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NORDIC COMBINED NEW WAVE #4 【畔上沙那】

2024年春、スキー・ノルディックコンバインド競技で更なる高みを目指す選手達は、それぞれの新天地へと進みました。今回は新社会人として2024-2025シーズンに挑む選手へインタビューを実施。
4人目は、国内コンバインド大会では女子の部創設時から出場し、日本代表として世界を転戦する畔上姉弟の双子の姉、畔上沙那選手(岐阜日野自動車SC)です。



___コンバインド競技を始めたきっかけは何ですか?

小学3年生の時に、野沢温泉で開かれていた「ミニミニジャンプ大会」に出場したことがジャンプを飛び始めたきっかけです。8m級くらいの小さな台をアルペンスキーで飛ぶ大会だったんですけど、参加した子にはお菓子がもらえるので、そのお菓子が目当てで大会に出場しました。笑
飛んでみて、怖さよりも楽しいという感覚の方が大きかったですね。

実は最初はクロスカントリースキーをやりたいと思っていました。小学4年生の時にスキークラブに入部届を出すときも、最初は「クロス部」で提出したんですよ。でも弟の祥吾は「ジャンプ部」で提出してるし、私の親もジャンプをしてほしかったみたいで、考え直した結果、「ジャンプ部」に書き直して再提出しました。私の祖父と父が元コンバインド選手ということもあって、自然にコンバインドにも取り組むようになりました。


■女子コンバインドの先駆者として

___国内の試合でコンバインドの女子の部が本格的に行われ始めた頃から、第一線で活躍されていると思います。近年では女子のコンバインド選手も増えてきていますね。

そうですね。私が中学生の時に、初めて全日本選手権で女子の部が行われることとなって、当時の参加数は私を含めて3人でした。そこから徐々に人数も増えてきて、ワールドカップや世界選手権の正式種目としても行われるようになってきました。
年々、女子コンバインドのレベルも上がってきているように感じています。今はワールドカップではノルウェー勢が上位に来ることが多いですが、各国からどんどん新しい選手が出てきているので、その波に乗り遅れないように成長していかないといけないなと思います。

ワールドカップを主戦場とする畔上選手

___今までで一番印象に残っている試合はありますか?

一番印象に残っているのは、2020年にドイツのOberwiesenthal(オーバーヴィーゼンタール)で開催された世界ジュニア選手権です。その時の遠征が初めての海外遠征で、自分の実力がどれくらい世界で通用するのか不安なところがありました。
でも個人戦で6位に入賞することができて、すごく嬉しかったことと、「私、意外といけるじゃん」って自信に繋がった試合でしたね。あとはそれまで国内の試合にしか出場したことがなかったので、海外の選手達と勝負できたことがすごく楽しかったことを鮮明に覚えています。


■「仕事」と「競技」の両立で

___日本体育大学を卒業して、岐阜日野自動車SCに所属。社会人になってみての感想はいかがですか?

社会人でも競技を続けたいと考えていた時に、岐阜県の方から今の会社を紹介していただきました。私が勤務している奥飛観光開発株式会社では夏場は午前中に出勤して仕事をして、午後はトレーニングの時間に当てさせていただいています。10月からシーズンが終わるまでの期間は競技に専念させていただいて、岐阜日野自動車SCとして試合に出場しています。
大学生の頃と比べると時間の使い方がうまくなった気がしますね。仕事と競技の両立があるからこそ、空いた時間をうまく活用したり、スイッチのオンとオフができるようになったと思います。

新潟県妙高市でのトレーニング

___ちなみに、初任給はどう使われましたか?

初任給で両親へ誕生日プレゼントを送りました。両親とも喜んでくれましたが、祥吾には何も相談せずにプレゼントを渡していたので、後日祥吾からも両親にプレゼントを渡したみたいです。笑


■双子で目指す世界の舞台

___一緒に競技をしている祥吾の存在について

スキー界の中でも、男女の双子で競技を続けている選手は少ないのではないでしょうか。お互いの成績を意識することはあまりありませんが、祥吾が良い結果を出したときは、自分にも刺激になりますし、私も頑張ろうという気持ちになりますね。
今回初めて2人で一緒にワールドカップに出場できて、会場が一緒になることが多かったんですけど、いつもどおりの自分でいられる安心感がありました。姉弟なので何気ない話ができる祥吾がいると助かりますね。

いつも笑顔の畔上姉弟

___自分の強みだと思うところは?

良くも悪くも考えすぎないところですね。ジャンプもクロスカントリーも頭で考えすぎないで、体で自然に動き出せるところは良いところなのかなと思います。思うような結果が出なくて落ち込んだ時も、ナーバスになりすぎず、次の試合への切り替えは早くできる方ですね。
逆にあまり考えない分、周りに流されやすいところもあるので、強みでもあり自分の弱みでもあるのかなと思います。

___今シーズン注目している選手はいますか?

女子ジャンプの一戸くる実 選手(CHINTAIスキークラブ)です。今シーズンはワールドカップでもグングン成績を伸ばしているなと思いますし、いつも笑顔で周りに元気をくれるような存在です。考え方もしっかりしていて、芯がある選手だなと思います。

あと、仲の良い選手は宮崎彩音 選手(早稲田大学)です。同じ野沢温泉出身で小さい頃からずっと一緒に競技を続けてきました。私が前十字靭帯の怪我をしたときに、彼女も同じタイミングで怪我をしてしまって。お互いを励まし合いながら、一緒にリハビリに取り組んでいた期間は、特に大きな支えになっていました。プライベートでも一緒に遊びに行くことが多くて、私にとっては本当に相棒のような存在です。


■2024/2025シーズンの目標

___開幕戦を振り返って

Lillehammer(リレハンメル)で行われた開幕戦で、W杯のベストリザルトを更新することができ、良いスタートが切れたんじゃないかなと思います。
社会人1年目で今までとは環境が変わった中でトレーニングを積んできたので、少し不安を抱えながらのシーズンインでしたが、開幕戦からベストリザルトを出せたことで、夏場のトレーニングは間違ってなかったんだなという自信にも繋がりました。その後のRamsau(ラムソウ)で良いパフォーマンスを出せなかったことは反省点ではありますが、全体的に良い感覚を持って試合に臨めています。

___今シーズンの目標を聞かせてください。

今シーズンの目標は世界選手権でトップテンに入ることです。ノルウェーのThrondheim(トロンハイム)で開催されるんですけど、まだ行ったことのない会場なので、初めてのジャンプ台やクロカンコースも楽しみにしています。

今現在、女子のコンバインドはオリンピック種目になっていないので、一番のビッグイベントは世界選手権になります。その舞台で、最終的にはメダルを獲得することを目標として頑張っていきたいと思います。


◆ 畔上 沙那(あぜがみ さな)
2001年11月生まれ。長野県野沢温泉村出身。
日本体育大学体育学部卒。岐阜日野自動車SC所属。
地元で行われたジャンプ大会に参加したことがきっかけで競技を始める。
2020年世界ジュニア選手権で個人戦6位入賞。
2021年に女子種目で初開催となった世界選手権に出場し、個人戦で12位を記録。W杯の自己最高位は2024年リレハンメル大会の12位。
趣味はカラオケで、好きなアーティストは「back number」

Instagram:@sana.azgm
所属先Facebook:岐阜日野自動車スキークラブ

写真:本人提供

〈 NORDIC COMBINED NEW WAVE 〉 
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