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NORDIC COMBINED NEW WAVE #3 【千葉悠希】
2024年春、スキー・ノルディックコンバインド競技で更なる高みを目指す選手達は、それぞれの新天地へと進みました。今回は新社会人として2024-2025シーズンに挑む選手へインタビューを実施。
3人目は、趣味は競馬観戦のウマ好き、家業の仕事を手伝いながら競技を続ける道を選択した千葉悠希選手(サッポロノルディックスキークラブ)です。
◾️いつのまにか始まったスキー人生
___コンバインド競技を始めたきっかけは何ですか?
私の父親が大倉山で行われるスキージャンプの大会で放送の仕事をしていて、小さい頃からよく一緒にジャンプ台に行ってました。小学2年生の時に、荒井山のスキージャンプ体験会に連れて行かれて、札幌ジャンプスポーツ少年団に入団した(させられた)のが小学3年生の春です。
正直に言うと最初は嫌で、初めてジャンプを飛ぶまでに2ヶ月くらいかかりましたし、怖くて飛べない日も沢山ありました。入団した時の同級生に、大井駿(元慶應義塾大学)、楢木遊太(元札幌大学)、二階堂蓮(日本ビールスキー部)がいて、彼らと遊ぶことが楽しくて、ジャンプ台に行っていましたね。
荒井山のジャンプ台近くにある盤渓のスキー場にクロスカントリーコースがあったこともあり、コンバインドも並行して取り組むようになりました。
◾️コロナ禍で出場した初めての国際舞台
___今までで一番印象に残っている試合を教えてください。
大学1年生の時に出場したLahti(ラハティ)での世界ジュニア選手権です。
Lahtiはスキーのメッカと呼ばれるほど、ノルディックスキーが盛んな街ですし、初めて出場する国際舞台の雰囲気を楽しみにしていたのですが、当時はコロナ禍の真っ只中でした。試合当日の競技会場には観客が誰もいない状況で、想像していた雰囲気とのギャップに驚きました。
その時はジャンプとクロスカントリーの調子もまずまず良くて、個人戦で30位以内に入ることを目標としていましたが、結果は僅差の31位で…
初めての海外の試合に出場した楽しさよりも、会場の雰囲気や目標としていた成績に届かなかった悔しさで、苦い思い出となったことが印象に残っています。
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◾️競技人生のどん底からもう一度スキーに向き合いたい
___日本大学を卒業後、競技を続けていくか迷っていたとお聞きしました。社会人でも続けたいと思った理由について聞かせてください。
私の競技人生を振り返ると、大学2年生の頃までは本気でスキーに打ち込めていました。全日本の指定選手に選ばれていたこともありましたし、世界での活躍を目指して競技に取り組んでいました。
しかし、大学3年生の頃から体調不良や精神的に気持ちが落ち込んでしまい、競技に対する情熱が徐々に失われていきました。まさに競技人生のどん底でしたね。このまま卒業してスキーは終わりかなと考えていた時に、自分より下の世代の中高生の試合をサポートする機会があって。その時に一生懸命に取り組んでいる選手達の姿を見た時に、もう一度競技に向き合いたいなと思って、スキーを続けることを選択しました。
また、私たちの世代は競技を続けている選手が多く、幼い頃から一緒に戦ってきた彼らとまだ一緒にスキーをしたいと思ったのも理由の一つです。
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___家業との両立で苦労する場面などはありますか?
実家が電気関係の仕事を行なっていて、将来的には自分が家業を継いでいきたいなと考えています。資格が必要な職業になるので、今は勉強をしながら、現場の仕事にも取り組んでいます。
仕事と並行していることで、クロスカントリーの練習量が圧倒的に不足しているなとは感じています。秋に鹿角で行われたコンバインドの試合に出場したときに、とにかく走れなくて。ジャンプは感覚的な部分が大きく、クロスカントリーは練習量をしっかり確保することが大事だなと改めて感じました。
___自分の強みだと思うところは?
試合でメンタルのコントロールができるところは自分の強みです。競技人生のどん底を経験したからこそ、今は気持ちの浮き沈みが少なく、多少の悪条件や試合の緊張感にも動じないでいれるかな。精神面が安定してきてからは、ジャンプで大きく失敗することもなくなりましたし、自分の持てる力を試合で出せているなと思います。
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◾️競技者+次世代の選手育成
___今シーズン、注目している選手はいますか?
ジャンプで注目しているのは二階堂蓮くん(日本ビールスキー部)です。私たちの同期の中でもW杯で一番活躍していますし、今シーズンは表彰台に立つ姿が見れるんじゃないかと。
コンバインドだと、谷地宙さん(日本航空株式会社)ですね。宙さんは競技に対する姿勢が本当にストイックな方で見習う部分も多く、夏から一緒にトレーニングをする機会が多かったこともあり、日本チームの中でも特に注目しています。
あとは札幌ジャンプスポーツ少年団の後輩の姫野蒼太選手にも注目しています。北海道のジュニア選手の指導で携わる機会が多く、特にジャンプが抜群に上手で、中学生離れした実力があると思いますね。
___コーチとしてもジュニア選手の指導に関わっているんですね。
競技を続けていくにあたって、自分の成績を求めていくこともそうですが、これから活躍していく次世代の選手達の育成にも携わっていければなと考えています。
北海道でも選手数が年々減少してきていているのは感じていますし、まだ自分の中で詳しい考えは纏まっていませんが、コンバインド競技の普及に関する活動も少しずつ行なっていきたいと思っています。
◾️2024-2025シーズンの目標
___開幕戦を振り返って
名寄での2戦が開幕戦となりました。冬に入ってからクロスカントリーのトレーニングを充分に積めたこともあり、試合に向けて順調に調整できていたところで、大会直前にインフルエンザになり体調を崩してしまいました。
1戦目は前半で良いジャンプが出来て、後半のクロスカントリーでも入賞圏内でレースを進めていましたが、最終周の勝負所で足の筋肉を攣ってしまい、DNF(途中棄権)となりました。おそらく体調を崩した影響で体の水分が抜けていたんだと思います。
2戦目はジャンプで少しミスをしてしまいましたが、クロスカントリーで順位を上げることができ、走りの感覚は良くなってきています。
朝日町で行われた試合では優勝することができ、試合を重ねるごとに調子を上げている感じはしますね。
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___今シーズンの目標は?
一つは白馬で行われる全日本選手権で表彰台に上がること。もう一つは伊藤杯ノルディックコンバインド競技大会で優勝することです。伊藤杯は所属先のサッポロノルディックスキークラブが大きく関わっている試合なので、地元の札幌で良い姿を見せたいなと思っています。
◆ 千葉 悠希(ちば ゆうき)
2001年4月生まれ。北海道札幌市出身。
日本大学政治経済学部卒。サッポロノルディックスキークラブ所属。
荒井山で行われていたスキージャンプ体験会への参加を機に競技を始める。
高校は札幌を離れて、スキーの強豪校である下川商業高校に進学し、3年時に全国高等学校選抜スキー大会で優勝を飾る。
2021年世界ジュニア選手権代表。
趣味は競馬観戦で、好きな競走馬は「エフフォーリア」。
写真:本人提供
〈 NORDIC COMBINED NEW WAVE 〉
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