時代の変化により“詰める文化”が台頭!? トラックメイカーたちはどう適応しているのか…
J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。
1月13日(木)のオンエアでは、「トラックメイカーは生き残れるのか? 」をテーマにお届け。
■時代の変化により「詰める文化」が台頭
EDM全盛期は、数年前。サビの盛り上がりドロップの長さが人々を高揚させたが、世はTiKTok時代。より短くインパクトのあるものが指示されている。そんななか、トラックメイカーたちの変化に注目した。
ゲストには、日本を代表するトラックメイカーの一人、YaffleとTOKA所属の若手プロデューサー/トラックメイカー、Rikimaru Sakuragiが登場。
あっこゴリラ:そもそも「トラックメイカーは生き残れるのか? 」と思うことありますか?
Yaffle:いろんな意味であると思いますね。トラックメイカーといっても、アーティストのプロデューサーとしてのトラックメイカーと、今回のテーマでいう自分名義で出すトラックメイカーの二つがありますよね。
あっこゴリラ:うんうん。
Yaffle:トラックメイカーが、フィーチャリングシンガーを呼んで自身の作品を発表して総合チャートを席巻していた時代が、EDMムーブメントと同じタイミングだったと思うんです。その前だとそういう記憶はあまりなくて。Sakuragi:確かに。
Yaffle:トラックメイカーが出てきたタイミングでEDMが流行って、それが終わったというと語弊があるかもしれないけど、違うチャプターに入ったというか、トラックメイカーの出す曲がジャンルに依存してたのか、それともこの先にやりようがあるのかを考えるタイミングになったと思います。
あっこゴリラ:EDM全盛期のドロップについても聞きたいんですけど、やっぱりドロップ長かった?
Yaffle:そうですね。トラックメイカーが自分名義で曲を出す場合、シンガーが歌ってないイントロやアウトロ、間奏は自分の色を出すところではあるけど、最近は間奏を入れすぎた曲を聴くと昔っぽいなって冷めた感じで見てしまうんですよね。>
あっこゴリラ:なるほど~。
Yaffle:じゃあ、昔、有名だったトラックメイカーは今、どうやっているんだろうといろいろ探してみても、今っぽい間奏ってなくて。そもそも間奏が今っぽくないから、参考にすべき間奏がないんですよね。
あっこゴリラ:今はYouTubeとかTikTokが主流だから、テレビがスローモーションに感じるともいいますよね。すぐ次の情報が知りたくなっているから、間奏もいらないってなってるのかな。
Yaffle:丁寧な振りとかもいらないから、早く本題に入ってほしいみたいな(笑)。
ここで、ドロップのわかりやすい曲として2012年にリリースしたZeddの『Clarity』を紹介した。
Sakuragi:このサウンド、懐かしい。めちゃくちゃ分かりやすいですね。
あっこゴリラ:振りも長いし、ぶち上がった後のループも長いっていう。
Yaffle:ポップス化というか、普段あまりハウスミュージックを聴かない人たちにも聴いてもらいたくて聴きやすくしてるんですけど、この曲の本題は長い間奏なんですよね。ここがダンスミュージックの一番おいしいところなので、「ドロップ」ってよく言ったりします。
あっこゴリラ:なるほど~。同じくZeddの2020年リリースの最新曲『Inside Out』と聴き比べてみると、ドロップが明らかに短くなっていますよね。
Sakuragi:だいぶ短くなってますよね。
あっこゴリラ:最近、ドロップがないダンスミュージックが多い理由って、みんな早く本題に入ろうという傾向からなんですかね。
Yaffle:たぶんドロップがあるとかないとかではなくて、曲の形式というかフォーマットというか、ドロップが長めにあること自体に時代感を感じてしまうっていうのはあるかもしれないですね。
あっこゴリラ:確かに。
Yaffle:いいギターソロでもひずんだギターソロが入ってると古く感じるみたいな。
あっこゴリラ:あの時代にめちゃくちゃ流行ったからこそ、今それをやると古く感じるかもしれないですね。
Yaffleは、このようなドロップの傾向を「詰める文化」と表現している。
Yaffle:無駄なところって言ったら語弊があるかもしれないけど、歌じゃないところをどんどんギュッと消していかないと、ずっと歌だからライブとかで歌えなくなりますよね。最近は、歌手の人とかラッパーも大変ですよね。
あっこゴリラ:超大変です! 踊ってたいけど、次すぐ歌だしって(笑)。最近の曲で、その傾向が一番出ているものは?
Yaffle:その傾向がめちゃくちゃ分かりやすい最たる例が、The Kid RALOIとJustin Bieberの『Stay』ですね。
あっこゴリラ:どんなところが今っぽいですか?
