑張ってね」「応援してるよ」といつも温かい声をかけてくださいます。
会社からは競技に集中できるサポートをいただいているので、本当に感謝しかないです。結果を出さなくてはいけないというプレッシャーはありますが、応援を力にして企業を宣伝できるよう頑張っていきたいです。
___兄(山本涼太選手)の存在について
兄が競技に対して努力してきた姿を、家族として一番身近で見てきましたし、尊敬する憧れの存在です。ワールドカップで表彰台に立ったり、オリンピックでメダルを獲得した姿は本当にすごいなと思います。
ただ、兄と同じ足跡をたどっていても意味がないんじゃないかと。私が競技を続けていく中で兄を越えていくなら、同じことをしているだけでは越えていけないですし。
そういう意味では、社会人になって兄とは別の、新しい道を歩み出したことは、自分にとって新しいチャンスになるかなと思っています。
◾️変化を恐れず挑戦し続ける
___自分の強みだと思うところは?
一つは"現状に慢心せず、常に挑戦できる"ところです。現状維持を続けていくのがあまり好きではないので、手応えを持ってシーズンを終えても、次のシーズンには全部を変えられるというか。良くも悪くも今までの自分に固執せず、新しいことを取り入れやすいと思います。
もう一つは、"選手の動きを真似る"ことが得意ですね。ジャンプでもクロスカントリーでも上手な選手の動きを見て感じたことを、自分の身体に落とし込んで表現できるところは、人よりも長けているかなと思います。
___海外遠征をしている中で、好きな国や食事はありますか?
スロベニアが好きですね。11月にPlanica(プラニッツァ)で合宿をしたんですけど、周りの山々の迫力がすごくて。日々変わる山の表情を毎日見るのが楽しみで、気候も過ごしやすかったです。トレーニングをするときも、それ以外の時間でもゆっくりと時間が流れていく気がして、色々なことを焦らず取り組める感覚が好きでした。
食事はイタリアの食事が好きです。これは先入観もあるかもしれませんが、本場のパスタはやっぱり違うなと。笑
でもなんだかんだで、日本の食事が一番好きですね。
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◾️2024-2025シーズンの目標
___開幕戦を振り返って
Rukaで行われたコンチネンタルカップが開幕戦となりました。自分で点数をつけるとすれば40点ですね。ジャンプは夏場から良い感覚を続けていたのですが、秋に少しオーバートレーニング気味でコンディションを落としてしまって。休養期間を経てトレーニングを再開し、ある程度の自信を持って開幕戦に臨みましたが、ジャンプもクロスカントリーも力を出しきれなかったかなと思います。
ただ、周りの海外の選手達のレベルが明らかに上がっているのを肌感で感じました。自分が過去に表彰台に上がった時よりも全体のレベルが上がってきていて、日本チームとしても底上げが必要だと感じています。
___今シーズンの目標は?
まずはワールドカップの総合ランキングで55位以内に入ることです。今シーズンからオリンピックの選考がかかってきますし、ワールドランキングで55位以内に入らないと、日本の出場枠が減ってしまうので。自分のためにもチームのためにも、目標というか絶対条件かなと思います。
また今シーズンは世界選手権もあるので、代表メンバーに絡めるような結果を出していきたいです。
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◆ 山本 侑弥(やまもと ゆうや)
2001年11月生まれ。長野県木島平村出身。
早稲田大学スポーツ科学部卒。SWCCスキークラブ所属。
小学3年生から父と兄の影響でジャンプを始める。
大学2年の全日本学生スキー選手権大会でスペシャルジャンプとコンバインドの2冠を達成。2022年にルカで行われたW杯で自己最高の18位を記録。
2023年世界選手権代表。
最近気になっているものはテレマークスキー。
Instagram:@yuya.yamamoto_
所属先Instagram:SWCCスキー部
写真:本人提供
〈 NORDIC COMBINED NEW WAVE 〉
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