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野村さんのこと―リストラーズにハマってから感じたメンバーの印象(その4)


 リストラーズにハマって、一番衝撃を受けた曲は、野村さんリードボーカルの『在宅勤務・セーラー服と機関銃』でした。

 
そこまでの視聴経験で野村さんの声が高いということは分かっていましたし、グループで、トップコーラス=1番声が高い人、と知ってはいましたが、動画から聞こえてきたそれは、想像をはるかに超えた「透明な水の流れに光がはじけるような」澄みきったハイトーンボイスでした。女性よりも高くて綺麗な声に呆けたように画面に見入りました。
 
ファルセットだということはわかりました。でもこんなになめらかなファルセットは聞いたことがありませんでした。そして野村さんはにこやかに軽々とこの曲を歌い切りました。思わず画面に向かって拍手していました。
 
次に聞いたのは『恋人がサンタクロース』野村さんの声は『セーラー服と機関銃』よりも大人びたしっかりした感じの女性の声。どことなくユーミンの声にも似ています。


そして『青春の影』高いけれど、力強く響くやさしい男性の声。
同じハイトーンボイスでも曲ごとに違う「声の表情の変化」に驚かされました。


一番すごいと思った声の表情の変化は『待つわ』。
曲の美しさからは想像もつかないくらい、その歌詞はひとりの男性に対する重い女性の執着を歌っています。原曲ではさらりと歌われてはいても、やはりドロドロしたものを感じてしまい、あまり好きな歌ではありませんでした。
野村さん(と加藤さん)が歌うとそれは、確かに執着のようなものも含んでいると感じましたが、それ以上に、ただひたすらの「哀しさ」を感じました。これは古語の意味のほうの「あふれる感情を抑えきれない哀しみ」という感覚が近いのかもしれません。
どれだけの「演技力」を持ってるんだこの人はというのが素直な感想でした。

リサイタル動画でもまた驚かされました。ファルセットを駆使して、小泉今日子、キャンディーズ、国生さゆり、松本伊代…それぞれ個性も様々な「ラブリーアイドル」を演じつつ観客をあおり巻き込んでいく。最初は笑っていた観客が、どんどん野村さんにひきこまれていく様子はお見事としか言いようがありませんでした。

中森明菜さんの『DESIRE』のような、それこそ凄みを感じさせる曲もあり、ライブでも完璧な振り付けとこのトーンと声量で一曲を歌いきる歌唱力は、もう凄いとしか言いようがありません。

ラブリーアイドル系で個人的に一番好きなのは『JAM2009 その1』でのキャンディーズの『年下の男の子』。曲の初めコーラスの澤田さん・加藤さん・草野さんとともに、かなりの低音から歌い始め、徐々に高音へと変化していく野村さんの声が素敵です。


ただ、こうして見事なファルセットで女心を歌いあげ、かわいいラブリーアイドルを演じてはいても、野村さんご本人は、メンバーの誰よりも男らしい性格なのではないかと感じています。
最近着ていらっしゃる三つ揃いのスーツの姿や、踊っている際にもぶれない体幹を見ていると、歌うためにかなり鍛えていらっしゃることが見て取れます。
『鉄人28号』のリサイタル動画での「正義~の味方」の振りでは、きれいに足先までぴしっと決まった敬礼を披露されています。
アイドル以外の野村さんには、私はどちらかというと硬質なイメージを持っています。

 ただ、在宅勤務では誰よりもニコニコしながらに楽しそうに歌っていらっしゃいます。カメラを切るその瞬間までニコニコしていらっしゃることが多く、その姿は見ているだけで幸せになります。
『仮面ライダーBLACK』では全員が変身した後に、ばっちりメイクで無表情で歌う姿に思わず吹き出しました。


リサイタルやイベントでは、冷静に観客の様子を見ていて、会場を盛り上げようとしている姿を見ます。どんな曲でも歌う前に必ずピッチを合わせている姿も見ます。
あの見事なファルセットを聞くと、もしかしてクライネス以前にも声楽の御経験があったのかとも思います。
音楽には本当にこだわりが強いのでしょう。
『工大祭2017』での野村さんのMCは、相手がほぼ母校の後輩たちということもあるのか、普段のMCと違い口調がほぼ指導者のそれでした。
もしかしたらそういうご経験もあるのでしょうか。
音楽のためには本当にストイックで、自分に厳しい人なのではないか、そんなふうに思います。
それだけにある意味怖い人だとも感じるのです。


 どなたかがコメントで野村さんの高音があるから、男性だけなのに「混声合唱」のような音の広がりが感じられるんだと言っておられました。
「混声合唱」に例えられても、リストラーズの良さは、あくまで男性だけのコーラスだというところだと思います。
どんなにハイトーンボイスで歌われていても、野村さんの声は女性の声ではありません。
だから他のメンバーたちの声とすっと馴染むのだと思います。
野村さんが男性だからこそ成立している見事なハーモニーが、リストラーズの肝なのだと感じます。
 
個人的には野村さんの声には、しなやかな芯のようなものが入っているように感じています。力がかかっても折れずにまわりを支え続けるリストラーズの音楽の芯、それが野村さんの声なのだと強く思います。
 


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