デンマークの企業で見つけた日本との接点(その1)
デンマーク4日目、国会議事堂訪問前に、コペンハーゲン市内にある企業を訪問した。
最初に訪れたのがデザインオフィス SLAATTO。
ここは様々なデザイナー10人が集まるシェアオフィス。
デンマークでは、デザイナーが企業に所属して仕事をするのではなく、それぞれが独立して企業と契約し、プロジェクトベースで仕事をする。デザイナーの90%が同様の働き方をしているという。ここでデザイナーから話を聞いた。
デザインはカルチャーの影響が大きい。
デンマークは地下資源が少ない。だからクリエイティビティこそが最大の資源だという。あとは子供。社会全体で子どもを見ていく、その環境が大事。
コペンハーゲンの街はかつて2人の建築家が「自転車の街でいく」と決めたという。自転車は貧富に関係なく利用できる。福祉国家であるデンマークは格差が少なく、リッチであるということに対するステイタスがない。だからこそ「自転車の街で行こう」というスローガンに素直に乗った市民意識があるのだそうだ。
加えて、見せびらかす文化ではなく、誠実さ、実用性、トレンドよりも何世代も長持ちできることを大事にしている。
デザイン、ビジュアル、安全性全てを満たすデザインという例で、エアバッグ式のヘルメットを紹介してくれた。首に巻くだけの、マフラーのようなものだが、これがいざという時にエアバックのようにボン!と膨らむらしい。
一見すると通常のヘルメットの方が安全そうに見えるが、安全性は6倍もあるという。しかも、頭に載せないのでヘアースタイルも維持できる。確かに理にかなっている。
次にライト・照明について。
ライトを考えるときに、明るいだけでなく雰囲気、心地よさを大事にしている。炎のような。太陽のような。
原則として、ランプの直光は目に良くない。かつて、ポールヘニングセンが、目に当たらないデザインのライトを作った。目的物は程よく明るくなるが、目には直接当たらない。北欧デザインのライトは確かにどれも目に優しい。
話してくれたデザイナーの上記の作品、宇宙、巻き貝の渦を参考にしたという。自然のデザインから得られる知恵は大きい。
そして照明の配置について。
森の光のような心地よいライティング。強弱がある方が覚醒し、集中できる。一箇所の強い光で部屋を明るくするのでなく、照明を部屋の色々なところに配置し、広がりを出す。
そして、今回の話で最も驚いたのが「陰翳礼讃」だ。
デンマークのデザイナーは全員学校の課題図書で、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を読むという。この本の陰影の考え方がデンマークの照明デザインには不可欠なのだという。
日本人もあまり知らないこの本が、日本で人気のデンマークデザインの要素になっていることに驚き、また、日本人が親しみを持ってデンマークデザインを求めるのも、大いに納得した。我々日本人には、もともと心地よい陰影を求めるセンスがあり、現代の生活で感じることが難しくなっているそのセンスを北欧・デンマークデザインから感じているのかもしれない。
「陰翳礼讃」は僕自身最も好きな本のうちの1つであり、生活の中に取り入れたい視点、取り入れない世の中の捉え方であっただけに、グッと来るものがあった。
デザイナーという職業について。
彼の表現では、「ジョーカーのような存在」だという。
社内には無い視点や、社内からは出てこない視点を提案することが仕事妥当。もちろん、クライアントをリスペクトすることは大事。その上で批判的な目で指摘、質問していくことが大切。みんなが求めているものを提供するのが仕事ではなく、本来やるべきなのは、人々が必要とするものを提供すること。
どんな状況、人、生き方、文化、DNAに対してもリスペクトが一番大事。その上で、個人としてではなく、「プロフェッショナル」として伝えていく。誰が言った、ではなく「何を提示していくか」
もちろん、そこには対等に言い合えるという文化的な背景がある。しかし、このスタンスは文化的背景を前提とせずとも、私自身行政書士・コンサルタントとしてのありたい姿であると感じた。
「そのために必要なインプットは?」の質問に、彼は一言
「コモンセンス(常識)」
とだけ答えた。
我々のコモンセンスを改めて定義し、奥深くから理解し、どうありたいかというぶれない軸の大切さを感じた。
まずは、今一度自分の中の「陰翳礼讃」の世界を深く理解することから始めようと思う。
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