Yaffle:まず2分20秒と短いこと。ただ、曲と歌はしっかり入っているから、聴くとたっぷり歌ものを聴いたなって思うけど、時計を見ると2分しかたってないっていう。
■トラックメイカーは、時代にどう適応しているのか
「詰める文化」が台頭してきた中、トラックメイカーはどのように変化しているのだろうか。
Yaffle:大きくわけて2パターンあると思っていて、一つは、変化は関係ないっていうパターン。もう一つはEDMが流行ったときはポップスに寄ったけど、今はもともといた自分のシーンに戻るパターン。DisclosureとかMartin Garrixとか。
あっこゴリラ:なるほど~。
Yaffle:ボーカルをポップスみたいにフィーチャーするのをやめて、ちょっと使ったり、そもそも使わなかったり。そういう人たちもいるし、トレンドにフォローして今まで自分たちが作ったスタイルを変えて、今っぽいサウンドに合わせていくパターンもあります。AlessoとかSwedish House Mafiaとか。
あっこゴリラ:もともといた自分のシーンに戻るパターンの人たちは、この流れにどう適応してるんですか?
Yaffle:適応するというよりは、自分のスタイルを守るって感じですね。
Sakuragi:原点回帰ですね。
あっこゴリラ:トラックメイカーたちも、こんな風に言われたらなんか恥ずかしいですよね(笑)。
Yaffle:はじめは邪心なくやってチャートに上り、ポップスとして認知をされるようになってきて、ポップス自体が変わっていくときに、の波にいようとするのか、そのときはそのときでって行くのか。でも、どっちもカッコいいですよね。
Sakuragi:僕は、けっこう無意識なパターンもあるかなって思っていて。そのときの気分によって取り入れたサウンドが、時代を振り返ったときにたまたまその時代を象徴するような音になっていることもあるかもしれないですよね。
■これからの時代を築いていくDJ /トラックメイカー
ここからは、これからの時代を築いていくDJ /トラックメイカーを紹介。
まずは、YaffleがSKRILLEXを挙げた。
あっこゴリラ:Yaffleさんは、以前もSKRILLEXを挙げてくれてましたよね。
Yaffle:EDM全盛期もチャートの頂点に上って、そこから変化させていって。それがシーンと無関係でもないっていうのが、やっぱりすごいなって思いますね。
あっこゴリラ:私も、SKRILLEXの新譜聴いてびっくりしましたもん! 「これ、SKRILLEX!? 」って。
Yaffle:全然違いますよね。明らかにレイドバックしていたりとか、4つ打ちっぽいのがなくなってきて、代名詞だったグロウルベースを使うのをやめて、どんどんHIP HOPやR&Bに行きつつも、でもなんかちょっと違うんですよね。ビート感がそれらよりも意図的に強かったりとかして、聴くと最近のSKRILLEXっぽいなってすぐ分かったりして。
続いて、Sakuragiにも注目トラックメイカーを教えてもらった。
あっこゴリラ:Sakuragiさん注目のトラックメイカーは?
Sakuragi:Mogliiです。まさに2012年、2013年くらいのEDMからちょっと抜けた今っぽいEDMというか。あんまり展開がはっきりしていないというか、セクションがヌルっと移行していく感じで、それが現代っぽいアプローチかなと思います。あとは一部、EDMからHIP HOPへの接近みたいなところはありますね。
Yaffle:やっぱりセクション間がAメロ終わってBメロ、サビの間が派手に切り替わると、ちょっと昔っぽいなって感じますよね。
Sakuragi:そうですね。春夏秋冬があまり切り替わらない感じというか(笑)。
Yaffle:そうそう(笑)。
あっこゴリラ:ちなみに、日本で注目するトラックメイカーはいますか?
Yaffle:KMです。『Stay 』という曲では間奏ではなくて、後奏に自分の色を出してるんですよね。
Sakuragi:最後にたたみ込む感じですよね(笑)。
Yaffle:通して聴くとプロデューサーの曲だなって感じもします。
最後に、YaffleとSakuragiにトラックメイカーにとって過渡期となるこれからについて訊いた。
Yaffle:EDMが作った正解のフォーマットが崩れて、今みんな模索している時期なのかなって。Rikimaruくんもそうだけど、どういうスタイルが自分にとっても社会にとっても一番ハマるのかっていうことを模索してる時期で、今みんながおもしろい実験をしているときかなって思います。
Sakuragi:冒頭であっこさんも触れたように、より短い曲が増えるなかで、どういうアプローチをすると一番おもしろいのかなっていう創意工夫が見られるのが、今のタイミングかもしれないですね。
PC・スマホアプリ『radiko.jpプレミアム』(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は『radiko.jpタイムフリー』機能で聴き直せます。
【番組情報】
J-WAVE 81.3FM『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/