グラミー賞で最優秀新人賞を獲得! ゴスペル一家の血筋をひいた22歳の新人ジャズシンガー「サマラ・ジョイ」
J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。
■グラミー新人賞を受賞したジャズ・ヴォーカルの新星
2月9日(木)のオンエアでは、先日のグラミー賞で、見事最優秀新人賞を獲得したジャズ界の新星「サマラ・ジョイ」を大特集。
ゲストに音楽評論家の柳樂光隆さんを迎え、色々と話を伺った。
1999年生まれの22歳。NYブロンクスで生まれ育ち、祖父母は有名ゴスペルグルーブ「The Savettes」のメンバーで、父親もゴスペル・シンガーという音楽一家に育つ。
NYフォーダム校でジャズを歌い始め、その類い稀な声で数々のコンペティションで受賞、州立大時に上記賞を受賞する。
既にクリスチャン・マクブライド、ジョン・ファディス他とも共演を重ねつつ多くのライヴを披露して話題となっている。
あっこゴリラ:NYタイムズが「カスタードのようにリッチな歌声」と絶賛していましたが、アメリカなどではすでにブレイクしていた感じですか?
柳樂:2021年のデビュー作『Samara Joy』のリリースの時点で話題になっていました。デビュー作のレーベルこそイギリスのインディー・レーベルですが、近年はイギリスのジャズ・レーベルがアメリカの有望なアーティストをリリースしているので、彼女もその一人だと思います。
あっこゴリラ:NYのブロンクス出身ということですが、NYの若い人たちの間でもジャズは盛り上がっているんですか?
柳樂:近年、彼女と同世代の20代前半~半ばのジャズミュージシャンが次々に名門レーベルからデビューしていて高い評価を受けているので、若くて才能豊かなミュージシャンは増えていると思います。
あっこゴリラ:かなり盛り上がっている感じですね。
柳樂:その中で一番先に成功したのが、サマラ・ジョイって感じですね。
あっこゴリラ:すごい渋いジャズを歌っているのに、TikTokでバズったっていうのもすごいですよね。やっぱり知られることになった大きな理由は、TikTokだった?
柳樂:そうですね。でももともとジャズシーンですごい人が出てきたっていうのは言われていて、例えば日本でも 30代くらいのわりと若い人がやっているレコードをかけているお店とかに飲みに行くとかかっていたりするので、そういう人たちはみんなチェックしていたみたいですね。
あっこゴリラ:そうなんだ~。
柳樂:TikTokについて彼女は、「すごく遅く始めたんだけど、やってみたらウケちゃった」みたいなことを言ってました(笑)。
あっこゴリラ:ここで一曲、デビュー当時の曲をかけたいと思うのですが……。
柳樂:デビュー作の一曲目に収録されている『Stardust』をかけたいと思います。 1927年に初めて録音された曲でナット・キング・コールやルイ・アームストロングのバージョンが有名ですが、その100年近く前の名曲をデビュー作の一曲目に入れています。
彼女の最初の一声が聴こえた瞬間に「あ、これはやばい声だ…」って多くの人が思ったはずです。
■ひと声発するだけで特別なのがわかる
先日のグラミー賞で主要4部門の一つ・最優秀新人賞を獲得して、世界に一気に名前が広がったサマラ・ジョイ。引き続き、柳樂さんに話を伺った。
あっこゴリラ:柳樂さんは、受賞すると思っていましたか?
柳樂:いや~、可能性はあるとは思っていましたが、実際受賞したらびっくりしましたね。
あっこゴリラ:難しいと思うんですが、彼女の歌声で最も素晴らしいと思うところって?
柳樂:もちろん技術が高くて尋常じゃないレベルなんですけど、個人的にはやっぱり声のキャラクターがそもそもすごいというのが一番の特徴だと思います。
声が個性的で、ひと声発するだけで特別なのがわかるし、すごくスモーキーな声ですよね。
あっこゴリラ:確かに。
柳樂:喋っただけですごくムードがあるというか。
オールドスクールなジャズ・ヴォーカルならではのウェットで重みのあるところも残しつつ、一方で今のリスナーにも届きそうなサラッとした軽さも感じられて、古典的でノスタルジックなんだけど、なんか聴けちゃうって感じがします。
■サマラ・ジョイの魅力を知るならこの3曲
ここからは、「サマラ・ジョイの魅力を知るならこの3曲」というテーマで、柳樂さんおすすめの3曲を紹介した。
あっこゴリラ:まず一曲目は?
柳樂:『Two Hearts(Lawns)』です。
あっこゴリラ:この曲は?
柳樂:今年のグラミー賞でサマラは2つの受賞作に関わっていますが、実はもう一つ関わっている賞があって。
それが最優秀ジャズ・インストロメンタル・アルバムを受賞した女性ドラマーのテリ・リン・キャリントンの『New Standards Vol.1』です。この曲は、その収録曲になります。
あっこゴリラ:ええ~! すごい!
柳樂:ジャズの長い歴史の中で女性が作曲した楽曲の中から新しいスタンダードを見つけようというプロジェクトの一環のアルバムです。ここでサマラは、作曲家のピアニストのカーラ・ブレイが1987年に録音した曲に歌詞を付けて歌っています。
あっこゴリラ:続いては?
柳樂:ギタリストのパスクァーレ・グラッソのアルバム『Be-Bop』に収録されている『I'm in a Mess』です。
あっこゴリラ:どんな曲なんですか?
柳樂:パット・メセニーにも絶賛されて話題になったギタリストのパスクァーレ・グラッソとの共演曲です。実はパット・メセニーは、サマラの大学の先生なんです。
あっこゴリラ:そうなんだ~!
柳樂:このアルバム『Be-Bop』というタイトルですが、1940年代に生まれた「ビバップ」というジャズのスタイルをテーマにしたアルバムになっています。
そこでサマラは、ジャズ・ヴォーカルの中ではすごくマニアックなビバップ・ヴォーカルと呼ばれたスタイルで知られるジョー・キャロルというヴォーカリストの曲を選んでいます。
あっこゴリラ:へえ~。
柳樂:そういう曲をサマラが見つけてきて、パスクァーレに「これ歌おう」って言って録音したのがこの曲らしいです。なんで若いのにそんな曲を知ってるの? って感じのマニアックな曲ですね。
あっこゴリラ:最後は?
柳樂:実は新しめのカバー曲もやっていて、同世代のピアニストのジュリアス・ロドリゲスのアルバム『Let Sound Tell All』に収録されている『In Heaven』です。
あっこゴリラ:どんな曲なんですか?
柳樂:ジャズ・ヴォーカルのグレゴリー・ポーターが2016年にリリースしたグラミー受賞作『Take Me To The Alley』に収録されていた曲です。
2016年なのですごく新しい曲のカバーなのに、サマラ・ジョイが歌うと何十年も前からあったような曲にしか聴こえないっていう(笑)。
あっこゴリラ:すべてをクラシック化させてしまう、そういうマジックがかけられてしまうのかもしれないですね、サマラ・ジョイは。
PC・スマホアプリ『radiko.jpプレミアム』(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は『radiko.jpタイムフリー』機能で聴き直せます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?